アイコン 【日本企業】なぜ海外工場を閉鎖するのか 相次ぐ拠点再編、雇用減少と設備投資拡大の背景

日本企業が海外で築いてきた生産拠点の見直しが続いている。包装資材大手のフジシールインターナショナルは2026年10月21日、フランス子会社の閉鎖を検討するため労使協議を開始すると発表。日本エム・ディ・エムは米国子会社で約51人の削減を進め、小糸製作所も中国湖北省の子会社の解散・清算を決めた。

工場閉鎖や人員削減だけをみれば海外事業の縮小に映る。しかし経済産業省の統計をみると、2024年度に海外から撤退した現地法人は716社へ増加し、現地法人の従業者数は516万人へ減少した一方、製造業の海外設備投資額は5兆2000億円に拡大した。企業の海外展開は、一律の縮小ではなく、拠点や事業の選別と投資が同時に進んでいる。

 



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海外雇用は47万人減、撤退現地法人は716社

経産省の「第55回海外事業活動基本調査」(2024年度実績)によると、海外現地法人の従業者数は2020年度の563万人から2024年度には516万人となり、4年間で47万人減少した。2024年度だけでも前年度比3.0%の減少となった。

海外から撤退した現地法人数は2020年度770社、2021年度792社、2022年度720社、2023年度603社、2024年度716社と推移。2024年度は前年度比113社増え、撤退率も2.4%から2.7%へ上昇した。撤退の内訳は製造業257社、非製造業459社だった。

一方、調査対象の操業中の海外現地法人数は2023年度の2万4058社から2024年度の2万5745社に増えている。このため、撤退件数の増加だけをもって、日本企業が海外から全面的に引き揚げていると結論づけることはできない。

海外現地法人の従業者数(2020~2024年度・万人)

2020
 
563
2021
 
569
2022
 
557
2023
 
532
2024
 
516

棒の長さは0~600万人を基準。出典:経済産業省「第55回海外事業活動基本調査」

それでも海外設備投資は5.2兆円に拡大

海外雇用が減る一方、製造業の海外現地法人による設備投資は増えている。2024年度の投資額は前年比7.4%増の5兆2000億円となり、2020年度の3兆2000億円から約2兆円増加した。投資拡大は北米などで目立つが、中国やASEANでは前年を下回った。

ただし、設備投資の増加が従業者数の減少を引き起こしたと示す統計ではない。設備投資には設備更新や生産能力の増強などが含まれ、減員が自動化やAIによる代替で生じた人数も判明していない。

製造業の海外現地法人・設備投資(2020~2024年度・兆円)

2020
 
3.2
2021
 
3.7
2022
 
4.4
2023
 
4.9
2024
 
5.2

棒の長さは0~6兆円を基準。出典:経済産業省「第55回海外事業活動基本調査」

小糸製作所、中国子会社を清算へ 米州には241億円を投資

具体例が自動車照明器大手の小糸製作所だ。同社は10月20日、中国湖北省孝感市にある湖北小糸車灯有限公司について、解散・清算を決めたと発表した。中国市場のEV化や現地メーカーの台頭、主要取引先である日系自動車メーカーの販売減速を理由に挙げている。

同社は2025年4月に福州小糸の解散を公表し、2026年3月には標識灯の生産を広州小糸へ集約した。今回の湖北小糸の清算も、中国事業の合理化の一環であり、従業員の処遇については現地法令などに従い対応する方針。削減人数は公表していない。

その一方、小糸製作所が2026年3月期に実施した設備投資額は米州241億円、日本237億円、アジア119億円に対し、中国は8億円だった。さらに2024年にはメキシコの新工場に約200億円、ブラジルの工場拡張に約130億円を投じる複数年度計画を発表している。

もっとも、メキシコやブラジルでの増産計画は米州での受注拡大に対応するもので、湖北小糸の仕事がそのまま中南米に移ると発表されたわけではない。拠点の整理と別地域での成長投資を区別して捉える必要がある。

米国で約51人削減、フランスは工場閉鎖の協議段階

医療機器メーカーの日本エム・ディ・エムは10月16日、米国連結子会社Ortho Development Corporationで約51人の人員削減を進めると発表した。10月15日から順次実施する計画で、売上高の減少に対応して固定費を圧縮する。製品供給や品質管理など事業継続に必要な機能は維持する。

フジシールインターナショナルは10月21日、フランス子会社Fuji Seal France S.A.S.の閉鎖に向けて労働組合などとの協議を開始すると公表した。欧州事業の構成見直しと資本効率改善が目的で、現地報道によると工場には50人が勤務している。ただし、閉鎖自体は最終決定しておらず、50人の退職が確定したわけではない。

フジシールグループは2026年3月期に176億1400万円の設備投資を実施し、うち日本は88億6600万円、米州は46億900万円、ASEANは21億1900万円だった。フランスで閉鎖を検討する一方、グループの別地域では設備投資を継続している。

中国からASEANへの生産移管 ベトナムが受け皿に

生産拠点の再配置は、企業別の動きにとどまらない。日本貿易振興機構(JETRO)が2019~2024年の状況を尋ねた調査では、ASEANの日系企業2633社のうち473社が他国・地域から生産機能を受け入れたと回答した。受け入れ先はベトナム181社、タイ99社、インドネシア68社、マレーシア60社、フィリピン27社などだった。

ASEANへの生産移管元として回答されたのは日本289社、中国176社だった。JETROは移管の背景として、コスト競争力の改善、日本国内の人材不足、米中摩擦や事業継続計画(BCP)に対応した供給網の分散などを挙げている。ただし、この調査結果は今回取り上げた3社の生産移管先を示すものではない。

2025年度調査では、中国で今後1~2年の事業を拡大すると回答した日系企業は21.3%にとどまり、現状維持が64.3%、縮小・移転・撤退の合計が14.4%だった。中国からの全面撤退というより、企業ごとに事業継続と拠点再編の判断が分かれている。

閉鎖の理由は一つではない 地域別に経営資源を再配分

小糸製作所は中国の自動車市場構造の変化、日本エム・ディ・エムは米国事業の売上減少、フジシールは欧州事業の資本効率改善と、各社が示した再編理由は異なる。

海外現地法人の雇用減少と設備投資拡大が同時に進んだことは公的統計で確認できるが、減少した雇用が別の国・地域に何人移ったかを示す数字は確認できていない。工場の閉鎖や設備投資を、直接的な雇用移転と結び付けることはできない。

日本企業の海外戦略は、進出か撤退かという二者択一では捉えきれない。現地市場の需要、取引先の動向、コスト、供給網の安定性といった要因を踏まえて、生産拠点の縮小と成長分野への投資を同時に進める企業がある。今後は閉鎖拠点の従業員の処遇に加え、移管先での新規雇用や設備投資の実績が焦点となる。

 

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