アイコン アパレル倒産は減少も楽観できず 衣料小売と縫製工場に広がる静かな淘汰

Posted:[ 2026年7月 8日 ]

繊維・アパレル業界の倒産件数は、一見すると落ち着きを見せている。信用交換所によると、2026年上半期の全国繊維業者の倒産は163件で、前年同期比5.8%減少した。負債総額も390億9000万円で、同13.8%減少している。50億円を超える大型倒産はなく、統計上は「件数減、負債減」となった。だが、この数字だけで業界の底入れを判断するのは早い。水面下では、縫製工場と衣料小売を中心に、静かな淘汰が続いている。

目立つのは、派手な大型破綻よりも、長く業績不振に苦しんできた企業の整理である。原因別では「業績ジリ貧」が153件と全体の93.9%を占めた。業種別では「小売商」が64件で38.7%、「紳士・婦人・子供・被服製造卸」が40件で24.5%を占める。つまり、消費者に近い衣料小売と、メーカー・商社の下請け色が濃い製造卸の両側で、収益力の低下が進んでいる。

アパレル業界は、値上げをすれば利益が戻るほど単純ではない。円安による仕入れコスト上昇、物流費、人件費の増加を受け、多くの企業が価格改定を進めている。しかし、消費者の節約志向は根強く、販売数量の減少が利益を圧迫する。売上は天候や価格改定で下支えされても、仕入れ、人件費、在庫負担を吸収しきれず、手元に利益が残りにくい構図である。

 



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小売業にも弱さが残る。経済産業省の2026年5月商業動態統計では、小売業販売額全体は前年同月比5.3%増だった一方、織物・衣服・身の回り品小売業は0.7%減だった。自動車や家電、その他小売が伸びるなかで、衣料品関連は取り残されている。生活必需品の値上がりが続くなか、衣料品は買い替えを先送りしやすい。消費者が「買わない」「安いものを選ぶ」「中古やECで済ませる」方向に動けば、実店舗型の衣料小売には直接響く。

さらに深刻なのは、国内縫製の供給網が細っていることだ。山形県では今年4月、肌着縫製を手がける企業が破産手続きの開始決定を受けた。報道では、得意先である大手メーカーが海外シフトを進めたことが行き詰まりの要因とされている。これは一社だけの問題ではない。受注元が海外生産へ移れば、国内工場は仕事量を失う。一方で、残った工場も人手不足、高齢化、設備投資負担を抱える。ファクトリエも、日本の縫製工場では高齢化と若手不足が進み、技術継承が難しくなっていると指摘している。

アパレル不況という言葉だけでは、この問題の本質は見えにくい。衣料品が売れないだけでなく、国内で縫える工場、短納期に対応できる職人、小ロットを支える製造基盤そのものが縮んでいる。これは小売店の閉店やブランドの撤退よりも見えにくいが、いったん失われれば回復は難しい。地域の縫製工場が消えれば、国内生産を望むブランドも、修理や小ロット生産を頼む先を失う。

倒産件数の減少は、業界が健全化したことを意味するとは限らない。むしろ、すでに多くの弱い企業が市場から退出し、残った企業も低採算の仕事を選別せざるを得なくなっている可能性がある。衣料小売は販売数量の鈍化に苦しみ、製造側は受注減と人手不足に直面する。アパレル業界では、大型倒産が目立たないまま、地域の縫製工場と中小小売が少しずつ姿を消す“静かな淘汰”が進んでいる。

 

 

 


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