新型コロナウイルスのPCR等検査無料化事業を巡り、東京都などから補助金の返還を求められていた(株)メディトランセ(東京都新宿区北新宿1-4-7)が、2026年9月9日、東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。
メディトランセは2011年7月設立。医療検体の輸送を中心に、受託検査、医療メディア、民間救急など医療関連事業を展開していた。新型コロナの感染拡大後はPCR検査事業にも進出し、東京都をはじめ複数の自治体が実施した無料検査事業に参加していた。
しかし、その後、無料検査事業を巡る不正が各地で発覚。東京都は検査実績の水増しがあったとして、2022年度に交付した13億1978万2910円の返還を求めて訴訟を提起していた。
さらに、破産開始決定のわずか14日前となる8月26日には、埼玉県が約8億6176万円の返還を求めた訴訟で、さいたま地裁がメディトランセ側に支払いを命じる判決を言い渡していた。
メディトランセの会社概要
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会社名 |
株式会社メディトランセ |
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所在地 |
東京都新宿区北新宿1丁目4番7号 |
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代表者 |
代表取締役 加藤篤彦 |
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設立 |
2011年7月12日 |
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資本金 |
500万円 |
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主な事業 |
医療検体輸送、医療機関からの受託検査、医療メディア、民間救急など |
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法人番号 |
4011101060440 |
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破産開始決定 |
2026年9月9日 |
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裁判所 |
東京地方裁判所 |
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負債総額 |
確認中 |
同社は2011年、新宿区若葉で軽貨物自動車運送事業として創業。その後、医療分野に軸足を移し、2012年には衛生検査事業「メディトランセ・ラボラトリー」を開設した。一般貨物事業の認可も取得し、2013年に神戸、2014年に名古屋へ営業拠点を広げた。
2015年には本社とラボラトリーを現在の新宿区北新宿へ移転。医療検体を適切な環境で輸送する専門物流を柱として、医療機関からの受託検査などへ事業領域を拡大していった。
コロナ禍でPCR検査事業を拡大
新型コロナウイルスの感染拡大は、同社の事業にも大きな転機となった。
2021年4月、メディトランセはドクターズ(株)と共同で衛生検査所「ドクターズ・ラボラトリー」を立ち上げ、企業・団体・行政向けのPCR検査サービスを開始。同年7月には企業や団体を訪問して検体を回収するPCR検査サービスも展開した。
東京都の資料によると、その後、同社は都内21カ所の検査事業所を対象として、東京都PCR等検査無料化事業の補助金を申請していた。
東京都で検査実績の水増しが発覚
東京都は2023年5月31日、メディトランセについて「不正の手段により補助金の交付を受けた」として、2022年度分の補助金交付決定を取り消し、返還を命じた。
対象となった交付決定額は約23億円。このうち実際に同社へ交付されていた金額は約13億円だった。
東京都議会の審議では、不正の具体的内容も明らかになっている。都によると、同社は検査実績を水増しして報告し、2022年度に合計13億1978万2910円の補助金交付を受けていた。
東京都は交付決定を取り消して返還を求めたが、同社は返還義務がないと主張。都は交渉による回収が困難と判断し、13億1978万2910円の返還などを求める民事訴訟を提起した。
さらに東京都は2021年度分についても処分を行っており、交付決定額約30億円、交付済額約4500万円について、2023年11月16日付で交付決定を取り消し、返還を命じている。
埼玉県では8億6176万円 破産14日前に返還命令判決
埼玉県でも巨額の返還問題に発展した。
県は2024年3月、メディトランセが県内で実施したPCR等検査無料化事業について、虚偽の実績などに基づく補助金申請があったとして、8億6176万5000円の交付決定を取り消し、全額の返還を命じた。
同社が返還しなかったことから訴訟となり、2026年8月26日、さいたま地裁はメディトランセに約8億6176万円の支払いを命じた。
判決では、検査に失敗していないにもかかわらず同じ日に複数の検査が行われていたケースや、申請書に記載された複数の検査所について運営実態がなかったことなどが認定された。
その14日後となる9月9日、メディトランセは東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。ただし、この判決と破産との直接的な因果関係を示す資料は現時点で確認されていない。
千葉・島根・長崎でも補助金返還を請求
無料PCR検査事業を巡るメディトランセへの返還措置は、東京都と埼玉県だけではない。千葉県、島根県、長崎県でも確認されている。
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自治体 |
主な返還請求・措置 |
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東京都 |
2022年度の交付済額13億1978万2910円について返還請求訴訟 |
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埼玉県 |
8億6176万5000円の全額返還を命令。2026年8月26日に県側勝訴 |
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長崎県 |
7492万9000円と加算金・延滞金の支払いを求めて提訴 |
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島根県 |
8239万2000円の全額返還を命令、116万6500円を不交付 |
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千葉県 |
4691万3000円の全額返還を請求、499万4000円を不交付 |
千葉県では、2022年3月から12月までに実施された5803件を対象として4691万3000円の返還を請求した。県が確認した不正事案には、20人以上の受検者について同じ携帯電話番号が記載されていたケースや、存在しない地名が住所として記載されていたケースなどが含まれていた。
島根県では同社名義で松江市2カ所、出雲市2カ所、大田市1カ所の計5カ所の検査所が開設されていた。県の調査では、取引業者がメディトランセの名義を使用して実施計画書や補助金申請を行っていた一方、メディトランセ自身は事業主体ではないとの認識を持ちながら、自社口座で補助金を受領していたことなどが確認された。
長崎県でも同様の問題が発生した。県によると、メディトランセの取引業者が同社名義を使用して不正に事業者登録を行い、それに基づいて申請された補助金を、同社が事業主体ではないにもかかわらず受給していたとして、2024年3月に交付決定を取り消した。
長崎県は7492万9000円の返還を請求したが、同社が債務を認めず未収となったため、補助金交付額に加算金、延滞金を加えた支払いを求める訴訟を提起している。
医療検体輸送からPCR無料検査へ メディトランセの経緯
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2011年 |
会社設立。軽貨物自動車運送事業として創業 |
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2012年 |
衛生検査事業「メディトランセ・ラボラトリー」を開設 |
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2013~15年 |
神戸、名古屋へ拠点を拡大。本社を新宿区北新宿へ移転 |
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2021年 |
ドクターズ・ラボラトリーを立ち上げ、PCR検査サービスを展開 |
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2023年5月 |
東京都が2022年度分の交付決定を取り消し |
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2023年8月 |
千葉県が4691万3000円の返還を請求 |
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2023年11月 |
東京都が2021年度分の交付決定約30億円を取り消し |
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2023年12月 |
島根県が8239万2000円の返還を命令 |
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2024年3月 |
埼玉県が8億6176万5000円の全額返還を命令。長崎県も交付決定を取り消し |
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2026年8月26日 |
さいたま地裁が約8億6176万円の支払いを命じる判決 |
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2026年9月9日 |
東京地裁から破産手続き開始決定 |
破産で自治体の補助金回収はどうなる
新型コロナの無料検査事業では、感染拡大期に国費を原資とした多額の補助金が投入された一方、事業終了後には各地で不適切な申請が明らかとなり、自治体による交付決定の取り消しや返還請求が相次いだ。
メディトランセの場合、東京都だけでも13億円を超える返還請求訴訟が進められ、埼玉県では破産直前に8億円を超える支払いを命じる判決が出ている。このほか長崎、島根、千葉でも返還請求などが行われており、破産手続きでは自治体を含む債権者への配当や債権の取り扱いが焦点となる。
なお、メディトランセの今回の破産に伴う負債総額、債権者数については現時点で確認できていない。