アイコン 本性を現してきた鴻海 シャープのIGZO最新液晶技術を横取りに 

経営再建中のシャープに対し、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、シャープの収益源である中小型液晶事業を分社化して両社の合弁事業にするよう求めている。
シャープは、鴻海から9.9%の出資を受け入れる方向で交渉しているが、鴻海がその条件として示している中小型液晶事業の切り離しには難色を示している。
シャープ再建のカギを握る鴻海との提携交渉の行方は、一段と不透明になってきている。

鴻海が分社化を求めたシャープの中小型液晶事業は、同社の再建に向けて“虎の子”と言える収益の柱。米アップルの「iPad(アイパッド)」などタブレット型端末向けの供給拡大を軸にした再建計画では、中小型液晶を製造する三重県の亀山工場などをフル稼働させ、2014年3月期の営業利益を1212億円の黒字に転換させることを盛り込んでいる。

鴻海は、シャープの最新液晶技術だけを、手中に納めようとの魂胆であることが、徐々に明らかとなってきている。シャープにしても多くの国内外の工場を鴻海に売却や共同生産化して、当危機を乗り越えようとしている。

<IGZO>
シャープと半導体エネルギー研究所(SEL)が共同で開発。酸化物半導体の新たな結晶構造を採用することにより、IGZOの物性を安定化、さらなる高精細化、プロセスの簡略化、応用展開の広がりが可能になる。
そして、「IGZO技術は、シャープのモバイル液晶技術のコアテクノロジー。モバイル液晶の成長エンジンであり、IGZOが低迷するシャープの業績回復の切り札になると期待されている虎の子。これを取ったらシャープは存在価値がなくなる。

当新技術は、IGZOを構成するIn(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)に結晶化構造を持たせるというもの。この結晶化構造は半導体エネルギー研究所が2009年に発見したもので、シャープと半導体エネルギー研究所は、この結晶体を「CAAC」(C-Axis Aligned Crystal)と名付けている。従来のIGZOは、アモルファス(非晶質)であったが、CAACのIGZO結晶は、ある面から見ると六角形の構造となり、それを横から見ると層のようになっている。この状態だと緻密で欠落のない薄膜となり、量産においても効率性が高まる。
 この新技術により、500ppi以上のさらなる高精細化が可能になるほか、製造プロセスが簡略化でき、さらに有機ELディスプレーなどへの応用も可能となるという優れものである。

<鴻海>
鴻海は、世界最大のEMS(電子機器受託生産)企業グループであり、アップル製品もほとんどを製造している。製造基地は中国にあり、雇用者数は92万人(2010年)とされている。

アップル製品の液晶ディスプレイは、その殆どがサムスン製であったが、両社は大掛かりな訴訟を世界中で戦っており、アップルはiPhone5においては、サムスンからの調達をiPhone4より液晶・半導体など総じて3割以下に減らしている。(減額分は、LGなどほかの韓国勢が主に取っている)
鴻海は、液晶ディスプレイの独自高精細製品は有しておらず、鴻海は電子機器受託生産屋といっても単なる中国の安い労働力を利用したアッセンブリー(組立)の巨大工場を経営しているに過ぎない。アップルが世界から半導体や液晶などを購入したものを鴻海の関係工場に集め、組み立てているもの。

そうしたことから、シャープのIGZO液晶を手中に納めることで、アップル製品への供給において、鴻海は自社利益に貢献できるものとなる。鴻海にしてみれば、IGZO技術は喉から手が出るほど欲しいものである。

なお、鴻海の中国工場では、劣悪な労働や賃金が問題となり、発注元のアップルが批判の的になっており、今では少しは改善されてきているが、寮は以前のままタコ部屋となっている。寮内部の環境は劣悪との評判である(アップルも鴻海もコストは上げたくない)。

さらに、秋の大型連休の国慶節(建国記念日)にも、鴻海グループの工場は動いており、連休なしの工場に対して、一部不満分子(約4000人)がストを敢行、生産がストップしたとの情報も入ってきている。(地方出身者はこうした時期に里帰りするのが慣例)

中国人民、特に農民工などは、仕事に就くことがこれまで一番の目標であったが、今では給与問題、権利問題へと労働者の意識もすっかり変わってきている。鴻海とアップルは、中国での舵取りを誤れば、大きな問題に直面する恐れもある。

[ 2012年10月 9日 ]
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