アイコン 一方的なインフレ待望論は危険を伴う

今や経済や金融は完全にグローバル化している。日本はGDP比2倍以上の1,000兆円の借金地獄にあり、デ フレ脱却や景気刺激策として公共投資を行おうとすれば、その財源が問題となる。安倍氏からは景気回復の公共投資のため建設国債(言葉だけ変えた国債)を (市場から)日銀に購入させ、資金を捻出するといい、そうしてこなかった日銀に対して今の日銀の罪悪論まで飛び出している。

しかし、景気がデフレでは、経済が萎縮するばかりであり、借金である国債の金利も考慮に入れて、節度あるインフレを政策指向する必要はある。
景気が良くなれば必ずインフレになり、税収も多く入るようになる。しかし、今や国債の金利が国家予算の10%以上に及んでいる。インフレによる金利の上昇は、当然国債の金利も上がり、国債を発行し続けることでしか生きていけない日本の財政には、大きな負担となる。
インフレで銀行金利が上がるなか、国債の金利を上げなければ誰も購入する者はいなくなり上げるしかない。仮に国債金利が1%上がったら10兆円の負担増となる。消費税を上げたところで12兆円、内需だけで税収が10兆円も増加するなど、相当な好景気にならない限り無理である。
今のデフレ不景気は、金を使わない金持ちの高齢化、少子化スパイラル、労働分配率の悪化、工場の海外移転、賃金の低いサービス産業就業人口の増加、国際競争力を持たなくなったこれまで稼ぎ頭の企業の淘汰、欧米諸国経済の悪化など数多くの要素が複雑に絡み合って生じている。
経済は、総じて内需と外需から成立しており、内需を刺激しても安価な中国製が大量に入り続ける限り限界がある。TPP締結では尚更である。外需は経済規模が世界1・2位と大きい欧米の経済が回復しない限り良くはならない。

不動産ミニバブル時代、世界の好景気に企業は大きな利益を得た。国内も再び不動産がバブル化した。しかし、それは内部留保や借入返済、株配当に回され、労働者へは分配されるどころか、団塊の世代の穴埋めに派遣社員を増加させ、労働コストを下げ続けてきた結果でもあった。そうした労働コストを下げた利益が、世の中に循環しなくなっていたのである。
そうした中で行われてきた税金・年金・健康保険料・市町村民税が更に家計の可処分所得を悪化させ続けてきた。結果、金がまわらないシステムを作った金融自由化・新自由主義経済の弊害を総括せずして、安直に内需刺激策を取ったところで、現実、直接投資分の経済効果はあっても波及効果は殆ど得られないものと思われる。
国内の金融機関には金があり余っている。景気が悪く、借り手がいない状態だからだ。いくら、日銀が札をばら撒いても、景気が悪く借り手がいない状態では、資金は世の中を回らず、銀行に蓄積されているだけである。

経済波及効果の高い住宅の消費税が来年から上がる。来年は駆け込み需要が生じ、第2四半期の9月まで景気は底堅い動きになることが予想される。しかし、消費税が上った途端、パタンとお仕舞いになったのが前回の増税であった。
安倍政権は、セメント会社の麻生太郎氏に煽られ(麻生氏の故郷は筑豊、産炭地振興資金がなくなって以降、過疎化が激しくなっている)、公共投資を毎年20兆円も使用して景気刺激策を取るというが、経済波及効果の低い公共投資をいくらやっても空振り三振の山を築くことになる。残るのは借金の山が富士山から息もできないエベレストになってしまう。

携帯電話は、スマホ出現まで、国内需要の殆どを日本製が占めていた。しかし、スマホ出現で今や米国のアップル製と韓国のサムスン製が日本の携帯電話市場を凌駕している。
太陽光発電も以前は世界の生産量の上位を独占していた日本メーカーであったが、今や安価を武器にした中国勢に取って代わられ、FIT政策により大量に日本に流入してきている。日本のお家芸であった日の丸半導体市場も今や無残である。
こうしたグローバル化した世界にあり、世界で競争力を持たなくなった分野や企業は、世界の市場から淘汰される運命となっている。

そうしたことからも、日本が今後何により生活していくのかを描き、政策的に産業を誘導し、なけなしの国家資金を投資していく必要があるのではなかろうか。
公共投資で金をばら撒けば、景気が良くなるなどの幻想は愚の骨頂であり、インフレの対価として国債金利が上がり、税収増など限られ、その借金増と金利負担だけで日本は自ら首をくくることになる。また、国内で政治が信用できなくなり、国債が売れなくなれば、外資に購入してもらうことになり、瞬く間に危険水域の7%台まで駆け上がることになろう。
そうした政治への不信感が増税・デフレ不況で増しており、やりたい放題の公共投資の政治に対しても、いつ何時国民が反旗を翻すかもわからない時代に段々突入してきていることを政権担当者も自覚すべきだろう。
政治が国民の信頼を勝ち取るためには、まず、国会議員の報酬や政党助成金を半額にすることが先決だ。
 

[ 2012年12月11日 ]
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