アイコン 「敵は建築家にあり」のブログを負う⑲/福岡の設計デザイン会社の住宅瑕疵問題

北九州市の施主が、建築ジャーナル社の本に掲載されていた福岡市の有名な設計デザイン事務所の建築家(一級建築士事務所代表)に、デザインから施工会社手配まで住宅建築のすべてを依頼。しかし、住宅が完成して施主が住んだものの、補修工事が2年以上発生し続け、しまいには床下浸水や準純防火地で防火鋼板が使用されていない建築基準法違反内容なども発覚。そのため施主が訴訟を起こしたものである。建築について全くの素人の施主の奥さんが「敵は建築家にあり」というブログで、ブログ閲覧者からアドバイスを得ながら裁判を闘っているブログを追った。 クリック⇒裁判前の20072月のブログ 

 
2010年1月23日のブログより
被告設計デザイン事務所(株)ら準備書面(4)に対する反論等
第1 「本件敷地の特殊性について」
1 被告設計デザイン事務所(株)らは、「原告は、本件建物全体を鉄筋コンクリート造(RC造)で建築することを望んでいた。しかし、本件建物の敷地の地下に新幹線のトンネルが通っていることが判明したため、JR西日本と協議した結果、トンネル直上付近については、木造(2×4)で設計することになった。被告設計デザイン事務所とJR西日本との協議内容を原告が知らない筈はない。」などと、 (1)あたかも、本件建物が鉄筋コンクリート造・鉄骨造(S造)・木造の混合構造となったのは、敷地の地下に新幹線トンネルが通っていたためであり、やむを得なかったかのように述べ、(2)又、原告が被告設計デザイン事務所とJR西日本との協議内容の詳細を知った上で、鉄筋コンクリート造以外に木造部分を採用することを承諾したかの如く主張する。恐らく、被告設計デザイン事務所らは、原告が本件建物全体を鉄筋コンクリート造で建築することを望んでいたにも拘わらず、被告自称建築家S氏の提案により鉄筋コンクリート造・S造・木造の混合構造になってしまったことは、新幹線トンネルの存在という、いわば不可抗力ともいうべき事柄によるものであり、且つ、不可抗力の存在を原告も知った上で承諾したのであるから 被告設計デザイン事務所らには責任がないといいたいのであろう。被告設計デザイン事務所らは、自分達の責任を「新幹線トンネルの存在」や「原告の認識・承諾」に転嫁しようとしているように見受けられる。
2 しかし、被告設計デザイン事務所らの上記主張は、本件建物が混合構造となった事情を(不正確に)述べているに過ぎず、原告が主張する諸々の設計・施工・監理の瑕疵についての免罪符となるものではない。原告の瑕疵の主張に対する弁解や反論には全くなっていないのである。仮に、新幹線トンネルの存在により建物全体を鉄筋コンクリート造とすることが不可能であり、一部を木造とする必要があったとしても、又、一部を木造とすることを原告が承諾していたとしても、そのことから瑕疵が不可避的に生じるということにはならず、被告設計デザイン事務所らの論法には著しい論理の飛躍があるといわざるを得ない。このように、「新幹線トンネルの存在」に関する被告の主張は、全く無意味なものでしかないが、上記主張の誤りにつき、以下、念のために述べることとする。
3 本件建物の敷地は、北九州市○○区××町、○番×、○番×、○番×、○番×、の4筆から成るが、このうち○番×と○番×の地下に新幹線トンネルが通っている(甲第47号証~甲第51号証)。
そのため、被告設計デザイン事務所らは、○番×と(トンネルが通っていない)○番×に跨って本件建物の木造部分を設計したものと思われる。
しかし、本件提訴後、最近になって、原告が調査した結果、本件建物は、原告が希望したとおりに全体を鉄筋コンクリート造で設計しても何ら問題はなく、鉄筋コンクリート造の一体の建物として建築可能であったことが判明した。
原告がJR西日本に問い合わせたところ、新幹線トンネルは、地下約18mを通っており、トンネル直上5mの深さにおいて2t/d以上の荷重が掛からなければ、鉄筋コンクリート造建物を建築しても問題はないとのことであった(甲第52号証)。
 本件建物全体を鉄筋コンクリート造とすることが可能であったことは、本件建物敷地の登記簿乙区欄に記載された地上権設定特約の内容からも明らかである(甲第50号証、甲第51号証)。杭に荷重が集中する杭基礎を採用した場合には、杭基礎をトンネル直上から外すなり、杭荷重が分散するような施工方法を採用する必要があるが、本件建物は杭基礎ではないから、そのような配慮も不要である。
実際に、本件建物の近隣を見渡せば、平成17年9月に道路を挟んだ北東側隣に、○番×土地と(新幹線トンネルが通っている)○番×土地に跨って鉄筋コンクリート造3階建の賃貸アパートが建築されているのである(甲第47号証、甲第48号証、甲第53号証、甲第54号証)。
被告設計デザイン事務所らは、新幹線トンネル上の敷地部分に鉄筋コンクリート造建物が建築できたにも拘わらず、十分な調査・確認を怠り、その結果、新幹線トンネル上の敷地部分には木造建物部分を建築しなければならないと誤解したものと考えられる(被告設計デザイン事務所らによる調査・確認懈怠に関して更なる請求の拡張をすることまでは現段階では考えていないが、慰謝料の算定において考慮されるべきである)。
4 原告は、被告自称建築家S氏から「トンネル直上付近は鉄筋コンクリート造で建築することができない。」と断定的にいわれ、トンネル直上付近につき2×4で建築することを提案されたため、被告自称建築家S氏を信頼して上記提案を受け入れたに過ぎず、被告自称建築家S氏やその他被告設計デザイン事務所の人間からJR西日本との協議内容についての報告や説明は一切受けていない。
又、原告は、建物の一部を2×4にするとの提案を受けた際、鉄筋コンクリート部分と木造部分との間に間隔を開けて両部分を鉄骨造の渡り廊下で繋ぐとの説明は一切受けていない。鉄骨造の渡り廊下で繋ぐことを知ったのは、その後のことであり、何故、渡り廊下で繋ぐのかについての説明は一切なかった。そして、渡り廊下の鉄骨支柱を露出させずに木造部分に埋め込む設計を提案したのは被告自称建築家S氏であり、原告がそのような設計を言い出したのではない。原告は被告自称建築家S氏の提案が、重大な設計上の瑕疵に該当することなど露ほども知らずに被告自称建築家S氏の提案を受け入れたに過ぎないのである。
<ブログ閲覧者等のコメント>
<Iさん>
「流石、弁護士の仕事」よくわかる気がします。いっぱしの建築技術屋にはこのような反論は・・・・・何か、スッとしたような気がします。これに対する反論もあるのでしょうけど事の成り行きにとても興味があります。
(元々の建築物の不詳とは別の世界での事ですが)
<奥さん>
そんなことないですよ。『何故、渡り廊下で繋ぐのかについての説明は一切なかった。』  
という一節は、建築士の先生方のお陰で導き出された名文だと思っています。建築士の先生方が教えてくださったように、①RC棟から連続して渡り廊下を持ち出す。②渡り廊下から木造部分まで、鉄骨造にする方法を取れば、EXP・Jはひとつで済んで、2つの混構造でつくれたのに。でもこのボリュームと形に拘るのが、そもそもの敗因かな。
<Muさん>
言いたい事は他にも山ほどありますが、今回の準備書面、裁判官に争点のみが届く良い文章なのだろうと思いました。たしかに「いっぱしの建築技術屋にはこのような反論は・・・・・」ですね。弁護士さん、さすがです。
 

[ 2010年1月28日 ]
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