米国の4~6月の第2四半期のGDP(国内総生産)の伸び率は年率に換算してマイナス▲0.9%となり、2期連続のマイナスとなった。
記録的なインフレを抑えこむための急ピッチの利上げによって住宅投資が大きく減少したことなどが主な要因。
米経済は4~6月(第2四半期)に2四半期連続の減少となり、リセッション(景気後退)のリスクが高まった。
数十年ぶりの高インフレで消費支出が抑制された上に、米金融当局の利上げで企業の投資や住宅需要に影響が及んだ。
米経済の最大部分を占める個人消費は1.0%増と、前四半期に比べて減速し、市場予想(1.2%増)も下回った。
4~6月GDP統計はバイデン政権にとってはさらなる頭痛の種となる可能性があり、金融当局の利上げペースを巡る議論も複雑にさせそう。
4~6月は、
家計支出の減速、
企業投資の減少
政府支出の減少、
住宅投資の減少(着工戸数21Q4は5,037千戸、22Q1は5,159千戸、22Q2は4,955千戸)
在庫の減少
がGDP全体を押し下げる方に働いた。
一方、貿易赤字の縮小はプラス要因だった。
GDPから純輸出と在庫を除いた実質国内最終需要は前期比年率▲0.3%減少。1~3月は2%増だった。
通常、2四半期連続で実質GDPが前期比マイナスとなった場合にリセッションと見なされる。
4~6月の個人消費は1.0%増
サービス支出が前期比年率4.1%増に加速、
財の支出は▲4.4%減少。
個人消費の1~3月は2.7%増、10~12月は2.5%増だった。
設備投資は実質ベースで▲0.1%減少、構築物と機器への投資が減った。
知的財産への支出は堅調に増加。
住宅投資は▲1.4%減と、コロナ禍で最大の落ち込み。
急激なインフレと高水準の借り入れコストが住宅市場を圧迫している状況を映している。
(1~3月はインフレ調整後の民間投資は9.2%増。設備機器と知的財産への投資が伸び、住宅投資は2.1%増加していた。)
純輸出の寄与度はプラス1.43ポイント、
在庫はマイナス▲2.0ポイントだった。
(1~3月は、純輸出の寄与度はマイナス▲3.2ポイント、在庫はマイナス▲0.84ポイントで、全体を押し下げていた)。
米金融当局が注目する個人消費支出(PCE)価格指数は年率7.1%上昇。
食品とエネルギーを除くコアのPCE価格指数は4.4%上昇、1~3月の5.2%上昇からは鈍化。
以上、
バイデン政権がもたらした世界の商品価格の高騰、沈静化させるためには、米経済を失速させ、物価を下げ、その後、早期にほどほどのプラスに回復させることが、世界経済を安定的に成長させる唯一の方法ではないだろうか。
今後、ロシア産の原油も小麦も、米国が圧力を加えない限り、ロシアが露制裁外の国へ直接輸出することになり、需給バランスはほとんど解消される。特に原油は米国が19年当時の生産量に戻すだけで需給バランスは解消され、価格高騰も納まる。
ただ、天然ガスは、パイプライン以外は天然ガス生産国でLNGにして船舶により輸出する必要があり、生産とLNG化の生産施設には限界があり、世界一の天然ガス生産国である米国で大規模LNG生産施設が完成する5年先まで高止まりは必至だろう。
米GDP四半期
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米GDP通年
|
19Q1
|
3.1
|
2012年
|
2.3
|
19Q2
|
2.1
|
2013年
|
1.8
|
19Q3
|
2.8
|
2014年
|
2.3
|
19Q4
|
1.9
|
2015年
|
2.7
|
20Q1
|
-5.1
|
2016年
|
1.7
|
20Q2
|
-31.2
|
2017年
|
2.3
|
20Q3
|
33.8
|
2018年
|
2.9
|
20Q4
|
4.5
|
2019年
|
2.3
|
21Q1
|
6.3
|
2020年
|
-3.4
|
21Q2
|
6.7
|
2021年
|
5.7
|
21Q3
|
2.3
|
|
21Q4
|
6.9
|
22Q1
|
-1.6
|
22Q2
|
-0.9
|
22Q3
|
|
米GDP推移
|
19Q1
|
3.1
|
19Q2
|
2.1
|
19Q3
|
2.8
|
19Q4
|
1.9
|
20Q1
|
-5.1
|
20Q2
|
-31.2
|
20Q3
|
33.8
|
20Q4
|
4.5
|
21Q1
|
6.3
|
21Q2
|
6.7
|
21Q3
|
2.3
|
21Q4
|
6.9
|
22Q1
|
-1.6
|
22Q2
|
-0.9
|