アイコン 超長寿命リチウムイオン電池開発に成功 京大田中功教授らとシャープ 革新的材料設計手法

-多数の高精度計算データを活用して材料開発を大幅に加速-
  京都大学の田中功 工学研究科教授、田中勝久 同教授、藤田晃司 同准教授らのグループは、西島主明シャープ研究開発本部主任研究員らのグループとの産学共同研究により、新規の材料設計手法により従来のリチウムイオン電 池の寿命を6倍以上に達成できる材料開発に成功したと発表した。
この成果は、蓄電池の寿命を大幅に延長するにとどまらず、多数の高精度な計算データを活用したマテリアルズ・インフォマティクス手法により、実際の材料開発が大幅に加速できることを実証したもので、この分野の先駆けとなる成果と位置付けることができる。

<ポイント>
1、多数の高精度計算データを活用して材料のハイスループット・スクリーニングに成功
2、計算による的確な物質設計に基づき、新合成手法でリチウム2次電池正極材料の精密な合成に成功
3、電池特性実験の結果、超長寿命を実証。予測される電池寿命は、従来品の約6倍となる25000サイクルであり、これは毎日1回の充放電で70年に相当
3、計算と実験を組み合わせた革新的手法は、効率的な材料探索に極めて有用と強い期待

<概要>
本研究の対象は、リチウムイオン二次電池の正極材料です。リチウムイオン二次電池は、携帯電話をはじめとするポータブル機器の電源として広く利用されており、電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電など大型機器への応用研究も精力的に進められている。
携帯電話の電池が数年程度のサイクル寿命で設計されているのに対し、大型機器では、毎日の充放電で少なくとも数十年というサイクル寿命が求められる。この要求に応えるためには新しい技術要素の開拓が必要であり、各国で研究開発にしのぎが削られている。
 しかし、従来型の材料開発では、研究者の勘と経験に基づき試行錯誤的に多くの合成と評価の実験を繰り返して行なわざるを得なかったため、最適な化学組成の探索がボトルネックとなっていた。
今回の研究では、量子力学の原理のみに基づいて原子構造や特性を予測することが可能な「第一原理計算」を数千種類という、多数かつ高精度に実施し、そのデータを活用してハイスループット・スクリーニングすることで、最適な化学組成を効率的に見つけ出す手法が開発された。
その結果、材料開発の効率が大幅に向上できた。

<まとめ>
多数の高精度な計算データを活用して、汎用的な材料合成実験と組み合わせることで、従来からの試行錯誤的な材料探索のプロセスを大幅に短縮することが期待される。
このマテリアルズ・インフォマティクスと呼ばれる分野は、ごく最近になって世界中で研究が開始しているが、今回の成果は、その先駆けとなる重要なもので、わが国の産学の材料研究の実力が如何なく発揮された。
 この手法は、さまざまな材料分野に適用でき、今後は、データ科学、情報科学における最先端の成果を吸収することでさらに手法に磨きをかけ、材料開発研究を加速する実証例を積み上げていく。
また、本研究で発見された超長寿命リチウムイオン電池は、電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電などの大型機器に応用に適しており、その技術開発も進めて行くとしている。

当研究成果は、英国の科学誌「Nature Communications」誌に8月1日に出版された。

 

[ 2014年8月 5日 ]
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