ゴールドマン・サックスは今年6月にも価格は反転して高くなり100ドルを突破、さらに2024年には余剰生産能力がなく、供給不足に陥り、価格はさらに高騰するとした予測を発表している。
米インフレ退治策の高金利は米経済の勢いを衰えさせるに至らないまま、一方で、中国経済が力強く回復中、中国は原油の輸入量が拡大し続け、供給不足に陥るとしている。
3月5日のWTI原油価格は99.44ドル。
新コロナ惨禍が世界中を覆った2020年当時、英石油大手BPのバーナード・ルーニー最高経営責任者(CEO)は衝撃的な見解を示した。
石油消費が新コロナ危機前の水準に戻ることは決してないかもしれないというものだ。しかし最近、同氏はその考えを180度方向転換させている。
温暖化ガス排出量を削減する大胆な計画を発表していたBPだが、ここにきて化石燃料への資金投入を増やしている。
国際エネルギー機関(IEA)によると、今年の石油消費量は過去最高を更新する見通し。一方でロシアによるウクライナ侵攻や、米シェールオイルの成長鈍化、生産投資の停滞などで供給は追いつかない。
(米国のシェールオイル軍団とスポンサーの投資ファンドは、高値で配当が多い方を選択している。軍団はバイデンと喧嘩状態であり、増産要請もしていない。(メキシコ湾岸のメジャーはシェールオイル軍団ではなく、バイデンと近いユダヤ系石油メジャー)
鍵を握るのが中国。
世界第2位の石油消費国である中国は、厳格なコロナ規制を撤廃後、原油購入を急拡大させている。需給の逼迫を背景にゴールドマン・サックス・グループや資源商社ビトル・グループなどは、今年後半に原油相場が1バレル=100ドルに上昇すると予想している。
サウジアラビアの国営石油会社、サウジアラムコのアミン・ナセルCEOは3月1日、リヤドで行われたインタビューで「中国からの需要は非常に強い」と語った。
アナリストらは今年下期までに原油市場が供給不足に直面するとみている。そのシナリオは、今週ヒューストンで開催される国際的なエネルギー会議CERAウィークに出席する業界幹部らの間でも取りざたされる。
こうしたリスクは、世界がクリーンエネルギーの比重を高めても石油需要は簡単には減退しないことを示している。
供給不足は生産者と投資家には追い風となるが、消費者には打撃となり、インフレ抑制に向けた各国・地域中央銀行の取り組みを難しくする。
「簡潔に言えば、人々は需要を過小評価し、米国の生産を過大評価しているというのが私の見方だ」と、トラフィグラのグローバル・チーフエコノミスト、サード・ラヒム氏はロンドンで先週開かれた国際的なエネルギー会合で語った。
以上、ブルームバーグ参照
中国は2016年からEV販売を強化してきたが、世界一の石炭生産量も購入量も最大となり続け、また、原油調達も増加し続けている。14億人が動き出したパワーは図りしれない。中国民は厳しかった2022年のゼロコロナ策において、貯蓄が300兆円以上増加しており、当然リベンジ消費での購買活動を活発化させてきている。
全人代は今年のGDP成長率目標を5%に設定したが、ゴールドマンらはそれ以上になるとみている(ゴールドマンは中国の車両の渋滞状況まで調べ上げている)。
中国EV化促進策は北京中南海の人たちの鼻毛対策、当時、北京周辺の煙突工場は地方へ強制移転させられていた。最大の石炭燃焼地帯は新疆ウイグル地区、コンビナートがいくつもあり、石炭火力発電所が無数ある。その発電力で鉄鋼やレアメタルを生産し、世界のEV用バッテリーの材料を生産している。豪州どころか米国からもリチウム鉱石を購入し、中国の安価な電力で溶融分離しレアメタルを生産している。石炭を重油をボンボン燃やして造られた膨大なレアメタルを、先進国の首脳たちは自己満足的にEVを走らせ、大喜びしている。
ロシアは西側から制裁を受け欧州が輸入しなくなっているが、インドや中国・UAEなどが安価に輸入して利益を貪っている。UAEに至っては自国産と混ぜ相場で販売してポロ儲け、生産調整するOPECから脱退の噂も出ている。
サウジアラビアは完全に米国離れ、露制裁にも加担していない。中国と迎撃劇ミサイルの研究開発と生産工場を建設している。
(オバマ政権時代の2014年原油が暴落したとき、OPECは米国に対して減産要請したがオバマ政権は応ぜず、ロシアが減産に応じ、それからOPECは+αとなっている。OPECはこの時から大きく米国離れした。米×サウジの原油に関する問題は人権問題ではない)
このままだと輸出規制がかかっており、ロシア産原油はメンテナンスができなくなり、大幅に生産が減少する可能性すらある。現状、代替原油生産国はなく、結果、価格は暴騰することになる。
露制裁を主導する米国は原油も天然ガスも自前しており、国家としては痛くも痒くもない。
米バイデン政権の政策であるChips法もIRA法もウクライナ戦争支援策も自国のインフレ促進策でもあり、インフレ退治に大きく逆行している。退治策にもかかわらず、インフレはこれ以上ほとんど下がらない。今後は中国発で物品が上昇=インフレとなる。
中国の原油需要
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中国
|
万バレル/日
|
2000年
|
480
|
2005年
|
700
|
2010年
|
920
|
2015年
|
1,200
|
2019年
|
1,400
|
2020年
|
1,440
|
2021年
|
1,530
|
2022年
|
1,520
|
2023年
|
1,580
|
スクロール→
2021年の原油生産国ランキング/量/BP版
|
|
|
千トン
|
シェア
|
|
世界
|
4,221,366
|
|
1
|
米国
|
711,125
|
16.8%
|
2
|
ロシア
|
536,446
|
12.7%
|
3
|
サウジアラビア
|
515,023
|
12.2%
|
4
|
カナダ
|
267,096
|
6.3%
|
5
|
イラク
|
200,829
|
4.8%
|
6
|
中国
|
198,881
|
4.7%
|
7
|
イラン
|
167,658
|
4.0%
|
8
|
アラブ首長国連邦
|
164,381
|
3.9%
|
9
|
ブラジル
|
156,792
|
3.7%
|
10
|
クウェート
|
131,093
|
3.1%
|
11
|
メキシコ
|
96,486
|
2.3%
|
12
|
ノルウェー
|
93,796
|
2.2%
|
13
|
カザフスタン
|
85,989
|
2.0%
|
14
|
ナイジェリア
|
77,929
|
1.8%
|
15
|
カタール
|
73,320
|
1.7%
|
|
その他
|
744,522
|
17.6%
|