アイコン 三越伊勢丹HD決算に見る「量から質」への大転換/インバウンド変調をねじ伏せた百貨店の進化

Posted:[ 2026年2月 9日 ]

三越伊勢丹ホールディングスが発表した2025年4〜12月期決算は、表面的には減収減益という結果となった。しかし、その内訳を精査すると、百貨店ビジネスが「集客数頼み」から「高付加価値・高効率」へと大きく舵を切り、すでに成果を出し始めていることが浮かび上がる。中国経済の減速や渡航制限の影響でインバウンド需要に変調が生じる中、国内富裕層とデジタル戦略で収益を確保した点が今回の決算の核心だ。

まず注目されるのが、主要店舗の明暗である。伊勢丹新宿本店や三越銀座店は、免税売上比率が高いことから訪日客減少の影響を直接受け、総額売上高は前年割れとなった。一方で、三越日本橋本店は前年比プラスを確保した。外商顧客を中心とする国内富裕層の支持が厚く、フランス展などの催事も奏功した形だ。インバウンド依存度が高い店舗ほど外部環境に左右されやすい一方、国内の固定客を抱える店舗は収益の安定性が高いことを示す結果となった。

 



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次に、同社が推進するCRM(顧客関係管理)戦略の進展が数字に表れている。アプリやカードを通じて購買履歴を把握できる「識別顧客」を重視する方針により、デジタル会員の購買額は非会員の約2倍、外商客ではさらに高水準となっている。2025年3月から本格導入された海外顧客向けの「世界アプリ」も、訪日客の“数”が減る中で、欧米豪を含む高単価客の取り込みに寄与した。10〜12月期の営業利益が過去最高を更新した背景には、こうしたデータ活用により、売れる顧客に適切なタイミングでアプローチできる体制が整ったことがある。

コスト構造改革も見逃せない。物価上昇による22億円のコスト増に対し、販管費を34億円削減した。要員補充の抑制や外部委託費の削減、宣伝費をマス広告からアプリ通知へと切り替える効率化が奏功したほか、海外事業などの持分法投資利益が収益を下支えした。売上が伸びにくい環境下でも利益を確保するための「削る」と「伸ばす」の選別が、着実に機能している。

同社は通期の連結純利益予想を650億円とし、過去最高を見込む。背景にあるのは、インバウンドが一服しても国内富裕層の消費意欲は底堅いという判断だ。インフレ進行により消費の二極化が進む中、三越伊勢丹は高感度・高付加価値市場に集中することで、売上規模が伸びなくとも利益を積み上げる体制をほぼ完成させたと言える。

今回の決算が示したメッセージは明確だ。かつての「爆買い」に象徴される量の時代は終わり、今後は「個客」との深い関係性が百貨店の収益を左右する。三越伊勢丹は、その転換を数字で示した数少ない成功例となりつつある。

 

 


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