2日に発表された現代自動車、起亜自動車、韓国GM、ルノーサムスン自動車、双竜自動車の韓国完成車メーカー5社による11月の国内・海外販売台数は、前年同月比▲1.9%減の70万7,009台だった。
国内販売は、同▲2.5%減の13万6,414台、海外販売は同▲1.7%減の57万595台だった。
メーカー別では、
現代は同▲2.8%減の39万2,247台で、国内は▲1.5%減の6万3,160台、海外は▲3.0%減の32万9,087台だった。
現代傘下の起亜は、同0.8%増の24万8,942台で、国内は▲0.2%減の4万8,615台 、海外は1.1%増の20万327台だった。
韓国GMは、同1.8%増の3万9,317台で、国内7,323台、輸出3万1,994台
ルノーサムスンは、同▲15.3%減の1万5,749台で、国内8,076台、輸出7,673台
印マヒンドラ系の双竜は、同▲17.5%減の1万754台で、国内9,240台、輸出1,514台だった。
以上、
<本題>
現代自動車は傘下の起亜自動車と現代グループ(現代G)を形成している。現代自動車は、今年投入した新型SUVが好調だったが、短期間で賞味期限切れかかっている。起亜は現代とカーデザインが異なり洗練されており、現代より好調なようだ。
現代Gは、VWグループのアウディやBMWのチーフデザイナーやBMWトップエンジニアなど採用し役員に据え、さらに最近では日産の高級ブランドのインフィニィティのトップデザイナーも引っこ抜き、デザインや性能を高めている。
こうした車両が米国や欧州で攻略を進め、今年は特に高い評価を受けている。しかし、これまでの車両の信頼性もあり、SUVなど新規投入されヒットの兆しはあったものの、ビッグヒットにはつながっていない。他社のSUVの新車投入が相次ぎ、同社のSUVの賞味期限も切れ掛かっている。
中国では、
現代Gは、これまで海外に工場を作り、安価に販売して販売拡大をはかり、市場シェアを拡大させてきた。しかし、中国への河北工場と重慶工場は2017年3月からのTHAAD不買が発生し、完成したものの売れず、現代と起亜それぞれの一工場の閉鎖に追い込まれた。
中国では2016年に過去最高の179万台を販売したが、2018年には118万台まで落ち、2019年も1~10月までの累計で前年比▲15%減となっている。
中国では、もう不買から回復基調に至ってもおかしくない年月を経過しているが、この間、中国勢の車両も高性能化し、韓国勢(現代+起亜)のコストパフォーマンスはなくなっており、どんな車両を投入してもヒットせず、販売増につながっていない。また、両国のネット族の間は非常に仲が悪く、誹謗中傷合戦も災いしているものと見られる。
さらに経営体制も、不振の中国市場をいくら梃子入れするより、新規市場へ経営資源を投入する方が、全体の販売台数の回復には近道と判断したようだ。
そのため、インド市場を攻略するとして、既存の現代自動車の工場を拡充させ、起亜も市場参入させ、30万台キャパの工場を今秋完成させた。しかし、インド市場は、中央政府が金融コントロールができないインド版シャドーバンクの規制強化により、自動車ローンが大きな影響を受け、自動車市場は大不振に陥っている。
また、現代自動車は11月、2013年に日本勢がタイ国情不安から大挙して乗り込み、自動車市場を形成してきたインドネシア市場へ1700億円を投資して生産基地を設けると発表した。
韓国内では、時価評価3倍の破格値で応札し1兆円超で落札した韓国電力跡地(国有地)に、韓国一の超高層ビルなど大複合施設を開発する計画が、11月に建設認可がおり、始動させる。
こうしてみると、1997年と2008年に金融危機に見舞われた韓国だが、何かその直前を髣髴させる韓国を代表する企業の投資の数々とも見られる。
半導体で儲かったSKにしてもサムスンにしても踊り場もなく、市場を制圧するとしてイケイケドンドンが止まらない。有力企業はすべてバブリィダンスが止まらないようだ。
しかし、中国勢が国家を背景に韓国の輸出産業領域をこれまでにも駆逐してきたように、すでに液晶も敗退させ、韓国勢のサムスンとLGが圧倒的なシェアを有する有機ELディスプレイもすでに参入、3~5年で駆逐されると見られている。サムスンとSKが圧倒しているメモリ系半導体部門も、推進下の「中国製造2025」の国家政策により、数年で射程圏内に入る。サムスン電子はメモリ系半導体の好不調の大波に呑まれ、市場占有率を落とすことなく、需給バランスが崩れ、大幅な単価下落を見まわれている。そのため、「2030システム半導体メーカー」への変身計画を策定し、価格に左右されにくいシステム半導体へ駒を進めている。しかし、インテルのようなIT基盤技術をこれから構築するのはナミではない。IT基盤技術を持つファブレスメーカーからの受託生産では利益は限られるが、大工場建設で空いた部分をファンドリーメーカーとして受注していくしかないようだ。
韓国勢の現在の優位な産業は、造船のLNG運搬船(安値受注際立つ)分野、メモリ系半導体、有機ELディスプレイ(ULED・QLED)の分野だけになってきている。医薬品も伸張させているが、ジェネリックや受託生産品が主で、利益は限られ、中国勢とも今後競合してくる。
化粧品は、K-POPPに乗せ、これまで大躍進させてきたが、中国THAAD制裁で、韓国人の芸能活動や韓流ドラマの放映禁止などなされたままになり頓挫。そのため東南アジアや欧米でもK-POPPを活用して市場開拓してきている。中国でも整形訪韓客は多く、中国国内でも復活の兆しがあるが、中国政府しだいだろう。
ほかの産業分野は、すでに中国勢に駆逐されたか、日中との価格競争の渦中にある。
韓国の自動車産業は国内生産台数の400万台割れが確実になってきている。
2016年422万台、17年411万台、18年402万台と国内自動車メーカーの生産台数は落ちてきている。原因の一つに労働組合が毎年賃上げを要請してストを打つ強硬な労働組合ばかりで、その結果、現代自動車の一人当たりの報酬はトヨタより、かなり多くなっており、差は広がるばかり。そうしたストの影響から生産台数が落ちた分や、ストで新規生産車が見送られるケースや生産規模縮小も韓国GMやルノーサムスンでは検討されている。左派の文政権になり労働組合の組織率が大幅に上昇しており、特に外資系は労働組合に悩まされ続けている。
そうした中、左派本丸の光州市が文政権の支援を受け、失業対策事業として、実質、広州市立自動車生産受託工場を2022年にも開業させる。現代自動車の従業員一人当たりの平均報酬は900万円以上、当工場は350万円でスタートし、団体交渉も受け付けないという左派工場でもある。
現代自動車が新規車両の生産委託と実務指導に当たることで契約しており、生産台数が減ってきた中、現代自動車の過激な労働組合(民主労総)との戦いは熾烈を極めるものと見られる。
中国市場における韓国勢の販売台数推移 現代+起亜系
|
|
2017年
|
2018年
|
2019年
|
|
台数
|
前年比
|
台数
|
前年比
|
台数
|
前年比
|
1月
|
11.01
|
-11.1%
|
9.02
|
-18.0%
|
6.22
|
-31.0%
|
2月
|
9.12
|
-1.7%
|
5.71
|
-37.3%
|
6.07
|
6.3%
|
3月
|
7.20
|
-52.6%
|
9.75
|
35.4%
|
12.85
|
31.7%
|
4月
|
5.10
|
-65.2%
|
10.31
|
101.7%
|
7.46
|
-27.6%
|
5月
|
5.25
|
-65.1%
|
9.03
|
72.0%
|
5.98
|
-33.7%
|
6月
|
5.41
|
-61.9%
|
11.41
|
110.9%
|
8.94
|
-21.6%
|
7月
|
7.00
|
-36.9%
|
4.90
|
-30.0%
|
4.87
|
-0.7%
|
8月
|
7.60
|
-38.7%
|
9.10
|
19.7%
|
6.17
|
-32.2%
|
9月
|
12.50
|
-21.4%
|
11.11
|
-11.1%
|
10.00
|
-10.0%
|
10月
|
12.25
|
-23.4%
|
10.60
|
-13.4%
|
8.66
|
-18.3%
|
11月
|
14.49
|
-29.8%
|
11.10
|
-23.4%
|
|
|
12月
|
17.52
|
-21.3%
|
16.01
|
-8.6%
|
1~10累計値
|
年計
|
114.45
|
-36.1%
|
118.05
|
3.1%
|
77.28
|
-15.0%
|
全中国
|
2,471.83
|
1.4%
|
2,370.98
|
-4.0%
|
1,717.40
|
-11.0%
|
・乗用車の販売台数、中国の数値は乗用車の総販売台数。中国汽車工業協会版の工場出荷台数/マークラインズ参考/韓国勢とは現代と起亜の合弁企業製を指す。
|
2013年
|
157.75
|
17.7%
|
|
2014年
|
176.61
|
12.0%
|
|
2015年
|
167.88
|
-4.9%
|
|
2016年
|
179.20
|
6.7%
|
過去最高の販売台数
|
2017年
|
114.45
|
-36.1%
|
THAAD不買
|
2018年
|
118.05
|
3.1%
|
|
2019年
|
77.28
|
-15.0%
|
19年は1~10月の累計値
|
現代・起亜自動車グループ
|
世界販売台数推移
|
|
総販売台数
|
/万台
|
台数
|
前年比
|
2013年
|
754.84
|
5.9%
|
2014年
|
800.51
|
5.8%
|
2015年
|
801.57
|
0.1%
|
2016年
|
788.02
|
-1.7%
|
2017年
|
725.10
|
-7.0%
|
2018年
|
739.80
|
2.0%
|
2019年※
|
654.90
|
-2.2%
|
・※2019年は1~11月の累計値
|
灼熱状態の現代Gの投資
|
メキシコ工場
|
起亜
|
2016秋
|
河北工場
|
現代
|
2016秋
|
重慶工場
|
現代
|
2017夏
|
インド工場
|
起亜
|
2019秋
|
米工場拡充
|
現代
|
|
インド工場拡充
|
現代
|
|
インドネシア
|
現代予定
|
1700億円投資
|
本社等開発
|
現代
|
5000億円投資
|
現代
|
中国1工場閉鎖
|
4工場体制に
|
起亜
|
中国1工場閉鎖
|
2工場体制に
|
・ 新工場はいずれも年産キャパ各30万台。
インドのおける現代自動車 の100万台へ道
|
|
現代自動車
|
インド全体
|
|
2019年
|
2018年
|
2019年4輪車
|
|
台数
|
前年比
|
台数
|
前年比
|
台数
|
前年比
|
1月
|
45,803
|
0.6%
|
45,508
|
8.3%
|
367,716
|
-0.9%
|
2月
|
43,110
|
-3.1%
|
44,505
|
5.1%
|
359,720
|
-0.9%
|
3月
|
44,350
|
-7.6%
|
48,009
|
7.3%
|
400,836
|
-2.1%
|
4月
|
42,005
|
-10.1%
|
46,735
|
4.4%
|
316,221
|
-14.9%
|
5月
|
42,502
|
-5.6%
|
45,008
|
7.1%
|
308,194
|
-18.4%
|
6月
|
42,007
|
-7.3%
|
45,314
|
20.8%
|
296,503
|
-16.3%
|
7月
|
39,010
|
-10.3%
|
59,590
|
1.1%
|
257,656
|
-29.9%
|
8月
|
38,205
|
-16.6%
|
45,801
|
-2.8%
|
248,421
|
-33.2%
|
9月
|
40,705
|
-14.8%
|
47,781
|
-4.5%
|
281,736
|
-27.5%
|
10月
|
50,010
|
-3.8%
|
52,001
|
4.9%
|
351,800
|
-5.2%
|
11月
|
|
|
43,709
|
-0.7%
|
|
|
12月
|
↓1~10
|
|
42,093
|
4.8%
|
↓1~10
|
|
|
427,707
|
-10.9%
|
566,054
|
|
3,188,803
|
-14.9%
|
・同グループの起亜自動車の工場は秋完成/輸入車除く
|