アイコン アグリビジネスは儲かるのか 市場の現状と展望/富士研

<調査結果の概要>
 日本の農業総産出額は減少傾向にあり、その背景には、農業従事者の減少、農家の高齢化、耕作放棄地の増加、安価な輸入野菜の増加、消費者の嗜好の変化といった国内の農業を取り巻く様々な要因がある。日本農業の衰退は食料自給率の低下や、食料の安定確保等に懸念を生じる事から、農業の新たな担い手の確保や効率的な農業経営の実現、耕作放棄地の有効活用、輸入品との競争に勝ち消費者の新たな需要を獲得できる作物の栽培などによる、国内農業の活性化が急務となっている。
こうした中、植物工場などの「高度で計画性の高い施設栽培」や「企業の農業参入」の動きが活発化しており、国内農業の活性化に繋がる取り組みとして期待されている。
 
表1 

09年の施設栽培プラントと施設栽培に関連する機器・資材市場(計12品目)は449億円で、その内訳は施設栽培プラント市場が64億円、施設栽培関連機器・資材市場が385億円であった。施設栽培プラント市場については、国などによる植物工場の普及・拡大の取り組みや企業の農業参入の増加などによって、2010年には20%伸びる見込みであり、2015年には96億円に達すると予測される。
また、施設栽培関連機器・資材市場については、一般農家向けのウエイトが高い「ガラス/フィルムハウス」などが農家の後継者不足や高齢化の影響で減少していくことから、全体的には伸びが緩やかとなるものの、施設栽培プラント同様植物工場の増加や企業参入による拡大が期待され、2015年の市場は392億円と予測される。更なる市場拡大には、省エネや省力化、安心・安全といった付加価値の訴求やコストダウンによる一般農家の需要掘り起こしが必要と考えられる。
 
施設栽培プラントでは、植物工場(完全人工光型)をはじめ太陽光併用型植物工場や太陽光利用型植物工場における養液栽培プラントに用いられる湛液型栽培プラント、NFT栽培プラント、固形培地栽培プラントも市場拡大が見込まれる。この植物工場市場拡大の牽引役のひとつとなっている平成21年度補正予算は09年と2010年の限定的なものである。そのため11年はその反動で伸びは緩やかになるものの、企業による農業参入の増加や、栽培品目の拡大、ユーザーに対する栽培ノウハウの提供、完全人工光型植物工場による新たなビジネスモデルの確立などにより、市場拡大が続くと予測される。

施設栽培関連機器・資材では、規模の大きなガラス/フィルムハウス市場が、ハウス農家の減少に加え高価なガラスハウスから比較的安価なフィルムハウスへの切り替えが進んでいることから、縮小傾向にある。一方、低農薬、省エネなどや収益性向上を訴求する生物農薬、空調機器、灌水/給液管理装置市場などが拡大傾向にある。また、植物工場普及支援策などにより、空調機器や植物育成用光源市場が拡大している。

<注目市場>
表2  
※参考資料2は添付の関連資料を参照

●植物工場(完全人工光型:プラント型)
 植物工場は、完全人工光型と太陽光併用型の二つに分類されるが、前者の完全人工光型植物工場を対象としている。クリーンルームやビル、工場など設置される栽培棚+光源+給液システムからなる「プラント型」の市場に加え、輸送コンテナやショーケース、業務用冷蔵庫などの中に栽培プラントを設置し、空調や環境制御装置などの必要な周辺設備をセットとした「ユニット型」市場を対象としている。ここでは、完全人工光型植物工場のうちプラント型市場を取り上げる。

09年以前の栽培プラント市場は、フェアリーエンジェルの日産8,000株規模の植物工場「エンジェルファーム福井」新設(08年)、スプレッドの日産6,000株規模の植物工場「亀岡プラント」建設(07年)と日産12,000株規模の設備増設(09年)などベンチャー企業による大規模な案件が中心であった。そのほかは年間数件程度の日産1,000株規模の案件や、一般農家や農業法人にも採用される育苗装置や、大学や研究機関における研究用途の案件であった。
 しかし、09年に成立した経済産業省や農林水産省の植物工場関連予算が起爆剤となり、市場は大きく拡大している。09年の実需としては経産省の「先進的植物工場推進事業費補助金」による全国各地での数坪の植物工場のモデル設置にとどまったが、2010年は経産省の「先進的植物工場施設整備費補助金」、農水省の「モデルハウス型植物工場実証・展示・研修事業」、「植物工場普及・拡大支援事業」、「植物工場リース支援事業」などの補助金交付により、多数の栽培施設が建設される計画となっている。

太陽光併用型や太陽光利用型も事業の対象となるため、新設される栽培施設の全てが完全人工光型ではないが、市場の拡大につながることは確実である。さらに、この植物工場ブームに乗って、植物工場による栽培ビジネスに参入する企業や新たに栽培プラントの外販に乗り出す企業が多数登場している。
 
09年と2010年の市場拡大は補正予算の影響が大きいため、その反動で2011年は一旦市場が縮小すると思われる。高付加価値作物や新規栽培品目の開発など技術面の向上や、企業の農業参入の増加、外食産業による”店産店消”の展開や海外市場への展開など植物工場によるビジネスモデルを確立することで、市場は再び増加に転じると予測される。

●植物育成用光源
 自然光に代わり、植物の光合成に必要な光を供給する光源のうち白熱球を除いた、蛍光ランプ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、LED市場を対象とする。完全閉鎖型植物工場、太陽光併用型植物工場、種苗工場、園芸施設、屋内観葉植物など人工光を用いた施設栽培において植物の成長速度等をコントロールするために活用されている。金額ベースでみると、蛍光ランプ及び高圧ナトリウムランプの規模が大きい。

 蛍光ランプ市場は、主に果菜類などの多段育苗、苗の低温処理時の補光、観葉植物の育成などの安定した需要により支えられているが、不況による設備投資の落ち込みにより低価格品へと移行している。しかし、完全人工光型植物工場の増加に伴い、蛍光ランプの採用が増えている。波長のコントロールにより成長を促進し栽培時間の短縮を図る目的から、成長促進用のハイグレード商品の採用も増えてきている。また、家庭における屋内栽培も増加しており、小型水耕栽培ユニットなどとセットで蛍光ランプを採用するケースも出てきている。今後、蛍光ランプは完全人工光型植物工場及びコンテナ型の育苗及び栽培プラントへの採用拡大が予想される。LED照明との競合も考えられるが、価格面における優位性を有することから、蛍光ランプの需要が増加していくとみられる。成長促進用の蛍光ランプは、将来的にはLED照明の技術革新及びコストダウンに伴い減少していく可能性がある。
メタルハライドランプ及び高圧ナトリウムランプについては、水耕栽培プラント及び植物工場における補光照明として採用されるケースが多く、リプレース需要がメインである。

●固形培地
ロックウール培地、ヤシ殻培地、コーティングピートモスが対象で、ロックウールが9割近くを占める。
ロックウールは安定品質や収量の高さなどから根強い需要があるものの、環境性などの要因からヤシ殻などの有機培地が拡大傾向にあり、ロックウールから有機培地への切り替えも出てきている。有機培地は、品質改良や新製品開発も精力的に行われており、今後も微増が見込まれる。ただし、有機培地には品質や収量などの課題もあり、有機培地へ切り替えたユーザーがロックウールに戻るようなケースが増えれば、再びロックウール市場が拡大する可能性もある。特に、カゴメ等の大口ユーザーの選択が市場に与える影響が大きいとみられる。なお、育苗用培地はロックウールが主流である。現状では、ヤシ殻培地を使用する際でも、下部はヤシ殻培地、上部はロックウール培地と併用していることも多い。有機培地としては、ヤシ殻のほかピートモスの使用も多い。さらに、ピートモスを改良したコーティングピートモス「ヴェルデナイト」が実用化され、2011年以降ロックウールやヤシ殻の代替品としての需要拡大が見込まれる。

コメント(水耕栽培の事例)
 水耕栽培で野菜工場を経営している西部ガスの子会社エスジーグリーンの社長は、ビジネスにするまだかなりの山があると述べている。野菜工場で儲かる話はいくらでも出てくるが、建設会社やリース会社が副業で行うには、投資費用と管理費で経費倒れになる恐れが高く、進出するにはエスジーグリーン(西部ガス若松工場隣)の社長にアドバイスをもらったほうが賢明である。

エスジーグリーンハウス
 

[ 2010年10月22日 ]
モバイル
モバイル向けURL http://n-seikei.jp/mobile/
この記事を見た人は以下も見ています(経済、)
スポンサードリンク