アイコン 商業用不動産取引 75%増3.5兆円へ アベノミクスが火付ける/ブルームバーグほか

ブルームバーグ11日、デフレ脱却を目指すアベノミクス効果で商業用の不動産取引が急増し、2008年のリーマンショック以降で最も活況となっていると報じている。
賃料収入や物件の値上がりを見込んで、投資家の取得意欲が高まっているのに加え、景気回復期待で企業が事業用地の確保に動き出しているためだ。

総合不動産サービスの米ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)によると、1~5月の商業用不動産取引額は約1.5兆円に達し、年間では最大で前年比75%増の3.5兆円と予想している。これは08年以来で最大となる。
不動産取引はリーマンショック以降低迷していたが、「アベノミクスが火を付けた」と見ている。

安倍政権が、デフレ脱却に向け日銀に大胆な金融緩和を迫る中、緩和マネーが不動産に向かうとの思惑が浮上。不動産を投資対象とする証券化商品のJ-REITに人気が集まった。日銀が緩和策の一環として、J-REITの直接購入を拡大したこともあり、東証REIT指数 は4月、08年1月以来の高値を付けた。

これを受けJ-REITの公募増資と新規公開が相次ぎ、1~5月で計3,893億円(不動産証券化協会調べ)と昨年の8割を突破。投資対象の資産取得額は、1兆円超と昨年の約7,900億円を既に上回った。今年は増資・新規公開(約9,000億円)、資産取得額(2.5兆円)とも過去最高を更新すると予想される。

J-REIT最大手の日本ビルファンド投資法人の運用会社の日本ビルファンドマネジメントは、今年に入り、5月末までにソニーの自社ビルなど8物件を約1,570億円で取得した。同社は、不動産投資市場の動向について、需要はかなり旺盛なので、需給バランス的には需要のほうが強めになっていると評している。

<投資収益の改善>
JLLの赤城氏は、世界的な金融緩和でマネーが国境を超えて動き回る中、景気低迷に沈んでいた「東京が光り始めた」として、海外からも資金が集まり始めていると指摘する。
好立地の物件では賃料などの収益が改善し始めており、JLLの調べでは、第1四半期(1-3月)の東京のAグレード(都市中心部にあり、面積・高さなどが一定水準を満たす物件)平均賃料は前期比0.7%高。4四半期連続で上昇した。
また米不動産調査会社のリアル・キャピタル・アナリティクス(RCA)によると、都心オフィスビルの投資利回りを示すキャップレートは昨年10月の5.5%をピークに低下が続き、5月は5.2%。これは賃料収入を物件価格で割った数値で、低いほど物件が値上がりしていることを示す。
ムーディーズは7月4日、不動産取引価格の上昇傾向や新規稼働ビルの賃料上昇などを理由に、日本の不動産業界の見通しを「ネガティブ」から「安定的」に変更した。

<企業の不動産売却>
不動産取引の急増は企業が不動産を放出し、売り物が増えているという側面もある。東京商工リサーチの調査によると、12年度に国内不動産を売却した東証1・2部の上場企業は60社で、8年ぶりに増加した。このうち52社が公表した売却額の総額は3,058億円。
その背景には「不動産価格が高くなり始めたので、今までよりは良い値段で売れるという見方があるのだろう」。また、コア事業への回帰や景気回復期待から、「不動産に投資した資金を回収して別の事業分野に配分する」動きもみられるという。
業績不振の目立つ電機業界では、ソニーが2月に大崎のビル(1,111億円)を、パナソニックが3月に東京汐留ビル(約500億円)をそれぞれ売却した。
双日の子会社は5月、大型ショッピングセンター「モラージュ菖蒲」をシンガポールのクリソス・リテール・トラスト系の不動産ファンドに205億円で売却した。
個人保有の株式や不動産の資産価値が増えると高額商品を中心に消費が刺激されるため、商業施設の需要も高まると見られている。

<事業用地確保>
6月の日銀の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業の景況感は製造業、非製造業とも2期連続で改善。景気回復期待を背景に企業は事業用地の確保に動き出し、売り手だけではなく、買い手の側にも回っている。
パルコ は福岡市での事業拡大に向け、3月に265億円で土地と建物を取得。コナミは6月、ホテル西洋銀座が入っていた銀座テアトルビルを東京テアトルから取得した。商品開発に消費者の声を吸い上げるため、イベントスペースなどとして活用する予定だという。
デフレから脱却してインフレ局面になった場合、「借入額は時間の経過とともに実質的に目減りする」とし、企業にとっては「資金を借り入れて不動産で活用する動機づけになる」と指摘される。アベノミクス効果が浸透すれば、不動産投資は一段と活発化すると見られている。

 以上、ジョーンズ・ラング・ラサールの報告書に基づき、ブルームバーグが報じている。

 三鬼商事の5月の調査でも、東京都心のビジネス区(千代田、中央、港、渋谷、新宿区)のオフィス市場は、新築ものオフィスビルの賃料が昨年より大きく跳ね上がり、15.20%増の26,272円/坪となっている。
東京都心のビジネス地区は、元々低い空き室率が、さらに低下し8.33%(昨年5月9.40%)と需給面で逼迫してきている。特に渋谷区は人気化しており、昨年5月の9.02%から5.23%に急低下している。
 ただ、新築もの以外のオフィス賃料は、まだ下落が若干ながら続いているのも現状だ。それも需給バランスから見て、今後値上がりに転じてくるものと見られる。

[ 2013年7月11日 ]
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