アイコン 水戸信金/5つ目のリスクは経営陣のリスクであった

水戸信金では業務上、4つのリスクがあるとして、信用リスク管理、オペレーショナルリスク管理、市場関連リスク管理、流動性リスク管理を挙げている。こうしたリスクはプロパー職員だったら当然のこととして日常の融資や管理業務にあたっている。ところが同信金に欠けていたのは、5つ目のリスクである経営陣のリスクであった。
特に理事長ともなると天狗になり好き放題、法律も自ら制定しまうほどの権威と権限を行使してしまう輩となってしまうことが多い。例えば、水戸信金において理事会規定に「代表理事の決定をもって、理事会決議に代えることができる」との条文があり、融資判定などで理事長判断がすべてとしている点は顕著なる一例である。

信金組織であっても理事長に対して、長期政権及び絶対的な権力を持たせたら、誰でも我が世の春とばかり権勢を振るってしまう。もうこうなれば、行員だろうと理事だろうと誰も止められないのが実情である。理事長も脇には提灯持ちばかりを侍らせ、理事長の陰に隠れ、役員もいよいよやりたい放題、経営陣はリスクの塊と化かしてしまう。人様のお金を預かっているという意識など毛頭ない経営陣となってしまうのである。厄介なのが、こうしたやりたい放題のトップは、それなりに経営数値を残す。しかし、最後には大きな穴を開けてしまうのが通例となっている。

水戸信の西野前理事長は、理事長時代の13年間に渡り、近隣信金と合併を繰り返すなどして、信金ながら1兆円を超す預金残を誇り、日本でも屈指の信金に育て上げた。その実力と評価は非常に高かったが、金融機関における13年間におよぶ長期政権は腐れるか綻ぶことが多い。同信金の役員含む社員3人が1億9,475万円も使い込み、懲戒解雇された事件もあった。それも当該の3人はその全額を返した?として刑事告発もせず、金融庁より業務改善命令が下されるまで公表もしていなかった。こうした事件も己の信用が傷つくことから隠蔽していたと思われる。そのうえ、法令違反となる会員資格のない法人などへの融資も繰り返し、結果不良債権の山、3期連続赤字を露呈している。 
同信金の自己資本比率(国内基準)は、08年期まで12.49%と安定域にあったものの、リーマンショックの09年期には7.57%(現在も7.78%)まで急落、信金中央金庫から支援を受ける始末となっている。

/百万円
07/3期
08/3期
09/3期
2010/3期
2011/3期
経常収益
45,626
45,211
43,541
29,918
30,741
経常利益
6,303
80,789
-17,388
-12,837
-7,026
当期利益
4,400
5,506
-17,843
-23,880
-6,931
 
 
 
 
 
 
預金残
1,098,661
1,125,108
1,119,144
1,102,516
1,097,731
融資残
600,399
590,650
556,379
551,944
530,703
有価証券残
306,911
286,179
330,163
343,609
354,577
純資産
67,048
72,533
37,163
21,128
27,232
自己資本額
70,747
75,108
42,548
47,829
40405,
自己資本率
11.37%
12.49%
7.57%
8.81%
7.78%
     自己資本率は国内基準。

水戸信は2010年3月期も、米国債など保有債券などの外債運用損が響き、また株式の売却損なども発生、これらの不良債権処理により最終損益が▲69億31百万円の赤字となった。赤字は3期連続。本業の儲けを示すコア業務純益は123億92百万円で前期比8.1%増。ところが、経常利益は前期の128億37百万円から70億26百万円まで落ちた。そのうえ特損計上として不良債権処理費が同3.7倍の117億13百万円を計上するに至っている。そうしたことから自己資本比率も前期の8.81%から更に7.78%まで落ちている。

 水戸信用金庫に対する行政処分について(原文)/金融庁

1.水戸信用金庫(本店:茨城県水戸市)については、平成22年7月21日付で通知した検査結果(検査実施日:平成21年10月29日)の通知事項について、信用金庫法第89条第1項において準用する銀行法第24条第1項の規定に基づき報告を求め、その内容を検証したところ、以下のような問題が認められた。

(1) 理事会は、代表理事へ多大な権限委任を行い、代表理事の独断専行を容認しているほか、元役員による不祥事件が発生しているなど、牽制機能が発揮されておらず、監督機能も弱体化しており、経営管理態勢は不十分なものとなっている。
(2) 経営陣は、法令等遵守意識が希薄であり、法人の実態を検証することなく、長年に亘って会員資格のない法人へ融資を行っているなど、法令等遵守態勢が確立されていない。
(3) 常務会は、融資案件の審議等において、十分な議論や問題点の検討をすることなく承認しているなど、審査・管理態勢は不十分なものとなっている。
(4) 監事は、自らの役割についての認識が不十分であり、経営上の問題について改善に向けた提言を行っていないなど、監事機能の発揮は不十分なものとなっている。
 
2.このため、本日、同信用金庫に対し、信用金庫法第89条第1項において準用する銀行法第26条第1項の規定に基づき、下記の内容の業務改善命令を発出した。
(1) 健全かつ適切な業務運営を確保するため、以下の観点から、経営管理態勢及び法令等遵守態勢を抜本的に見直し、充実・強化すること。
1、 経営管理にかかる経営責任の明確化
2、 経営管理及び法令等遵守に取り組む経営姿勢の明確化
3、 経営管理態勢の抜本的再構築による経営監視・牽制機能の充実・強化
4、 全金庫的な法令等遵守態勢の確立(役職員の法令等遵守意識の醸成・徹底を含む)
5、 審査・管理態勢の充実・強化
6、監事機能の充実・強化
(2) 上記(1)に関する業務改善計画(具体策及び実施時期を明記したもの)を平成22年12月6日までに提出し、直ちに実行すること。
(3) 上記(2)の実行後、当該業務改善計画の実施完了までの間、四半期毎の進捗・実施状況を翌月10日までに報告すること。(初回報告基準日を平成23年2月末とする。)
以上

西野前理事長は、大工町1丁目再開発の理事長(辞任済)も長い間務めていた。水戸信の本店跡地を核に1.5haを再開発するという「フロンティア水戸」開発構想計画は、1994年11月準備組合発足から始まり、これまでに温泉施設構想、進出予定ホテルの撤回など2転3転してきた。総事業費が160億円というビッグプロジェクト(ホテル棟+業務等+分譲マンション+駐車場棟の4棟)であるが、国や県・市から40億円の補助金(=税金)も注ぎ込まれる。
やっと長谷工と株木建設に一括して特定委託事業として委託しているが、それほどまでに何故、うまく行かない再開発事業なのか検証も必要と思われる。ドーナツ現象による都心の過疎化・分散化に対する回帰のための再開発事業である。
しかし、中核をなすホテルも今では水戸市内に新興勢力ホテルが多く進出して過剰気味ぎみとなっている。当再開発では品も格も価格も高いオークラを引っ張り込んだが、オークラは委託運営事業としての参画であり、岡山の事例もあり、政財界が率先して利用しなければ、早晩同じ轍を踏むことになろう。
西野前理事長は、以前県信用金庫協会の会長も務めていた。そうした地元有力者でありながら、足元の水戸信の経営や不始末においてすべてを濁してしまったようだ。今年6月には会長職も辞任に追い込まれている。当然金融庁による、大赤字決算が続く同信金に対する経営責任追及の一環とみなされている。(09年の大赤字露呈により西野氏は理事長を辞め、会長に就任、その責任を取ったと考えていたのであろう。しかし、金融庁は甘くはなかった)
また、塙現理事長はこうした問題や赤字に対して責任も取っていない。西野理事長時代の参謀としてその責任は大いにあるといえよう。それに西野氏が会長になっても院政を敷くため、お気に入りの塙氏の理事長昇格であったと思われる。
理事長はじめまだまだ、当信金は問題が山積しているようである。

同信金は、11月5日金融庁から、次の通り、きつ~いご指摘のお怒りと行政処分のお叱りを受けた。
 

水戸信金
[ 2010年11月 8日 ]
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