アイコン 中国/再度の賃金上昇の大気運と外資系企業の撤退

中国 最低賃金iPhoneを請け負うなど電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手、台湾の鴻海精密工業の中国での労働問題が再びくすぶりだしたと報道されている。
中国の労働組合全国組織の幹部が2月2日、鴻海の傘下企業で従業員への残業の強要などが続いていると批判したところ、鴻海は翌3日、労使関係の改善に努力するとの声明をすかさず発表し、火消しに躍起になっている。
中国で最も賃金水準が高い広東省深圳市は、このほど3月1日付で最低賃金(1ヶ月)を現行から12.3%引き上げ、2,030元(約3万8,000円)とすることを決めた。

中国で初めての2,000元の大台超えで、2009年の同1,000元からわずか6年で倍増となる。
景気減速が続く中国だが、深圳市の上げにより、賃金上昇の波は全国に及ぶとみられる。中国には多くのグローバル企業が拠点を構えるだけに影響も大きい。
(電子製品製造業者は、電気等インフラが完全に整備されない限り、東南アジアへは移転できない)

深圳市の14年の最低賃金は1,808元。今年3月から、222元増額される。深圳市は、上海市と並び、中国で最低賃金が最も高い。
深圳市は、製造業中心に工場が多く、上海市は金融など中国ビジネスの中心地。両市が事実上、中国の賃金水準の先行指標となっている。
中国では毎年、都市や省ごとに最低賃金を改定し公表する。開始時期や上昇幅は、都市ごとにバラバラだが、深圳市の大幅改定で、今年も中国各地で賃金上昇が続くのは確実。経済減速が続く中、中国での一段の賃金上昇は、外資企業にとって経営上の大きな悩みの種にもなる。
 
中国南部の沿岸部にある深圳市は、世界の工場ともいわれるが、近年は慢性的な人手不足に悩む。現在も米アップルのスマートフォン「iPhone」を生産する(鴻海精密工業傘下の)富士康科技集団(フォックスコン)など多くの製造業が工場を抱えるが、工場での仕事を嫌う若者も増え、人手が集まりづらい状況にある。そのため内陸部などから若年労働力を確保するため、最低賃金を引き上げざるを得ないことも背景にある。(富士康科技集団は主にiPhoneの組立作業を担当しており、深圳市だけでも30万人以上を雇用している)

 加えて深圳市は他都市に先行し、中国で毎年2月前後に始まる春節(旧正月)の長期休暇が入る前に賃金アップを公表。地方からの出稼ぎ従業員にアピールし、長期休暇後も引き続き貴重な労働力として、つなぎ留めたい思惑もあるとされる。

一方、これまでの賃金上昇により、コストメリットを受けにくくなっている国内外の企業の中国撤退も続いている。

春節(旧正月)前夜、シチズンの中国生産拠点だった西鉄城精密(広州市)は、工場の清算を表明し、1000人余りの従業員と規定の退職金のほか1ヶ月分の給与を支払うことでやっと労働契約を解除した。
同じころ、マイクロソフトも傘下のノキアの東莞工場と北京工場の閉鎖を決め、ベトナム工場へのシフトを加速させている。マイクロソフトは、2工場閉鎖により、9000人を解雇するとしている。

このほか、パナソニックやダイキン、シャープ、TDKなども生産拠点の本国回帰を進める。
ユニクロ、ナイキ、富士康、船井電機、クラリオン、サムスンなど世界的に著名な企業が相次いで東南アジアやインドに新工場を設立し、中国撤退の歩みを速めている。
以上、報道参照

中国当局は、賃金上昇を歓迎しており、中国を商圏とした外資系製造業者以外、ますます外資の撤退は加速する。
中国は、不況といっても7%超の経済成長を達成しており、一人っ子政策もあり、労働需給は逼迫したままとなっている。当局は、少々の外資企業が撤退としても大局に影響はないとみている。それどころか、賃金上昇により、人海戦術依存から脱皮する時だとして、生産効率を上げるべく、ロボット導入などを奨励している(現に日本の産業用ロボットがバカ売れしている)。

労働集約型の繊維産業は、日本の場合、国産から、韓国産へ移り、中国産に、そして今やマレーシア産やミャンマー産、バングラデェシュ製まで登場している。
そうしたミャンマーには、すでに中国や韓国の多くの繊維メーカーが、欧米のブランドメーカーの下請けも含め大挙して進出している。ミャンマーの労働者の日給は400円とされている。

[ 2015年2月27日 ]
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