アイコン 総合商社の第一四半期の決算状況 鉄鉱石・石炭価格暴落利益急低下

総合商社の第一四半期の決算状況 鉄鉱石・石炭価格暴落利益急低下
昨年後半に入ってから石炭や鉄鉱石といった資源の価格が下落していることを受けて、商社の第一四半期の決算利益が下落している。前回(7月17日石炭の暴落記事を掲載、下記に再掲)

商社は、鉄鉱石や石炭の高騰を受け、各社出資や取り扱いを増加させたものの、製鉄用に使われる原料炭価格が、1トンあたり330ドルが210ドルへここ1年で下落(下落率▲36.7%)、鉄鉱石も170ドルから130ドルへと下落(同▲23.6%)している。

更に7月に入ってからも原料炭(豪州高品位強粘結炭スポット)価格は、6月末の1トンあたり221ドルから、7月末には182ドルにまで1ヶ月間に▲17.7%も激落している。
 
 前回掲載したとおり、欧州経済の落ち込みと中国経済のバブルやインフレ抑制に中国当局が金融調整したことから、中国経済は死守ライン(雇用安定水準)を下回り7.5%まで落ち込むとしている。そのため、内需も外需も悪化して、今では5億トン生産という世界一の粗鋼生産量を誇る鉄鋼会社も苦戦、各港では石炭の山が形成され、引き取れない状態が続いているという。
 特に資源株で儲けてきた三菱商事や三井物産への影響は大きくなっている。住友商事や丸紅の資源関連利益は4割前後であり、その影響は三菱・三井に比べ少ない。

更に、三菱商事にいたっては、出資会社の豪州鉱山でのストライキにより稼働率が約6割に減じ、利益どころではなくなってきている。
長期的には価格は持ち直そうが、欧州経済の回復が日本のバブル崩壊のように長引けば、回復はかなり長期になると思われる。
豊田通商(旧トーメン吸収)は、自動車の輸出増で好調となっている。

総合商社の第一四半期 資源暴落の影響は・・・
 
/百万円
24年3月期  第1四半期
25年3月期 第1四半期
増減
増減率
三菱商事
売上高
4,845,411
4,804,622
-40,789
-0.8%
 
税引前利益
143,975
80,187
-63,788
-44.3%
三井物産
売上高
2,593,136
2,495,597
-97,539
-3.8%
 
税引前利益
119,702
87,941
-31,761
-26.5%
伊藤忠
売上高
2,847,676
3,035,714
188,038
6.6%
 
税引前利益
100,250
67,004
-33,246
-33.2%
住友商事
売上高
2,043,439
1,888,411
-155,028
-7.6%
 
税引前利益
110,008
74,338
-35,670
-32.4%
丸紅
売上高
2,395,344
2,424,917
29,573
1.2%
 
税引前利益
70,831
65,181
-5,650
-8.0%
豊田通商
売上高
1,310,426
1,640,132
329,706
25.2%
 
経常利益
23,630
34,951
11,321
47.9%
双日
売上高
1,109,645
1,001,595
-108,050
-9.7%
 
経常利益
11,190
6,878
-4,312
-38.5%
・三菱・三井・伊藤忠は米国基準、住友はIFRS基準、他は国内基準
 
各商社の特色
三菱商事
総合商社首位。三菱グループ中核。LNG、原料炭等資源や官公需に強い。配当収入も巨額
三井物産
三菱商事と覇権争う総合商社の雄、重厚長大産業や鉄鉱石・原油等の資源関連に伝統的に強い。売上高より内容重視に転換。
伊藤忠商事
総合商社大手、旧一勧系。非財閥系の雄。繊維断トツ。情報通信も得意。中国や米国に強み
住友商事
住友系総合商社。堅実経営。鋼管に強み、CATVや都市再開発で独自展開。資源は銅や金に特徴
丸紅
芙蓉グループの総合商社。業界5位。穀物、機械・プラント、電力、開発建設に強み。紙パは首位
豊田通商
トヨタグループの商社で06年にトーメンと合併。原料調達や物流、海外販売でトヨタ支援
双日
日商岩井とニチメンが統合。総合商社6位。資源、自動車、肥料等が収益柱。航空機強い
 
7月17日JC-NET掲載記事
石炭価格暴落 世界経済減速で 豪ニューカッスルでは3ヶ月間で26%下落
7月9日付の中国の南方都市報によると、
経済の成長減速が鮮明化するつれ、内需激減により、今年に入ってから中国内石炭価格の主要指標である環渤海動力煤価格が急落している。
昨年末の1トン当たり863元から7月11日現在1トン当たり652元まで下落、下落率は約24%に達している。また、5月初めの1トン当たり785元から約10週間連続下落している。
 
石炭価格急落の主因は、国内経済成長の失速、生産活動が停滞し電力需要が大幅に落ち込んでいることにある。
 生産活動水準を示す鉱工業生産指数の伸び率は、低下し続けており、4月には3年ぶりの低水準である9.3%増を付けた。
5月には9.6%増と少し戻したが、いずれもこれまで続いてきた10%台を下回っている。
また、6月13日に開催された2012年全国夏季電力使用ピーク時に関し、今年1~5月の全国電力使用量は1兆9,600億キロワットに達し、前年同期比で5.8%増となった。ただ、伸び率としては昨年同期の12.05%増から6.25%も低下している。
 
1~5月のサービス業をはじめとする第3次産業と国民生活の電力使用量は、引き続き増加しているが、製造業をはじめとする第2次産業の電力使用量の前年同期比の伸び率は3.8%増と、昨年同期の11.7%増から大幅に低下している。
第2次産業の電力使用量の激減で、同期全国電力使用量の伸び率が、約6%押し下げられている。

電力使用量の大幅な減少で、電力会社の石炭在庫が急増しただけではなく、各地の石炭取り扱い港では石炭在庫も急増している。
石炭の主要港(秦皇島港・唐山曹妃甸港・唐山京唐港区・天津港・広州港)だけでも2,280万トンの在庫量があり、リーマンショック後の在庫水準を超えている。
 
石炭価格の急落で中国の石炭企業は、巨額な損失を被ることになった。今年初め、国内の多くの石炭企業は、今年の石炭価格は依然として高水準に推移していくだろうと予測していた。そのため、石炭企業の多くは4月17日、18日に開催された中国国際石炭大会において、国内およびオーストラリアなどの主要石炭供給企業と石炭の仕入契約を高値で締結していた。
 しかし、アジアの発電用石炭価格の指標であるオーストラリア・ニューカッスル港の石炭価格は、4月1トン当たり125ドルだったものが、6月末には約90ドルまで下落、下落率は実に26%に達している。
 価格急落により、契約した中国の石炭企業は巨額な損失を被っている。
 
[ 2012年8月22日 ]
モバイル
モバイル向けURL http://n-seikei.jp/mobile/
スポンサード リンク

コメント

関連記事

  • この記事を見た人は以下も見ています
  •  
  • 同じカテゴリーの記事です。
  •   

↑トップページへ

サイト内検索