アイコン バクテリア素材電極開発 プラチナの1.8倍 九州大学小江誠司教授ら快挙か

プラチナに比し、質量活性で637倍、電流密度で1.8倍、電力密度で1.8倍の能力
九州大学の小江誠司教授の研究グループは、名古屋大学と共同で、プラチナ以上の効率で発電できる電極を世界で初めて開発したと発表した。
燃料電池の電極として使われる希少金属のプラチナの代わりに微生物が作る物質を使ってより効率的な電極を世界で初めて開発したと発表した。プラチナに頼らない新しい燃料電池につながる可能性があると注目される。
燃料電池では、水素から電子を取り出して酸素と反応させるために希少金属のプラチナが電極に使われているが、価格が高く資源量が限られるため、これに代わる素材の研究が各国で行われている。 

新しい電極は、大分県で採取したバクテリアが作り出す水素を分解する酵素の一種を炭素繊維の表面に塗ったもの。
これを試験的に燃料電池に使ったところ、プラチナの電極の1.8倍の電力を発電できたという。また、研究グループでは、電極の製作費用はプラチナの半分以下で、経済的にも優れているという。
小江教授は「少なくとも半日は、白金(プラチナ)を上回る発電力を示すことを確認している」と話している。
これについて、再生可能エネルギーに詳しい大阪大学の福住俊一特別教授は「実用化に向けて耐久性などの課題はあるが、プラチナの代替物への突破口になる発見で、世界が注目する発見といえる」と評価している。

<リリース全文>図省略 プラチナ=白金
燃料電池の白金電極を超える水素酵素「S–77」電極の開発に成功
(白金の637倍の活性)
概要
九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)/大学院工学研究院の小江誠司教授らの研究グループは、名古屋大学の研究グループとの共同研究により、燃料電池のアノードとして一般に使用されている白金触媒の能力をはるかに超える水素酵素(ヒドロゲナーゼS–77電極の開発に成功しました。ヒドロゲナーゼは鉄とニッケルを活性中心として持つ金属酵素で、白金と同様に水素から電子を取り出し、白金に優る能力を持つと期待されていました。しかし、酸素に対する不安定さにより燃料電池への応用にはこれまで成功していませんでした。研究グループは、酸素に安定なヒドロゲナーゼS–77を阿蘇山で発見し、燃料電池のアノード触媒として驚異の性能を示すことを明らかにしました。
研究成果は、ドイツ学術雑誌『Angewandte Chemie International Edition』オンライン版で平成26年6月4日(水)に公開されました。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金・特別推進研究「ヒドロゲナーゼと光合成の融合によるエネルギー変換サイクルの創成」、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「ナノ界面技術の基盤構築」、および文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究(感応性化学種が拓く新物質科学)の研究の一環として、九州大学の小江誠司教授の研究グループが九州大学伊都キャンパスおよび福岡市産学連携交流センターで行ったものです。
■背景
水素(H2)と酸素(O2)から電気エネルギーを作り出す水素–酸素燃料電池は、廃棄物として水(H2O)しか排出しないことから、クリーンな次世代発電デバイスとして期待されています。しかし、電極触媒には高価かつ枯渇性の白金が使用されており、その代替触媒の開発が待たれています。自然界では、水素酵素(ヒドロゲナーゼ)が常温常圧の温和な条件で水素から電子を取り出しており、その能力は白金をはるかに超えることが知られています。そのため、燃料電池の電極触媒としてもヒドロゲナーゼの利用が期待されてきました。しかし、ヒドロゲナーゼの酸素に対する不安定さにより燃料電池への応用はこれまで達成されていませんでした。
■内容
今回、研究グループは、阿蘇山の過酷な環境下で生息しているヒドロゲナーゼS–77を見出しました。この酵素は酸素に安定であり、燃料電池のアノード触媒として白金をはるかに超えることを示しました。具体的には、ヒドロゲナーゼS–77は白金に比べて、質量活性で637倍、電流密度で1.8倍、電力密度で1.8倍の能力を持っています。このような驚くべき能力を示す理由として、研究グループはヒドロゲナーゼS–77と白金の水素を活性化(切断)するメカニズムが根本的に異なっているためと推定しています。本研究は、酸素耐性ヒドロゲナーゼの固体高分子形燃料電池(PEFC)のアノード触媒への応用に世界で初めて成功しました。

2004年の産出国と産出量
南アフリカ共和国 160,013 (74.8 %)
ロシア 36,000 (16.8 %)
カナダ 7,000 (3.3 %)
ジンバブエ 4,438 (2.1 %)
アメリカ合衆国 4,040 (1.9 %)
コロンビア 1,400 (0.7 %)
(世界産出計 214,000 kg=214トン)・・・希少金属
(因みに、金の2009年の世界産出量は2,450トン)

九州大学は、燃料電池では他研究機関より先行した研究をこれまで行ってきているが、なかなか画期的な研究成果を見出すに至っていなかった。そうした中、今回の発見・発明は画期的といえよう。
九州大学は阿蘇山の隣の九重に研修所(近くに地獄もある)を持っている。研究者は当研修所でこのアイデアが閃いたのだろうか?

 

[ 2014年6月 5日 ]
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