本田技研工業の主力コンパクトカー「フィット」が苦戦している。かつて国内販売台数トップを誇った主力車種だが、現在は競合の「ヤリス」や「ノート」に水をあけられる状況だ。
背景には二つの構造的要因がある。
第一は、商品性の“中途半端さ”だ。現行4代目は「心地よさ」や視界の良さといった実用面を重視した設計だが、ヤリスのようなスポーティさ、ノートのような電動感・先進性といった明確なキャラクターが弱い。実用性は高いが、所有欲を刺激する決定打に欠けるとの指摘が多い。
第二は“身内競合”である。軽自動車の「N-BOX」が圧倒的な販売力を持ち、広さや利便性を求める層を取り込んでいる。さらに上位車種では「ヴェゼル」や「フリード」が存在感を高め、フィットは立ち位置を曖昧にしている。
こうした状況の中、2026年秋にもフルモデルチェンジが取り沙汰される次期型が転機となる可能性がある。復活への鍵は四点に整理できる。
第一に、デザインの刷新だ。癒やし系から一転し、よりエッジの効いた外観で「速そう」「先進的」と感じさせる印象づけが求められる。ホンダらしい遊び心や軽快さの復活が不可欠だ。
第二に、ハイブリッド性能の深化。燃費競争だけでなく、e:HEVの強みであるモーター駆動の滑らかな加速を前面に出し、「走りで選ばれる」モデルへの進化が必要となる。
第三に、SUV志向の強化だ。現行で比較的健闘する「CROSSTAR」を発展させ、コンパクトSUV的な魅力を主軸に据える戦略も現実的である。
第四に、デジタル機能の拡充だ。高度なコネクテッド機能やAIアシスタントなど、若年層に響く“スマートカー”体験を標準装備レベルで実現できるかが差別化要因となる。
フィットは今、単なる実用車から「選ばれる理由のある一台」へ再定義できるかの岐路に立っている。次期型がホンダのブランド力を再び押し上げる存在となれるか。2026年後半は、その試金石となりそうだ。
