アイコン 第三セクターの連帯債務保証 最高裁 自治体首長に対して支払判決

1025_11.jpg長崎県の旧美津島町(2004年3月6町が合併して対馬市、初代市長松村良幸)が、海産物の加工販売など町おこしのため1985年(昭和60年)7月設立した「株式会社対馬物産開発」(資本金:9,990万円、第三セクター方式、対馬市が77.5%の77百万円出資、長崎県対馬市美津島町鶏知乙290、破綻時代表:箱崎幸男)が、販売不振に陥り、4期連続赤字となり、2008年6月30日に債務超過額5億42百万円で自己破産した。

対馬物産開発の経営破綻に対して、松村良幸前対馬市長は、同社の貸付先であった西日本シティ銀行からその債権を引き継いだ九州債権回収から、対馬物産開発の借入れにつき、連帯保証債務の支払を求められた。
最高裁(宮川光治裁判長)は、松村氏個人に支払いを命じた福岡高裁判決を支持、松村前市長の上告を棄却した。

対馬市長であった松村氏が、77.7%を対馬市が出資する第三セクターの㈱対馬物産開発が、借入れを起こしたとき、(市長)個人で連帯保証。松村氏は「社長は充て職で、首長として公的に連帯保証した。金融機関も自治体の援助を期待して融資しており第三セクターの破綻の場合、自治体が責任をとるのが一般的である」と主張していた。一方、福岡高裁は自治体による第三セクター方式による経営企業につき「無責任経営を助長しかねない」としていた。

当訴訟の判決の確定は、瀕死の状態の第三セクターを多く抱える全国の自治体首長に大きな衝撃を与えるものとなった。
 
<判例確定>(首長の連帯保証も第三セクターの連帯保証責任あり)

第三セクターに対する自治体及び自治体首長の連帯保証について、判例が確定したことになる。連帯保証の法制度から当然の判例であるが、これまで自治体により首長の連帯保証につき、自治体負担で有耶無耶にされてきた債務について、警鐘を鳴らすものとなった。

バブル時代以降、市町村が第三セクター方式でいろいろな事業会社を設立してきた。これまでに多くの第三セクターが破綻もしてきた。当該の第三セクターが借入れをおこす場合、時の首長が連帯保証するケースが田舎では多々ある。しかし、裁判は、たまたま時の首長であっても連帯保証した以上、当該の債権者は、連帯保証した(首長)個人に対して債務の履行が求められるとしたものである。

当判例では、破綻した第三セクターにつき、時の首長が連帯保証した保証額を、自治体が肩代わりした場合、自治体が当該首長に対して贈与したことになる。そうしたことから、全国の自治体首長に大きな衝撃を与えるものとなっている。
松村良幸前対馬市長は、長崎県信用保証協会からも、㈱対馬物産開発に対する連帯保証債務約5,720万円の支払いを訴えられ、長崎地裁は松村氏に対し支払命令を出して確定している。

[ 2010年10月25日 ]
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