広島労働局は2026年10月29日、長時間労働が疑われる県内604事業場を対象に実施した2025年度の監督指導結果を公表した。このうち422事業場(69.9%)で労働基準関係法令の違反が確認され、217事業場(35.9%)では違法な時間外労働が認められた。
違法残業が確認された事業場のうち、時間外・休日労働が月100時間を超える事業場は63カ所、月200時間を超える事業場も2カ所あった。
業種別では製造業46事業場、商業41事業場、運輸交通業37事業場、建設業17事業場で違法な時間外労働が確認された。特に運輸交通業では、監督対象49事業場のうち37事業場で違法残業が認められている。
604事業場のうち422事業場で法令違反 違法残業217事業場
今回の監督指導は、2025年4月から2026年3月までに実施されたもの。月80時間を超える時間外・休日労働が疑われる事業場や、過重労働による過労死等に関する労災請求があった事業場などを対象としている。
監督した604事業場のうち、労働基準関係法令に何らかの違反が認められたのは422事業場。違法な時間外労働は217事業場、賃金不払残業は26事業場、過重労働による健康障害防止措置の未実施は107事業場だった。
|
監督・違反項目 |
事業場数 |
監督対象に占める割合 |
|
監督指導実施 |
604 |
100% |
|
労働基準関係法令違反 |
422 |
69.9% |
|
違法な時間外労働 |
217 |
35.9% |
|
賃金不払残業 |
26 |
4.3% |
|
健康障害防止措置の未実施 |
107 |
17.7% |
※広島労働局の監督指導結果から作成。違反項目には重複があるため、単純合計はできない。
なお、今回は長時間労働が疑われる事業場を選んで監督したものであり、法令違反69.9%という数字は、広島県内の全事業場の違反率を示すものではない。
運輸交通業では49事業場中37事業場で違法残業
業種別の監督結果を見ると、運輸交通業では49事業場を監督し、このうち47事業場で何らかの労働基準関係法令違反を確認。37事業場で違法な時間外労働が認められた。
運輸交通業の監督対象に限った違法残業の割合は75.5%に上る。また、商業では154事業場中41事業場、製造業では133事業場中46事業場、建設業では50事業場中17事業場で違法残業が確認されている。
|
業種 |
監督事業場 |
法令違反 |
違法残業 |
|
商業 |
154 |
101 |
41 |
|
製造業 |
133 |
94 |
46 |
|
保健衛生業 |
73 |
51 |
27 |
|
建設業 |
50 |
29 |
17 |
|
運輸交通業 |
49 |
47 |
37 |
|
接客娯楽業 |
41 |
35 |
22 |
|
その他の事業 |
50 |
26 |
13 |
※主要業種を掲載。全業種を網羅した表ではないため、各業種の合計は監督対象604事業場と一致しない。
監督対象のうち、運輸交通業で違法な時間外労働が確認された割合は比較的高い。ただし、長時間労働が疑われる事業場に対象を絞っているため、業界全体に同じ傾向があると判断することはできない。
月100時間超が63事業場、月200時間超も2事業場
違法な時間外労働があった217事業場について、各事業場で最も長く時間外・休日労働をした労働者の実績を確認したところ、99事業場で月80時間を超える長時間労働が認められた。
このうち63事業場は月100時間を超え、8事業場では月150時間超、2事業場では月200時間を超えていた。
|
時間外・休日労働の実績 |
事業場数 |
|
違法な時間外労働 |
217 |
|
うち月80時間超 |
99 |
|
うち月100時間超 |
63 |
|
うち月150時間超 |
8 |
|
うち月200時間超 |
2 |
※月100時間超、150時間超、200時間超は、それぞれ上位の時間区分に含まれる重複した内数。
また、過重労働による健康障害防止措置が不十分だったとして279事業場に改善を指導したほか、65事業場には労働時間の把握が不適正であるとして改善を求めた。
小売店の店長が月114時間の残業 36協定の限度時間超過
広島労働局は、実際に監督指導を行った事例も公表している。
労働者10人未満の小売業の事業場では、月80時間を超える時間外労働が疑われるとの情報を受け、労働基準監督署が立入調査を実施した。
その結果、店長が1カ月当たり114時間の時間外・休日労働を行っていたことが判明。労使間の36協定で定めた月45時間の限度時間だけでなく、労働基準法に定められた時間外・休日労働の上限も超えていた。
長時間労働となった原因について、労働局は、長時間にわたる営業時間中の対応と、その後の店長業務が重なったことを挙げている。
さらに、定期健康診断で異常が認められた労働者について、医師からの意見聴取が行われていなかったことも確認された。
労働基準監督署は法令違反について是正勧告を行い、時間外・休日労働を月80時間以内に削減するための具体的な対策を求めた。
エリアマネージャーの応援体制や正社員増員で改善
労働局の公表資料によると、指導を受けた小売店では、店長の業務負担を軽減するため、エリアマネージャーによる応援体制を暫定的に構築した。
また、店長業務を営業時間中にも行えるよう正社員を異動させて人員体制を強化し、新たな求人も実施した。
健康診断で有所見となった労働者については、地域産業保健センターを活用して医師の意見を聴取することとした。
今回の公表事例では、営業時間中の人員体制や店長への業務集中が、長時間労働につながった経緯が示されている。
11月は過重労働解消キャンペーン 集中的な監督指導へ
広島労働局と県内の労働基準監督署は、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中、長時間労働の是正に向けた集中的な監督指導を実施する方針。
今後は違法な時間外労働の是正に加え、36協定で定める労働者の健康・福祉確保措置の実施状況についても重点的に確認する。
今回の監督結果では、違法残業だけでなく、賃金不払残業や健康障害防止措置の未実施、労働時間管理の不備も確認されており、企業側には労務管理体制の点検と改善が求められる。
※本記事の統計は2025年度(2025年4月~2026年3月)の監督指導結果。対象は長時間労働が疑われる事業場であり、広島県内の全事業場の違反状況を示すものではない。監督指導事例の企業名は公表されていない。