アイコン クレディ・スイス破綻 今後の造船業界を直撃か UBS船舶向け融資縮小示唆

Posted:[ 2023年4月 6日 ]

欧州で広がっているクレディ・スイス(CS)の破綻騒動の火の粉が、韓国の造船業界に飛んでくるのではないかと懸念する声が出ている。
多くの業界専門家らは大きな影響はないとみる反面、推移をよく見守らなければならないという指摘も提起されている。
クレディ・スイス問題が、なぜ韓国の造船業者に影響を及ぼしうるのか。

クレディ・スイスは、スイス最大の銀行であるUBSに買収されることになった。
UBSは最近、クレディ・スイスの船舶金融の割合を減らすと発表した。
船舶価格は種類や大きさにより差が大きいが、LNG船やコンテナ船(2万3千TEU級)は、新規の船舶を基準とすると約200億円(2000億ウォン)を軽く超える(最近は1隻平均250億円)。
海運会社がこれほどの価格の船舶を発注するには、船舶金融が必須となっている。よって資金市場が塞がれると、船会社としては新規の船舶発注だけでなく既存発注の船舶の建造代金を支払うことも困難にならざるをえない。

造船所と船舶契約を結ぶのは海運船会社ではない。

 



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船会社は発注のために特別目的会社(SPC)を設立する。
船舶の建造代金を100万ウォンとする場合、SPCは通常、銀行などから優先融資として80万ウォンを、船舶投資会社やファンドなどから劣後融資として20万ウォンを調達する。多くの場合、船会社が一定の自己資金を投じる。

(劣後融資とは、高金利の融資である一方、劣後融資先が破綻すれば優先債権や通常債権を支払い、残った分が返済財源となる。破綻した場合はほとんど紙切れになるということ)

形式的には、船会社はこのSPCから船舶を借りて貨物運送の営業を行っている。
船会社から用船料を受け取るSPCは、融資元に元利金を支払う。船会社は、船舶建造代金として20万ウォンを負担したので、用船料からその金額分の免除を受ける。
船を借りる期間が終わると、多くの場合、船舶は船会社が買収する。
以上、韓国紙参照

2014年の造船不況、リーマンショック後、鋼材価格等大幅に値下がりし、韓国の造船大手3社は、その後、競争してダンピング受注を敢行、しかし、経済回復が遅れ、海運市況は悪化、船舶は完成したものの、契約会社が違約金を支払い、船舶を引き取らず、造船会社が自ら造船した船舶を転売処分する必要に陥った。当然、ダンピング価格での売却となる。それは良い方で違約金の支払いもせず、引き取りもせず、放置し、造船会社は一定期間そのまま係留し、その後、自ら処分するというものだった。
そのため、2014年・2015年には韓国の造船大手3社は挙って大赤字となり、銀行管理に陥った。その後は選別受注が強化され、受注量は大幅に減少した。

ところが、2017年5月に登場した文在寅大統領の政権では、造船労働者の大量失業問題を抱え、失業させないように国費で雇用維持をはかり、造船会社には銀行管理を辞めさせ、再び世界中で受注し捲った。
前回はSTXなど破綻したこともあり、今回は高額となる超大型コンテナ船やLNG船の受注に的を絞った。2020年に入った途端、新コロナ事態により、世界の港湾で荷揚げ作業が滞留、荷揚待ちの船舶が港湾外に溢れ、船舶不足に陥り、海運料金が暴騰した。さらに、昨年3月の露制裁により、LNG船の不足が現実のものとなり、韓国勢は大手船舶会社やカタール政府などから大量受注に成功、そのかいあって、韓国勢3社はMOUも含め豊富な受注量を抱えている。

ところが、足元では、韓国造船3社の2021年、2022年の決算では、鋼材価格の高騰、労働者不足もあり、3社とも赤字計上、今年期が正念場となっている。韓国造船会社のLNG船は積載量が多くなる箱型でフランス企業に特許権があり、1隻あたり20億円あまりを支払っている。

日本の大手船会社3社は、関係に造船企業を持つ川重(ほとんど中国で造船)を除き、商船(三井)も郵船(三菱)も関係造船会社は商船の造船から撤退、韓国の造船会社に大量発注している。

UBSが海運会社への融資を抑制すれば、今後の発注は減少する可能性もある。
既に新コロナ事態での船舶の港湾滞留は解消され、船舶量は過剰状態、インフレ退治の高金利政策により経済は低迷しかかってきており、世界経済が低迷すれば、自ずと世界の海運量は減少し、過剰船舶問題が再び浮上することになる。

ただ、LNG船は、欧州がロシアからのパイプラインによる天然ガスの購入を遮断する動きにあり、対応した米国の欧州輸出向け大規模LNG生産基地が完成してくることから、また、カタールが欧州向けに大量増産体制に入っており、そのニーズはまだかなりあると見られる(韓国勢はカタール政府とMOU契約済みで一部発注も実現している)。

UAEは自国産の原油に露原油を混ぜ、国産原油として販売しており、LNGも同様な動きをする可能性もある。疑わしく欧州国が買わなくとも購入する国は世界を見れば山のようにある。それも相場より安ければ喜んで購入することだろう。
西側の露制裁により安価に購入した露産原油が、中国やインドで石油精製され、精製油やエタノールなどがインド産なり、中国産に化け欧州へ大量に輸出されている。
 


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海運会社世界ランキング 2021年実績

1

MSC

スイス

2

Masersk=マースク

デンマーク

3

CMACGM

フランス

4

中国遠洋海運集団=COSCO

中国

5

長栄海運=エバーグリーン

台湾

6

ハパックロイド=Hapag-Lioyd

ドイツ

7

ONE=オーシャンネットワークエクスプレス

日本

8

HMM (旧、現代商船)

韓国

9

陽明海運=YangMing

台湾

10

萬海海運=WanHai

台湾

ONEは郵船+商船+汽船の3社のコンテナ部門統合会社

 

海運市況でも、世界のインフレの発生は、米バイデン大統領の1.9兆ドルにおよぶ巨額の新コロナ経済対策に起因したものだと示されている。

  21年10月は米国でインフレが鮮明になった年月、  22年3月は露制裁の年月。

バルチック海運指数/(月末相場)

201912.

1,090

20203.

556

20206.

1,749

202012.

1,366

20216.

3,255

2021108.

5,526

202112.

2,217

20223.

2,544

20226.

2,331

20229.

1,760

202212.

1,515

20231.

676

20232.

883

20233.

1,389

・バラ積み船の傭船料の指数

 

 


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