もともと先進国政府が新興国の政府に対して無償・有償で進めるODAの対外援助、最近は政府系金融機関が窓口になり、相手先も国家ではなく、政府系の株式会社や民間企業に対して行われ、把握できるものとできないものになっている。しかし、そのほとんどは政府が保証もしくは保証せざるを得ないものになっているという。
そうして借り入れた借金国は、経済支配され従属する結果を招き、それは国連の採決に確実に現れ、ASEAN会議での声明などにも現れている。
米「ウィリアム・アンド・メアリー・カレッジ」の「エイドデータ」は、中国で2000年~2017年に承認された165ヶ国に対する海外事業プロジェクト13,427件を分析した結果、その投資額は8,430億ドルに上ると明らかにした。
これはこれまでに把握されていた4,580億ドルより率にして84%、額にして3850億ドルも多い投資額になっている。
港湾・鉄道・空港・道路インフラ・高速道路・通信、鉱山開発、ダムなど多岐に渡っている。
台湾を追い落とすために、台湾と国交のある南太平洋の島々の国々に対するインフラ投資=借金の漬物国化による台湾断交、中国国交という一帯一路の政治・軍事戦略に基づく投資も行われている。
特に東南アジアに対しては、中国と東南アジアを直接つなぎ、インド洋に出る一帯一路の軍事戦略に基づき、ラオス、タイ、マレーシア、ミャンマーへの鉄道投資計画が際立ってきている。
インドネシア新幹線も、中国寄りのメガワティ元大統領率いる闘争民主党政権になったとたんに、日本が前政権と進めていたインドネシア新幹線工事を、中国に受注させるなどやり方もえげつなかった。
中国への発注は表面的には安価であったこと、政府保証を付けない条件に合致したというが、2019年4月開業予定はまだ工事中、それも土地取得が遅れたインドネシア側の責任にしている。
受注後、中国は外貨不足に陥り、インドネシアの鉄道開発公企業への融資はなかなか実行されず、路線の土地買収が資金不足から進められなかった経緯もあった。また、2019年4月開業予定遅れでは、インドネシア政府は国民をごまかすために延伸計画を発表している。総じて安価だった工事費用の5000億円も膨らみ続けている。区間もジャカルタ-バンドン間150キロ、高速道も整備されており、費用対効果は限られ、融資の金利も高く、事業収益で返済できるかは疑問視されてもきている。
ラオスの場合は、中国の昆明と首都ビエンチャン間の高速鉄道事業。この事業には、ラオスの年間国内総生産(GDP)の3分の1に当たる59億ドルの投資額、このうち60%に当たる35億ドルは事業主体である「ラオス-中国鉄道」(LCRC)が中国輸出入銀行から融資を受けた。この融資には、同社が収益を上げられない場合、ラオス政府が肩代わりするという条件がついている。
さらに、ラオス政府はこれとは別に、中国輸出入銀行から4億8千万ドルを借り、LCR社に資本金として出資している。
LCR社(ラオス-中国鉄道)の株の70%は中国国営企業3社が保有しているが、これら企業は債務未償還の責任を負わない構造でラオス政府との合弁で運営法人が設立されている。
ラオス政府は、今年営業に入ったLCR社は6年目の2027年までには黒字転換が可能だと楽観視しているが、主な収入源となる中国-タイ間の貨物・旅客事業の見通しは不透明だと報告書は指摘している。新コロナ事態で人的な両国間の移動は中国政府により厳しく制限されルナ科での開業となっている。
こうした事業には中国の政府系銀行が融資を行い、工事主体も資材も人夫も中国から送り込まれ、その工事代金さえ、中国へ還流させている。
インフラ投資の見返りが鉱山開発の場合であっては、機材も中国から直接搬入、環境破壊、環境汚染、地元労働者の採用は少なく、中国から労働者も派遣、住民の反発は大きいものの相手国の政権者は賄賂ももらい聞く耳持たず、中国主導だけで開発が行われている。
相手国への借款事業は3割程度とされ、残りは国営金融機関から、特殊目的法人、合弁企業、民間企業などに対して行われており、そうした事業への中国側の貸付は、双方国とも一部しか表面化させず、中国の総投資額がいくらになるかも不明となっていた。今回、それが明らかにされた。
中国はそうした投資=融資に対する担保として、相手国の資源を戦略的に確保する狙いもあるという。
原油資源のベネズエラへの投資の92.5%、
銅など鉱物資源のペルーへの投資の90.0%、
天然ガスのトルクメニスタンは88.6%、
原油の赤道ギニアは80.3%、
原油・天然ガスのロシアは76.6%
など万が一の将来のために、条件付で資源の採掘権の供与を受け、採掘権料により回収する条件になっているという。
インフラ投資と賄賂で相手国に入り込み、資源の採掘権を確保、その資源によりインフラ投資額を回収する。
中国の政府系銀行から相手国の事業会社に対して融資される金利は6%前後とされ、低金利時代、中国の政府系金融機関は相手国が破綻しない限り、取りはぐれのない貸付でもある。
米国のアフガン介入により、巨額を米国や日本など西側国からせしめたパキスタンも泡く銭は長続きせず、近年は国家の放漫経営に外資不足に陥り、IMFが支援する動きもあったが、欧米加盟国がIMFが介入融資すれば、その資金は中国への弁済に当てられるとして反対した。
そのため、中国がさらに融資してパキスタンの金融危機は回避されたが、パキスタンの根本問題はさらに増幅したと見られている。
インド洋の戦略地でもあるスリランカは、中国のインフラ投資の見返りに、港湾を中国に99年間貸与、その代金でインフラ投資の借金返済に充当させている。しかし、スリランカ政府はさらにインフラ投資を中国に要請し続け、借金の漬物国となっている。空港も借金のカタになるのではとされている。その後、非中国派が政権をとったものの、中国からのインフラ投資が少なくなり経済悪化、再びスリランカ国民は甘い汁を吸おうと中国派の政権を選択している。
インド洋の楽園モルディブ共和国でも中国によるインフラ投資による借金の漬物国となっている。
台湾断交の南太平洋の国々やスリランカ、モリディブも中国の一帯一路の軍事戦略に基づく、借金の漬物国となっている。
特に南太平洋の諸国やモルディブなどの産業は唯一観光であり、2019年まで中国からの旅行者で潤ってきたが、新コロナ事態に、観光客はまったく来なくなり、中国製ワクチンの代金までさらに借金に積み重なり、外資不足で首が回らなくなる可能性が大きくなっている。
こうして外貨不足に陥った国々対してIMFが面倒を見ることは考えられず、肝心の中国も国内では、共産主義のイデオロギー政策により、ネット企業は規制強化により萎縮、米市場での信用もなくなり、石炭不足は電力不足を伴い、世界の工場である中国のサプライチェーンは寸断され、資源価格も生産者物価指数も急騰し、産業全体がぐちゃぐちゃになる寸前となっている。
そうした中、不動産バブルの崩壊も懸念され、目先、中華思想に基づく一帯一路戦略の余裕などなくなってきている。
50ヶ国以上が借金の漬物国になっているとされ、そうした国では、新コロナ事態で外貨不足に陥っているとされ、今後の動向が懸念されている。
スクロール→
中国の一帯一路戦略による借金漬物国の債務額
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エイドデータ版 /百万usドル
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GDP比
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推定借金
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20年GDP
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ラオス
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35%
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6,587
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18,820
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トルクメニステン
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23%
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1,060
|
4,609
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トンガ
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21%
|
105
|
499
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カザフスタン
|
16%
|
27,398
|
171,240
|
ブルネイ
|
14%
|
1,680
|
12,003
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アンゴラ
|
12%
|
7,005
|
58,376
|
モザンピーク
|
12%
|
1,683
|
14,029
|
ナミビア
|
12%
|
1,285
|
10,710
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コンゴ民
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11%
|
5,358
|
48,707
|
パプアニューギニア
|
11%
|
2,561
|
23,279
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計165ヶ国
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843,000
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