アイコン 韓進海運の破綻について 構造改革できない韓国政府 現代に承継計画か

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海運業の構造調整はリーマン・ショック後の2009年から始まっている。一時的に中国経済の再興で市場は拡大したものの、昨今、中国経済の低迷で世界市場は資源安・供給過剰にさいなまれ、海運業界も収益性が大きく損なわれ、構造調整が不可避になっている。
そうした中、韓国の韓進海運が、負債額6兆6,402億ウォン(約6,200億円/0.0932円)、うち借入金5兆6,000億ウォン(2015年末時点)を抱え、8月31日法定管理(=会社更生法)を申請して経営破たんした。
9月1日夕、正式受理され、法律上の管理人は石泰寿現社長が務め、韓進海運の更生手続きを進めるかどうかを決定する調査委員には三逸会計法人が選定された。

韓国経済新聞は、現在の金融業界と政府を嘆き次のように記載している。
<申請⇒差し押さえ・入港拒否・・・大混乱>
韓進海運の法定管理(会社更生法)の申請を受け、韓進海運に傭船を出している世界の船主は、運航中の韓進海運の船舶の仮差押さえに出た。
世界の港湾でも、これまでに滞納された入港料に、現金を支払わない限り、入港を拒絶している。
釜山からの出航はすべてストップしている。8月30日にはかなりの荷を積み替えたり、降ろしたりしている。

今後、釜山地域を中心に被害規模が、最大17兆ウォン(約1兆6000億円)が想定され、消える雇用は2万~3万件に達するとの分析も出ている。国際海上輸送賃は、釜山~米国ロサンゼルス(LA)間のコンテナ船運賃が、FEU(40フィート規模のコンテナ)あたり、1100ドル(約11万円)から1700ドルへと55%ほど暴騰しているという。

韓進海運は、韓国の北米向け輸出の18%、北米からの輸入の22%を担っている。
昨年、サムスン電子は北米輸出量の56.0%、LGケミカルは53.8%、ネクセンタイヤは24.9%、LG電子は23.2%を韓進海運が担当していた。
交易大国である韓国の輸出品の99%以上を運送する海運の支障は、関連産業に広がり経済全般にしわ寄せが来るほかはない。

<韓国の歪な構造調整・債権団の再建支援口実>
このような虚しい結末は、構造調整7年間にいったい何をしてきたのかという疑問を持たせる。債権団は「迅速買収制」だとか言って助けるふりをしたが、実際には年12~14%台の高金利の商売を行ったに過ぎなかった。債権団は「いかにして会社を生かすか」という思いよりも債権回収に重点を置いた。

ほぼ、同時期に世界3位の船会社CMA-CGMが、モラトリアム(支払猶予)を宣言するとすぐにフランス政府が50億ドルの救済金融および利子猶予措置をしたこととは克明に対比される。
中国もグローバル海運業の不況に直面して約40兆ウォン以上を注ぎ込んだ。

状況が、このように急速に回っている渦中でも、韓国の金融委は、腕組みをしたまま債権団と市場の自律決定を尊重するという中身のない話ばかり繰り返している。
韓国では「原則主義という美名」の下、イニシアチブを放棄した金融委は結局、今回の災難につなげた。
債権団は、すでに引当金を十分に積んだだけに、いざという時には破産につながってもほとんど打撃がない。問題は、産業がどうなるのかだ。

<法定管理申請後も混乱続く>
金融委は優良資産を現代商船に譲渡案
法定管理後の処理案も混線をきたしている。
金融委は、優良資産を現代商船に買わせる資産負債移転(P&A)方式のM&Aを話すが、法定管理時に資産価値が急速に損なわれるという問題を突破するのは容易ではない。
核心資産が、すでに処分されて優良資産は特に残ってもいない状況だという告発もある。

現場の混乱とは違い、金融当局は、表舞台には現れず、証券市場が安定的で、銀行や金融市場に及ぼす影響は制限的だと冷静に構えている。

法定管理を申請した韓進海運の運命を、今後どうするのか、政府はいったいどんな絵を描いているのかまったく伝わってこない。
韓進海運を整理した後、韓国の海運業をどのように引っ張っていくのかというマスタープランが
あるのかどうかも気になるが、今のところ何も見えてこない。

<政府の計画(予想)>
  韓国№1の海運会社の韓進海運、韓国のコンテナ輸出入物量の6.6%を担う。世界の海運業界でもコンテナ船腹量(船舶輸送量)は5.1%に達し、現代商船は2.1%に過ぎず、韓進海運の代行はそのままではできない。それゆえ、韓進海運が自社所有する船腹を現代商船に(値引きした)負債もろとも引き継がせる案を現実化させるようだ。

韓進海運は、国際海運同盟の「海運アライアンス」に属し、航路を世界に有しているが、今回の法定管理申請で剥奪される恐れが高くなっている。
政府支援が受けられず、すでにぐちゃぐちゃになっている船舶の大混乱、80余ヶ国の1万6400社の荷主との取引の継続問題、入港料等公的滞納問題などから、実質破綻させた以上、(法定管理=会社更生法による)再建は困難とみなされている。
政治的に、再建途上の現代商船に、韓進海運の所有船舶などを抱えさせるものと見られる。

<政府に構造調整能力があるのか>
大宇造船海洋では、政府は再建を確約したように再建支援しているが、海運・造船業の構造調整の知識と知力があるのかさえ疑問が生じるほかはない。

政府内の最高海運専門家集団である「海洋水産部」(=省)は、どこで何をしているのか表舞台には現れず失踪状態。

海水部の高官でさえ「メディアを通じて状況を把握している」と言うほど担当部からは最初から排除されている。金融委が海水部をワンランク下に見て相手にしないといううわさが出回るほどだ。

<韓進グループはこれまでに最大限支援してきていた>東亜日報
韓進海運と大株主側の無誠意が、法定管理を招いたというのが政府の主張している。
だが、韓進グループはこの間、系列会社まで動員して2兆2000億ウォンの自救案を実践してきた。意欲が強すぎてあまりにも早く自救カードを取り出したのが敗因という評価まで出ている。
政府と仕事をする時は、「最大限ずるずる引っ張って公務員たちを困らせなければいけない」という話は今回も事実のように広く受容されている。

<政府系産業銀行の見解=政府見解>
政府系の産業銀行の李東杰会長は、「大株主とオーナーとして責任のある姿が十分でなかったため、経営改善策を受け入れなかった」「不足資金は1兆~1兆2000億ウォンだが、韓進グループが提出した経営改善策の規模(5000億ウォン)だった。韓進グループは最後に追加の経営改善策を出したが、それほど変わらなかった。資金執行時期を操り上げただけで、支援金額は増やさず5000億ウォン(約450億円)を維持した」として、債権団は支援を打ち切ることを決定した。
(これまでグループ中核会社であり、また産業銀行含む債権団の求めもあり、グループで巨額の支援を行ってきたにもかかわらずだ。官僚らしく、これまでの経緯を見ようとしない)

<韓進海運の内部問題>
もちろん韓進海運が一方的な被害者だと主張するものではない。
世界第7位、国内最大の韓国籍の海運会社の韓進海運、グローバルの業界状況に対処できない経営の失敗は、どんな言葉でも弁解しがたい。
内部者取引などの論議も呼んだ。CEOの無能力も問題だった。船主との傭船料値下げ交渉でさえ、米国のマーク・ウォーカー弁護士が介入して「そのような交渉が可能だと思っていた」としていたほどだ(現代商船は傭船料の値下げ交渉に成功させていた)。
そのような他力本願・無知が、会社をこの有り様に至らしめた。

<監督官庁は何している>
主務部署であるはずの海水部は何をし、構造調整に関連した韓国の知識総量がこのレベルしかないということなのか。
万が一、知識が足りなければ外国人でも連れてきて構造調整の指令塔に座らせる方が良いのではないだろうか。
無能な人々が集まって座って騒いでみても、船はさらに逆方向の山に向かってのみ進むのではないか。この7年間にやってきたことがそうだ。

以上、主に韓国経済新聞、ほか韓国各新聞社情報参照、

[ 2016年9月 3日 ]
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