農業担い手100万人割れ 個人農家の退出進む、法人化が焦点に
日本農業の担い手不足が一段と深刻になっている。農林水産省が公表した令和8年農業構造動態調査によると、個人経営体で自営農業を主な仕事とする「基幹的農業従事者」は、2026年2月1日時点で98万6600人となり、前年から4万9600人、4.8%減少した。比較可能な統計で100万人を下回るのは初めてで、家族経営を軸としてきた国内農業は大きな転換点を迎えている。
高齢化も進む。基幹的農業従事者の平均年齢は67.7歳。75歳以上が35.3%、70~74歳が21.2%、65~69歳が13.7%を占め、65歳以上だけで全体の約7割に達する。若年層の厚みは乏しく、29歳以下は1.2%、30代は3.8%、40代も7.6%にとどまる。今後も自然減や体力面を理由とする離農が続く可能性が高い。
農業経営体全体も縮小している。全国の農業経営体数は79万9700経営体で、前年より4.4%減少した。このうち個人経営体は75万9000経営体で4.6%減った。一方、団体経営体は4万700経営体で1.2%増、法人経営体は3万4600経営体で2.4%増えた。減っているのは農業そのものというより、個人・家族単位で農業を担う経営構造である。
農地の集約は進みつつある。1経営体当たりの経営耕地面積は全国で3.8ヘクタールと、前年より5.6%増加した。北海道は34.6ヘクタール、都府県は2.7ヘクタールとなり、いずれも前年を上回った。小規模農家が退出し、残る担い手や法人に農地が集まる構図が強まっている。
影響が大きいのは水田農業だ。販売目的で水稲を作付けした農業経営体は49万9500経営体で、前年より3万8800経営体、7.2%減少した。規模別では10ヘクタール未満の層が減る一方、10ヘクタール以上の層は増えている。稲作でも小規模経営の退出と大規模化が同時に進んでいる。
ただ、法人化だけで担い手不足を補える段階にはない。団体経営体の役員・構成員は10万900人で前年比2.6%増、農業経営体の常雇いは24万5900人で1.6%増にとどまる。個人経営体の基幹的農業従事者が約5万人減ったことに比べれば、雇用型農業の増加幅は小さい。
政府は食料安全保障の観点から、2030年度に供給熱量ベースの食料自給率を45%、生産額ベースを69%に引き上げる目標を掲げる。担い手への農地集積率も2023年度の60.4%から2030年度に7割へ高める方針だ。 また、農業者の減少に対応するため、スマート農業技術活用促進法を施行し、認定を受けた農業者や事業者に金融支援などを行う制度も整えた。
もっとも、農地集約やスマート農業の効果は地域差が大きい。平地の大区画農地では機械化や法人化が進みやすいが、中山間地や小区画の水田、傾斜地の果樹園では引き受け手の確保が難しい。農業人口の減少は、単なる産業の人手不足にとどまらず、水路管理、集落維持、農地保全、地域の食品流通にも影響する。
基幹的農業従事者100万人割れは、日本農業が「高齢化の問題」から「生産基盤の再編問題」に移ったことを示す。農地を誰が引き受け、地域の農業インフラをどう維持するのか。法人化と集約化を急ぐだけでなく、小規模農地や条件不利地を含めた受け皿づくりが、今後の農政の焦点となる。
※データは農林水産省調べ





