アイコン 税金で再建された日本航空の定款変更問題 主要株主掲載

国民の税金を投入して再建された日本航空は昨年9月19日再上場、いつのまにか利益からして高配当を予想した外国人の持株率が40%に至っている。

<国会では・・・外国人へ130億円も配当>
国会では2月21日、西田昌二参議が「日 航が配当できるのは国民負担があったためだ。利益の4割を海外に出すのは売国的な行為だ」と追及。麻生財務相は「税金で助かった会社の配当が、海外に行く のは腑に落ちにくい」と回答した。現在約4割が外国人等の株主で、このままだと130億円の配当金を外国人等へ支払うことになる。
また、今後、会社更生法申請で莫大な欠損金を計上していることから、2019年3月期までに計4,000億円規模の法人税が免除(過去の赤字による免除)される可能性も高い。
 
自公は、「日本航空が、(民主党=前原+稲盛ラインによる債権カット+税金による支援など)手厚い公的支援で再建され体力を強めたことは、全日空など他社との公平な競争をゆがめる」と反発してきた経緯がある。
 
<日本航空の再上場までの経緯>
日本航空は2010年1月19日、負債額2兆3,221億円を抱え、国主導で会社更生法の適用を申請、借金が大幅カットされた(債権銀行による5,210億円の債権カット)上、企業再生支援機構(=国)から約3500億円の出資を受けた。
こうした債権カットや国の支援をはじめ、現役社員の大幅首切り・社員の首切り含む関係会社の整理統合・関係会社を含む資産売却・OB社員の年金減額など強力なリストラを行い身軽になった。
日航は1年後の11年3月には更生手続きを終え、12年3月期連結決算では2,000億円を超える過去最高益を計上した。同年6月には東証に再上場を申請し、同9月21日には1部上場を果たした。
 
日本航空は、航空法の盲点を突き、外人持株比率が規定以上にいくら増加しても、議決権をなくした株だったら、その配当は問題ないとしている。航空法によると、株主名簿(本決算と中間決算)における議決権のある外国人等の割合が3分の1を超えてはならないと定めている。
日本航空は、決算期の3月末の株主に対して、外国人の持株数が3分の1を超えたところで、議決権を放棄させることで、配当については問題ないとの見解を発表したのである。
極端なことをいえば、日本航空株の外国人等の持株比率が99.9%になったとしても、配当できるというものである。
 
<日本航空の配当についての見解と定款変更問題>
 同社は、航空法第120条2項に基づき、定款第12条で、
1)「日本国籍を有しない人」
2)「外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの」
3)「外国の法令に基づいて設立された法人その他の団体」
のいずれかの者(以下、「外国人等」)からその氏名及び住所を株主名簿に記載又は記録することの請求を受けた場合において、その請求に応ずることにより外国人等の有する議決権の総数が当社の議決権の3分の1以上を占めることとなるときは、その氏名及び住所を株主名簿に記載又は記録することを拒むものとすると定めている(以下、外国人等の保有する株式のうち、定款第12条の定めにより、株主名簿への記録を拒んだ株式を「外国人持株調整株式」という)。
 
 配当に関しては、定款第45条において、剰余金の配当は、毎年3月31日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株主質権者に対して行う。としている。
 
 ところが、日本航空は航空法において、外国人等による議決権行使について制約するものの、剰余金配当という経済的な便益まで制約する趣旨ではなく、外国人持株調整株式に対して、配当を行うことについては、支障がないと考えている(株を売買させて何ボの証券会社も同じ考え方である)とし、明確に、3分の1を超過した外国人等の株主に対しては、配当を行うとしている。
 さらに、外国人持株調整株式に対して剰余金の配当ができるように、定款変更案を次回株主総会(平成25年6月開催予定)に付議するべく具体的な準備を進めていく方針を確認した。としている。また、当定款変更が承認されれば、平成25年3月31日を基準日より配当は可能になると宣言している。
 
 以上を検証すれば判然するが、世界が低金利時代に4%の配当において、日航が3分の1を超えた外国人持株調整株式に対して配当を行うならば、上場しているがゆえに株式の殆どの株を外国人等が購入することも可能である。しかし、同社は3分の2の議決権に対する株式(日本人等所有)を明確にしていない。グーグルのオーナー持株のような1株が10株とか100株の議決権を持つなどの規定も存在しない。
ならば、例え、99.9%の持株を外国人等が所有した場合、残りを日本人等が0.1%所有した場合、その0.1%に対して3分の2の議決権を与えればよいことになる。一方、99.9%の外国人等の株式に対して3分の1未満の議決権を与えることになる。
 それでは、日本人等の持株比率0.1%で99.9%の外国人等の持株比率を支配することはもはや非現実的だ(買収に対する企業の防衛措置発動も一時的な効果はあるものの持株比率を規制しなければ実質的に、法の目的を無視するものである)。
 それほど、今回の日航の外国人持株調整株式に対する配当の定款変更は、乱暴な政策の何ものでもないと言える。
 それも、国により、債権銀行に対して債権をカットさせ、3,500億円も支援して再建させた日本航空がである。
 債権カットも行わず更生させたならば、その額は銀行の利益に反映され、法人所得税の対象となり税金として国に納められるものである。
 
 そうした意味では、国の支援金(=税金)投入による再建、債務カットによる支援(=税収入減)により、再建された日本航空であり、日本航空が外国人持株調整株式に対しての配当を強行するならば、再建させた意味を持たないものとなってしまう。また、安全保障政策、産業政策、経済政策などの観点から、一定の事業を営む会社に対して、法令上、外国人等による議決権の取得・保有などが一定の範囲に制限されていることの意味を、今回の配当を是認するならば、外国人等の持株規制法の盲点を付いたものとなる。
 
<配当予想と外人>
 今期の配当予想は180円と発表(2月4日)している。外人持株数約72百万株、1株4,395円(2月22日現在)、配当利率は4.0%となる。
 既に当該の期末配当金は、保証されたようなものであり、約130億円の配当金が外国人等の株主に配当されることになる。
 国民においては、銀行預金金利が、低金利の1%未満の時代に、税金で再建された日航が4.0%も配当する。
発行株式総数181,352,000株、時価総額:7,970億42百万円(2月22日)
 
国民が納得いかないのも山々だが、航空法では議決権さえ放棄すれば、何ボでも外人は持株数を増加させることは可能となっている。外人ハゲタカが、配当確定後、円高にシフトさせたら、為替差益も確保され、ニコニコである。
 
 やはり、日本航空の上場は、暫く待たせ、一定のペナルティ(国への還元)を支払わせるべきだったのかもしれない。上場すれば、法律しか適用されず、政治といえど変な圧力掛けたら、世界の投資家から日本市場が袋タタキにあうリスクを伴う。
 
(ただTPPを締結すれば、安全保障上は別にしても、国内法による産業政策、経済政策上の規制は、米国仕様と異なれば、撤廃せざるをえなくなる。なぜなら、国家間の条約は、国内法より優先するからだ。
経  過
発行済株式総数
外人所有株数
比率
2012/9/19(再上場日)
181,352,000
0
0%
2012/9/20
181,352,000
44,365,700
24.46%
2012/9/28
181,352,000
71,998,320
39.70%
2012/10/31
181,352,000
76,003,914
41.90%
2012/11/1
181,352,000
76,346,320
42.09%
2012/11/30
181,352,000
64,087,006
35.33%
2012/12/28
181,352,000
66,798,692
36.83%
2013/1/31
181,352,000
66,765,765
36.81%
2013/2/20
181,352,000
71,837,234
39.61%
2013/2/21
181,352,000
72,188,364
39.80%
2013/2/22
181,352,000
72,071,364
39.74%
 
日本航空の株主構成  平成24年9月30日現在
氏名又は名称
所有株式数/株
割合
MORGAN STANLEY & CO.LLC
12,842,200
7.08
MORGAN STANLEY & CO.INTERNATIONAL PLC
4,373,800
2.41
GOLDMAN,SACHS & CO.REG
4,342,200
2.39
京セラ株式会社 
3,819,200
2.10
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)
3,338,900
1.84
DEUTSCHE BANK AG LONDON-PB NON-TREATY CLIENTS 613
3,141,100
1.73
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD ACISG(FE-AC)
2,872,000
1.58
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)
2,806,300
1.54
株式会社大和証券グループ本社
2,500,000
1.37
モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社
2,180,600
1.20
42,216,300
23.27
米モルガンが9月30日時点で、既に10%以上の持株を有している。
 
日本航空の連結決算推移 破綻前
連結/百万円
平成17年3月期
平成18年3月期
平成19年3月期
平成20年3月期
平成21年3月期
事業収益(売上高)
2,129,876
2,199,385
2,301,915
2,230,416
1,951,158
粗利益
 
 
416,703
453,436
263,277
 原価率
 
 
81.9%
79.7%
86.5%
販管費
 
 
393,786
363,423
314,161
 販管費率
 
 
17.1%
16.3%
16.1%
営業利益
 
 
22,917
90,013
-50,884
経常利益
69,805
-41,608
20,576
69,817
-82,177
当期純利益
30,096
-47,243
-16,267
16,921
-63,194
純資産額
194,746
148,066
331,873
471,070
196,771
総資産額
2,162,654
2,161,240
2,091,233
2,122,784
1,750,679
自己資本率(%)
9.0
6.9
14.9
21.4
10.0
有利子負債
 
 
1,021,545
915,064
801,529
従業員数(名)
53,962
53,010
51,497
49,200
47,526
 
日本航空の連結決算推移 再上場
決算年月
平成20年3月期
平成21年3月期
 
平成22年12月~23年3月期
平成24年3月期
平成25年3月期第3四半期
事業収益(売上高)
2,197,416
1,949,187
383,021
1,204,813
942,041
粗利益
 
 
 
94,074
356,086
277,642
 原価率
 
 
 
75.4%
70.4%
70.5%
販管費
 
 
 
52,859
151,164
119,468
 販管費率
 
 
 
13.8%
12.5%
12.7%
営業利益
 
 
 
41,215
204,922
158,174
経常利益
62,802
-85,687
42,041
197,688
154,243
当期純利益
12,310
-65,698
621,073
186,616
140,636
純資産額
213,274
145,619
218,234
413,861
547,376
総資産額
1,984,526
1,785,910
1,206,517
1,087,627
1,176,841
自己資本率(%)
9.9
6.9
16.5
35.7
44.8
有利子負債
915,064
801,529
 
291,799
57,270
52,352
従業員数(名)
48,177
47,170
31,263
30,875
 
・平成20年3月期と21年期は、会社更生法の間に修正がはかられている。
・有利子負債が平成19年3月期より21年3月期は2,200億円減っている。サブプライムロー
ン問題プライムローン問題、リーマン・ショックにより売上高が減少しており、2,200億円の有利子負債の減少に資金繰りが耐えられなくなったものである。会社更生法による再建の必要性は限られ、ADRによる再建も可能であった。
 
<債務カットは政府系銀行主導に行われた>
平成20年3月末現在のJALグループ借入金 /百万円
日本政策投資銀行(政府系)
283,932
みずほ銀行
91,821
三菱東京UFJ銀行
90,837
三井住友銀行
39,163
国際協力銀行(政府系)
32,962
その他
246,120
合計残高
784,835
 
<出資者も大きな犠牲>
上場により日本政策投資銀行の出資金3,500億円分を市場に放出させ、出資金を返したことにした。
株主及び社債の出資金
 
平成20年3月期
 
平成24年3月期
25/3期第3四半期
資本金
251,000
 
181,352
181,352
資本剰余金
155,836
 
189,901
183,043
406,836
 
371,253
364,395
 
上も下も紙切れに
 
新たな出資
 
社債
102,229
 
0
0
合計
509,065
 
 
 
 
日本航空は、債務カット(5,320億円)と資本金(4,068億円)を紙切れにしただけで9,388億円も再建資金に利用され、更に政府の金融機関である日本政策投資銀行が3,500億円を出資金、会社更生法の更正資金として活用された。また、退職年金基金の減額も負債を大きく減らした。
1、債務カット   約5,320億円
2、資本金減資   約4,068億円
3、社債の紙切れ化 約1,022億円
4、年金基金減少  約1,000億円
5、一般債権カット
6、16,000人の首切り
7、不採算路線の運航停止
8、年金支払の減少
9、国(日本政策投資銀行)により3,500億円の出資支援
日本航空は、会社更生法を申請する前には、有利子負債が8,015億円あったものの、今では523億円まで減少している。
当該の資金が、16,000人の首切りに利用され、田舎で飛ばしていた子会社による飛行機の運航を不採算というだけで停止、これら運航子会社群の整理統合に利用された。
 
日本航空は、出資者の債権も紙切れにし、また借入金や年金基金を大幅カットすることで負債を大きく減らす一方、それまで資産計上されているものの、利益を生まない資産を膨大にカットした。今では総資産が破綻前に比べ6,000億円減少している。
 
採算面は、人員の大量リストラ・不採算路線の廃止・退職年金支払減額・支払金利の僅少化などにより大幅に改善させ、今では好財務内容の高収益企業に変身している。
そもそも、こうした支援や犠牲を可能にさせた9,500億円の債務超過事態が、その根拠に疑念を持たざるをえない。
 
そうした日本人の日本の税金を犠牲にした企業である日本航空が、今や再上場して、利益が出たからといって外国人等に対して、航空法を捻じ曲げ、定款まで変更して130億円も配当金を支払うのは大問題ではないのかと西田参議がカンカンになって指摘しているのである。
[ 2013年2月25日 ]
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