アイコン 韓国 造船業界の現況 韓進海運破綻の影響は・・・

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韓国の造船大手3社の受注が過去最悪レベルで低迷し、今年の受注目標の達成が事実上不可能になった。年末まであと3ヶ月余りの段階で、3社の受注実績は年間目標の10%程度にとどまっている。
韓国の造船大手3社、現代重工業・大宇造船海洋・サムスン重工業は年初から8月までの受注実績が合計32億ドル(約3800億円)にとどまった。
3社の年間受注目標は302億ドル(約3兆1000億円)だが、今月に入っても目立った受注がなく、目標達成率は僅か10.6%という状況。

大 手3社の受注実績が低調なのは、中国経済の停滞を受けた資源・エネルギー安・米国除く世界同時不況による物流量の減少による世界的な船舶の発注量の大幅減 にあり、過剰船舶による海上輸送量の低価格競争に陥り、海運会社の経営悪化、新造船建造の発注が昨春から急ブレーキがかかったことによる。
それに加え、韓国では、造船3社の巨額赤字の原因となった海底油田開発の海洋プラントも今年に入り、高コストの海底油田開発も低迷し、韓国勢は1件も受注していない。通常、1プラント当たり受注金額が5億ドル(約511億円)以上にもなるという。

<韓国3大造船会社の受注状況>
大宇造船海洋は、8月までに年間目標の16%の達成率、大手3社の中では最も高いが、受注金額は10億ドル(約1020億円)にすぎない。年間受注額が35億ドル(約3600億円)を下回れば、さらなる人員削減など緊急の対策を講じなければならないと同社は見ている。

現代重工業(現代三湖重工業・現代尾浦造船を含む)は、今年、造船・海洋部門の受注目標を187億ドル(1兆9100億円)と定めたが、受注実績は商船18隻、金額ベースでは22億ドル(約2250億円)と目標額の11.7%にとどまっている。

サムスン重工業に至っては、今年の受注目標が53億ドル(約5400億円)だが、現在までの受注実績はゼロ。昨年10月末にタンカー2隻を受注して以降、11月近くも全く受注がない状態が続いている。

  3社とも実質銀行管理下にあり、造船会社としては、世界の海運業界の動向にかかわらず、過大な目標を立てざるを得なかった面も低達成率の一因になっていると推察される。

<造船会社の状況>
韓国造船大手3社は、前期、巨額赤字を露呈し、資産処分などで経営体質を身軽にしてきている。しかし、これまでに図体が大きくなっているだけに、簡単には進まないのが実情。受注についても、銀行管理下に至っており、選別受注を強化させていることにもある。

大宇造船は、財閥解体時から長期にわたり政府系産業銀行傘下にあるが、巨額粉飾を露呈させ、現在でも当時の天下り経営陣の身内出資や賄賂の不正捜査が進められている有様、ただ、政府も潜水艦や軍艦建造という軍事産業の一面があり、過去から潰すに潰せない状況にある。 政府は、現代重かサムスン重も統合吸収してもらいたい意向だが、両社は、政権が変わるたびブレが大きい政府の支援がいつまで続くか不明であり、体質も弱体化しており、難色を示し他ママとなっている。現代重は特に政治関係が強く、不正も宝庫、たびたび取調べを受けている。感情が激しい国民の了解が取り付けられないと見られる。

<漢進海運破綻の影響>
経営破綻した漢進海運の船舶は、釜山や米ロングビーチ、日本でも荷下ろしが始まっているが、現在でも100隻がまだ、入港料や荷役代が入らず漂流したままとなっている。
  今後、船主がほかの海運会社へ転籍させる可能性が高く、また、漢進海運所有船舶も中古船市場に輩出される可能性が高い。

韓進海運にコンテナ船8隻を傭船しているギリシャ船社ダナオスは現在保有している58隻中48隻(82.8%)を現代重工業・サムスン重工業・韓進重工業など韓国で建造した。韓進海運に3隻を傭船しているSeaspanも所有する113隻のうち半分以上の58隻を韓国で造った。
韓進海運が保有していたコンテナ船64隻が、中古市場に出れば商船発注はさらに減少するおそれがある。
今年7月までの世界でのコンテナ船新規発注は計41隻だったが、中古船取引は68隻にものぼっている。
今年になりコンテナ船の発注額も昨年比6~17%落ちている。昨年22隻を受注した現代重工業グループは今年コンテナ船の受注がゼロ。大宇造船も昨年11隻だったが0隻、サムスン重工業も同10隻だったが0隻となっている。
昨年は商船三井が、サムスン重工に対してスーパーコンテナ船を4隻、LNG船を大宇造船に1隻発注していた。

<各国の受注船残量>
国際造船・海運市況分析機関の英クラークソン・リサーチによると、8月末基準の受注量残は、中国は3,570万CGT(標準貨物船換算トン数)、韓国は2,331万CGT、日本は2,196万CGTとなっている。
中国は、世界の発注船量が減少しても安値で取り捲り、ここ1年残量は減少していないが、韓国は受注が減り完工が進んでいることから大幅減少している。日本の場合も低空飛行ながらそれほど落ちていない。国内船会社からの受注割合が大きいのが韓国造船業界と大きく異なる点だろう。

ただ、世界の船舶の物流量も世界景気の大波に左右されながら、大きなトレンドで増加していることだけは間違いなく、いずれ好転してくることから、更新需要も数年すれば大きく好転してくるものと見られる。

<造船業を襲う景気低迷>
原油価格・資源価格はまだ大きく下落したままとなっており、世界の商品の物流量も増加していない。これまでにマークスは低価格競争に打ち勝つため、輸送コストの低減をはかる大量輸送のスーパーコンテナ船を韓国で製造し、すでに運航させている。当然、漢進海運も残る現代商船でも価格競争についていけない。
現在は、漢進海運の破綻で輸送代が急上昇しているが、来年には落ち着いてくる。世界経済が、中国経済がこのままだと受注は再度低価格競争が繰り返されることになる。

中国の造船業界も低迷していることに変わりないが、国営企業が多く、海運会社も造船会社も大手は国家戦略として潰れない。技術力も向上し、バラ積船、コンテナ船など世界から受注している。韓国造船業界の最後の砦のLNG船やタンカー市場にも侵食してくれば、海外からの受注がほとんどの韓国の造船業界は苦しい展開が続く。中国の造船業界は、主材料の厚鋼板が過剰生産の鉄鋼業界にあり、いくらでも安く手に入れることができ、まともに競争できる状態にない。
日本の造船業界も含め、すべて世界経済が拡大することを祈るしかない。

<世界の貿易量推移 2000年=100(左軸)>2012年以降停滞している
中国・ロシア・アメリカ・フランス・ドイツがそれぞれ覇権のため、武器産業のため、後進国に政治混乱をもたらしそれを拡大させない限り、新興国・後進国の経済は拡大し、世界経済は拡大し続ける大きなトレンド上にある。アフリカでは覇権国の中国が支援するエチオピアなどで高い経済成長率を見ている。

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[ 2016年9月20日 ]
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