ロンドンにある住宅ローン会社マーケット・フィナンシャル・ソリューションズ(MFS)の破綻を発端に欧米の主要銀行・投資ファンド株が急落している。
2007年サブプライムローン問題で破綻した住宅金融ノーザン・ロックに類似しているという。ノーザン・ロックの取り付け騒ぎは翌2008年のリーマン・ショックに端を発する世界金融危機の前触れとなった。それだけに市場は次の金融危機に身構えている。
MFSは2026年2月25日破綻申請を行い、管財人の管理下に入っている。
このニュースが伝わると
米ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループは最大▲16%安、
英バークレイズも同▲5%安、
銀行株で構成されるKBWナスダック銀行株指数も▲5%近く下落した。
■ブリッジ・ローン(一時的なつなぎ融資)で急成長
トランプ米政権の関税ショック以来、約10ヶ月ぶりの大幅な下げとなった。
震源地のMFSは2006年経営コンサルタントのパレシュ・ラジャ氏によって設立された非銀行系金融機関。
不動産購入時の短期資金を提供するブリッジ・ローン(一時的なつなぎ融資)で急成長した。貸付用物件向けローンも手掛けた。
「3日で5000万ポンド融資」をうたい文句に融資残高を2024年末時点で約24億ポンドにまで膨らませた。
資金源は
●大手金融機関のバークレイズ
(MFSに不明朗な取引が露見し、同行がMFS口座を凍結し破綻に至った)
●ウェルズ・ファーゴ、
●アポロ傘下のアトラスSPパートナーズの担保付き融資だった。
MFSが破綻した背景には「二重担保」や「海外汚職」などの不正疑惑が絡む。
同一不動産を複数の貸し手に担保として差し出し、不正に多額の資金を引き出していた疑いが浮上。
約12億ポンドの投融資に対し実際の担保価値は約2.3億ポンドしかなく、約9.3億ポンドの不足が指摘されている。
不正の塊バングラデシュ前大臣と大きく絡む
■英国で不動産帝国を築き上げたバングラデシュの元土地大臣、
2024年に崩壊したバングラデシュのハシナ政権で土地大臣を務めていたサイフザマン・チョウドリー氏はMFSのラジャ氏と極めて親密で、英国で築き上げた不動産帝国のかなりの部分をMFSからの融資に依存していた。
MFSは家族経営で、ラジャ氏は融資の全権を握っていた。
チョウドリー氏が関連する会社が英国内の不動産に対して設定した担保のうち少なくとも291件にMFSが関与。同氏の公的年収は1万2000ドルだったにもかかわらず、不動産だけで世界で600件以上、うち英国で約360件の不動産を所有していた。
MFSの主要口座での不適切な管理やラジャ氏らによる不正な資金移動の懸念が貸し手側から提起され、バークレイズが口座凍結に踏み切ったことが今回の信用不安の引き金となった。
影響は近年急成長してきたプライベート・クレジット市場全体にも飛び火した。
■「ゴキブリは1匹見つかれば、他にもたくさんいる」
KKRやアポロ、ブラックストーンといった大手投資ファンドの株価も最大▲6~12%下落した。
KKR傘下のファンドが融資先の延滞率上昇を発表したタイミングと重なり「貸し出し基準が甘すぎたのではないか」という不信感が市場に広がっている。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは2024年10月、第3四半期決算発表の際「ゴキブリは1匹見つかれば、他にもたくさんいる」と、規制により銀行の活動が制限されればリスクは銀行から見えない場所(非銀行系金融機関)へと押し出されるだけだと警告を発した。
2008年の世界金融危機がサブプライムローンの質の低さから始まったようにMFS破綻も「利回り追求で審査や管理が疎かになった」という共通点がある。
人工知能(AI)による産業構造の急変や金利の高止まりという新たなストレスの中で「融資の質の劣化」が露呈し始めている。
三井住友銀行(SMBC)は約1億ポンド(約210億円)、
エリオット・インベストメント・マネジメントは約2億ポンド、
マッコーリー・グループも約5000万ポンド
のエクスポージャーがあるという。
MFSについてはすでに2000億円相当の担保不足が指摘されている。