万博EVバスのEVモーターズ・ジャパン、イクヨへ事業譲渡 不具合問題を抱え再建へ
大阪・関西万博向けのEVバスを納入した「EVモーターズ・ジャパン」が、自動車部品メーカーの「イクヨ」をスポンサーに選定し、EVバス事業を譲渡する。相次ぐ車両不具合や大阪メトロとの契約問題を受けて民事再生手続きに入った同社は、製品保証を継続しながら事業の立て直しを図る。
EVバス事業をイクヨに譲渡
EVモーターズ・ジャパンは2026年8月4日、民事再生手続きのスポンサーとして、東証スタンダード上場の自動車部品メーカー「イクヨ」を選定したと発表した。
今後、EVモーターズ・ジャパンが保有する土地や建物、機械設備など、EVバス事業に関係する資産をイクヨ側へ譲渡する。これまでに販売したEVバスの製品保証についても、イクヨ側が引き継ぐ予定である。
契約締結は2026年8月10日、事業譲渡は同年11月ごろを予定している。ただし、実行には東京地裁の許可と監督委員の同意が必要となる。
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項目 |
内容 |
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譲渡元 |
株式会社EVモーターズ・ジャパン |
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スポンサー |
株式会社イクヨ |
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譲渡対象 |
EVバス事業、土地、建物、機械設備など |
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製品保証 |
販売済みEVバスの製品保証を承継する予定 |
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既存債務 |
譲渡対象には含まれない |
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契約締結 |
2026年8月10日予定 |
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譲渡実行 |
2026年11月ごろを予定 |
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前提条件 |
東京地裁の事業譲渡許可と監督委員の同意 |
万博向けにEVバス約190台を納入
EVモーターズ・ジャパンは2019年に設立され、中国の自動車メーカーへ製造を委託したEVバスやEVトラックを、自社ブランドで国内販売していた。
大阪メトロには、大阪・関西万博の来場者輸送などに使用する大型バス115台、小型バス35台、オンデマンド交通向けの超小型バス40台の計190台を納入した。
万博需要を追い風に業容を急拡大し、2024年12月期の売上高は約80億900万円に達したが、その後、納入した車両で不具合が相次ぎ、経営環境は一変した。
317台を点検、113台で不具合
2025年9月には、大阪市内を走行していた超小型EVバスが、ハンドル操作が利かなくなる事故を起こした。そのほかにも車両停止やドア、ブレーキ周辺などの不具合が相次いだ。
国土交通省は、同社が全国へ納入したEVバス317台の総点検を指示した。点検の結果、113台でブレーキホースの損傷などを含む不具合が確認され、85台についてはリコールが届け出られた。
問題となったのは個別の車両不具合だけではない。海外の委託製造先を含め、設計変更や部品調達、完成検査、国内での保守までを一貫して管理する品質保証体制そのものが問われる事態となった。
大阪メトロは全190台の使用を断念
大阪メトロは全車両の運行を停止したうえで、安全性と長期的な安定性を確保できる体制を検討した。しかし、必要な安全管理体制の確立は困難と判断し、2026年3月、保有するEVモーターズ・ジャパン製バス全190台を今後使用しないと決定した。
大阪メトロはEVバスと充電設備の使用断念に伴い、補助金返還引当金などを含め、2026年3月期に約67億円の特別損失を計上した。契約解除をEVモーターズ・ジャパンへ通知し、購入代金の返還も求めている。
これに対し、EVモーターズ・ジャパンは、契約解除には法的根拠がないとして有効性を争う方針を示しており、両社の主張は対立している。
負債57億円で民事再生
車両の点検、修理、保証対応に加え、信用低下による受注減少や大阪メトロとの契約問題が重なり、同社の資金繰りは急速に悪化した。
2026年4月14日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、同月21日に民事再生手続開始決定を受けた。負債総額は債権者約280者に対して約57億円で、このうち金融債務が約53億円を占める。
イクヨはどのような会社か
スポンサーとなるイクヨは、自動車の内装・外装に使われる樹脂部品などを製造する自動車部品メーカーで、東京証券取引所スタンダード市場に上場している。
近年は従来の自動車部品事業に加え、EVや自動運転、エネルギー関連事業を成長分野に位置付けている。今回の譲受により、EVモーターズ・ジャパンが持つEVバスの開発技術や車両制御、充電、保守サービスなどを取り込む狙いがある。
「保証は引き継ぐが、借金は引き継がない」
今回の事業譲渡で重要なのは、販売済みEVバスの製品保証は承継する一方、EVモーターズ・ジャパンが抱える既存の借入金などの債務は、譲渡対象に含まれない点である。
つまり、イクヨ側はEVバス事業に必要な設備や技術、顧客対応を引き継ぐが、約57億円の負債をそのまま背負うわけではない。既存債務は、EVモーターズ・ジャパンの民事再生手続きの中で整理されることになる。
今後の焦点
1.既存車両の保証をどこまで継続できるか
全国で運行されている車両に対し、部品供給、修理、点検、改修を安定して続けられる体制が必要となる。
2.大阪メトロとの契約問題
契約解除の有効性や購入代金、損害の負担を巡る問題は未解決であり、民事再生手続きの中で大きな争点となる。
3.品質管理と信用の回復
新たな車両を販売する前に、海外の製造委託先を含めた品質管理と、不具合を迅速に把握・共有する体制を再構築できるかが問われる。
イクヨのスポンサー選定により、EVモーターズ・ジャパンの事業再生は一歩前進した。ただし、スポンサーが決まっただけで、安全性や契約問題が解決したわけではない。再建の成否は、新車を何台販売できるかよりも、既に納入した車両を安全に維持し、失った信用を取り戻せるかにかかっている。
※事業譲渡は東京地方裁判所の許可および監督委員の同意を前提としており、日程や内容が変更される可能性があります。
※記事は2026年8月5日現在の公表資料をもとに作成しています。