広島県呉市の老舗住宅メーカー、ドヒハウス株式会社(広島県呉市本町、法人番号:1240001026259)が、2026年11月5日、民事再生法の適用申請準備に入った。負債総額は2026年1月期末時点で約38億6,800万円。
同社は1905年(明治38年)創業の建築工事業者。注文住宅の建築や賃貸マンションの建設、不動産賃貸・仲介などを手がけ、2024年1月期には年商約30億4,400万円を計上していた。
その後も年間27億~28億円台の売上高を確保していたが、賃貸マンション建設や住宅展示場開設などの先行投資に伴う利息負担が収益を圧迫。2026年1月期は売上高約27億6,400万円に対し、経常利益が約100万円にとどまった。中小企業活性化協議会の支援を受けて再建を図ったものの、抜本的な経営改善には至らず、自力再建を断念した。
1905年創業、呉市を拠点に注文住宅・マンション建築を展開
ドヒハウスは1905年創業。120年以上の業歴を持つ建築工事業者で、呉市を拠点として住宅建築や不動産事業を展開してきた。
主力とする注文住宅では、木材の温かみを生かしたデザインや、顧客の生活スタイルに合わせた自由設計を特徴としていた。
自社工場で室内ドアやキッチン、洗面台、収納家具などを製作する体制も整備。建物の設計から内装、造作家具まで一体的に提案できることを強みに、広島県内や山口県岩国市周辺で営業活動を展開していた。
また、戸建て住宅に加えて賃貸マンションやアパートの建築、不動産の賃貸・仲介なども手がけ、住宅関連事業を幅広く展開していた。
2015年には広島市内の住宅展示場に3つ目となるモデルルームを新設するなど、展示場を活用した営業体制の拡充にも取り組んでいた。
大型賃貸マンション工事で年商22.6億円、2024年には30億円超へ
同社は広島市や呉市で賃貸マンションなどの建築工事を受注し、事業規模を拡大していた。
大型の賃貸マンション工事が完成した2019年1月期には、年間売上高約22億6,100万円を計上した。
その後、新型コロナウイルス感染拡大の影響で受注が伸び悩んだ時期もあったが、需要の回復とともに業績は持ち直した。
2024年1月期には年間売上高が約30億4,400万円まで拡大。注文住宅の建築や集合住宅工事を中心に、年間30億円規模の事業を展開する地場住宅メーカーとなっていた。
しかし、売上高の拡大が十分な利益の確保にはつながっていなかった。
年商27.6億円でも経常利益100万円、利益率は約0.04%
同社の経営上の課題は、売上規模に比べて経常利益が極めて小さいことだった。
公開されている企業決算情報によると、2024年1月期の経常利益は約217万円。売上高約30億円に対する経常利益率は約0.07%にとどまっていた。
2025年1月期には売上高約28億6,600万円、経常利益約3,141万円となり、利益水準がいったん改善したものの、2026年1月期には再び低下した。
|
決算期 |
売上高 |
経常利益 |
利益率 |
|
2024年1月期 |
約30.44億円 |
約217万円 |
約0.07% |
|
2025年1月期 |
約28.66億円 |
約3,141万円 |
約1.10% |
|
2026年1月期 |
約27.64億円 |
約100万円 |
約0.04% |
※2024年1月期の売上高は調査会社情報を採用。公開企業データでは30.45億円と記載されている。2024年・2025年1月期の経常利益は公開企業データ、2026年1月期は調査会社情報に基づく。利益率は概算。
2026年1月期は約27億6,400万円の売上高を確保しながら、経常利益はわずか約100万円だった。
経常利益率は約0.04%となり、売上高100万円当たりの経常利益が約36円という水準にとどまった計算になる。
年間30億円前後の売上高を維持していても、利益面では厳しい経営状態が続いていたことが分かる。
賃貸マンション建設やモデルルーム開設の先行投資が負担に
業績の拡大と並行して、賃貸マンション建設や住宅展示場の開設などに積極的な投資を続けていたことが、財務面での負担につながった。
調査会社によると、こうした先行投資に伴う利息負担が重く、売上高を維持していても経常利益を十分に確保できない状態が続いていた。
負債総額は2026年1月期末時点で約38億6,800万円に達し、同期間の年間売上高約27億6,400万円の約1.4倍に相当する規模となっていた。
ただし、負債総額には借入金以外の債務が含まれる可能性があり、金融債務の正確な残高や負債の内訳については確認できていない。
また、2024年1月期の公開企業データでは、総資産約31億5,100万円に対して株主資本は約1億1,100万円となっていた。株主資本の総資産に対する割合は約3.5%で、当時から財務上の余裕が小さい状態だったことがうかがえる。
こうした財務負担のもとで、借入金利息などの負担が収益改善の足かせとなっていた。
2025年9月には福山西展示場を開設、住宅営業も継続
経営環境が厳しさを増す一方、住宅事業では新たな展示場の開設も進めていた。
同社の公式サイトによると、2025年9月20日には広島県福山市に福山西展示場を開設。「grotte house」をコンセプトに、独自の住宅デザインや造作家具を提案するモデルハウスを公開した。
公式サイトには福山西、岩国、東広島、広島北、廿日市などのモデルハウスが紹介されており、広島県内から山口県東部にかけて営業基盤を構築していた。
また、同社は自社工場での家具製作を特徴としており、住宅の設計・建築だけでなく、室内空間全体を提案する事業体制を整えていた。
ただし、2025年に開設した展示場の投資額や資金調達の内訳は確認できておらず、今回の資金繰り悪化への具体的な影響は明らかになっていない。
また、民事再生申請準備入り後の各展示場の営業状況についても、現時点で確認できていない。
中小企業活性化協議会の支援受けるも自力再建を断念
ドヒハウスは経営改善に向け、中小企業活性化協議会の支援を受けていた。
同協議会は、財務上の課題を抱える中小企業に対して、収益力改善や事業再生などを支援する公的な機関である。
同社も支援を受けながら再建を図っていたが、先行投資に伴う利息負担などを解消できず、抜本的な経営改善には至らなかった。
このため自力での再建を断念し、2026年11月5日、民事再生法の適用申請準備に入った。
負債総額は約38億6,800万円で、2026年1月期末時点の数値となっている。
民事再生法は事業の継続や再建を目指すための法的手続きであり、破産とは異なる。現段階では申請準備の段階で、裁判所への正式な申請や再生手続開始決定については確認できていない。
今後の具体的な再生方針やスポンサーの有無、建築中の住宅や賃貸マンション工事の取り扱いなどについても、現時点で詳細は明らかになっていない。
年商30億円規模でも再建へ、住宅会社の資金負担を浮き彫りに
今回の民事再生申請準備で注目されるのは、住宅や賃貸マンションの建築需要を確保しながらも、財務負担によって自力再建が難しくなった点だ。
ドヒハウスは2024年1月期に約30億円の売上高を計上し、その後も年間27億円を超える売上高を確保していた。
しかし、2026年1月期の経常利益は約100万円にとどまり、売上高に見合う収益を確保できていなかった。
住宅や賃貸マンションの建築事業では、工事代金の入金時期や先行する建設資金、完成後の販売・賃貸などの資金計画が経営上の重要な要素となる。
特に大型案件や自社投資を伴う事業では、売上規模が拡大しても借入金利息などの負担によって利益が圧迫される場合がある。
ドヒハウスの場合、調査会社は先行投資に伴う利息負担を経営悪化の要因としている。ただし、個別投資案件ごとの収益性や金融機関別の借入状況については明らかになっていない。
1905年の創業から121年。地元呉市を拠点に住宅建築を続けてきた老舗企業が、年間27億円超の売上高を維持しながら法的再建を目指すことになった。
ドヒハウス株式会社の企業概要
|
企業名 |
ドヒハウス株式会社 |
|
所在地 |
広島県呉市本町 |
|
法人番号 |
1240001026259 |
|
創業 |
1905年(明治38年) |
|
資本金 |
2,000万円 |
|
主な事業 |
注文住宅・賃貸マンション建築、不動産賃貸・仲介など |
|
売上高 |
約27億6,400万円(2026年1月期) |
|
経常利益 |
約100万円(2026年1月期) |
|
法的手続き |
民事再生法適用申請準備(2026年11月5日) |
|
負債総額 |
約38億6,800万円(2026年1月期末時点) |
関連記事・参考資料