韓国開発研究院(KDI)が韓国経済に対し9ヶ月連続で「景気不振」の判断を下した。KDIは、「最近の韓国経済は、輸出と投資が萎縮するなど実体景気は不振を持続している」と分析している。
KDIは昨年11月から今年3月までは景気状況をめぐり「鈍化」、4月からは「不振」と評価している。
「鉱工業生産が減少、輸出の減少が続き、製造業が萎縮し、サービス業生産も低い伸びにとどまり、景気不振が続いている」と指摘した。10月の鉱工業生産は前年同月比▲2.5%減、サービス業生産は0.7%増だった。
建設投資は土木を中心に減少幅が減ったが、設備投資は減少が継続していると説明した。
KDIによると10月の全産業生産は、
・鉱工業生産と建設業生産が減少、
・サービス業生産の増加傾向が鈍化し、前月の0.5%の増加から0.5%の減少に転換。
・製造業出荷は、内需出荷が▲2.8%減から▲4.1%減と減少拡大、
・輸出出荷が1.1%増から▲2.5%減と振るわず、前月の1.2%より悪化した▲3.5%の減少率を記録。
消費は、
消費者心理指数が上昇し小売り販売の不振が部分的に緩和したが、消費関連サービス業生産は0.7%の増加率で前月の1.0%より増加幅が縮小した。
輸出は、
KDIは、「対外需要不振により輸出が大幅な減少傾向を持続し、製造業を中心に産業生産は萎縮した様相。輸出不振により鉱工業生産が減少して製造業平均稼動率は下落し、サービス業生産増加傾向も低い水準にとどまっている」と診断した。引き続き「建設投資が土木部門を中心に減少幅が縮小したが、設備投資は最近の減少傾向が続き投資全般が依然として振るわない状況」と説明した。
(韓国の11月の輸出は前年同月比▲14.3%減の441億ドル(約4兆83百億円)で、昨年12月から12ヶ月連続の減少で、今年6月から6ヶ月連続で2桁の減少率となっている。輸出の2割の構成である半導体価格が昨年9月をピークにして、米中貿易戦争や需給バランスが崩れ、11月までに3~6割安と暴落したことによるもの。
輸出のマイナスは、韓国の旧正月および中華圏の春節が今年は2月だったが、新年は1月であり1月まで減少は続くと見られる。2月はその反動で大きく回復するが、3月からの回復は一進一退と見られる。・・・米中貿易戦争が緩和されたり、逆に激しくなれば再考必要)
今後の景気見通しに対しては、「同行指数循環変動値が横ばいで、先行指数循環変動値と経済心理指数は小幅に改善され、景気不振が深化する可能性は低いと判断される」と明らかにした。
KDIは、世界経済と金融市場に対しては「世界経済は貿易と投資の萎縮で成長が鈍化した中で、米中貿易紛争など不確実性も高く維持され景気収縮が持続している。米中貿易紛争関連の不確実性が持続したが金融市場は比較的安定した姿を維持している」と判断した。
↓製造業を支える輸出推移
韓国輸出月別推移/百万ドル
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2018年
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前年比
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2019年
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前年比
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1月
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49,210
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22.2%
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46,175
|
-5.4
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2月
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44,880
|
4.0%
|
39,451
|
-12.1
|
3月
|
51,580
|
6.1%
|
47,046
|
-8.2
|
4月
|
50,060
|
-1.5%
|
48,829
|
-6.2
|
5月
|
50,980
|
13.5%
|
45,907
|
-9.4
|
6月
|
51,230
|
0.0%
|
44,180
|
-13.5
|
7月
|
51,880
|
6.2%
|
46,136
|
-11.3
|
8月
|
53,270
|
13.7%
|
44,200
|
-13.6
|
9月
|
50,580
|
-8.2%
|
44,710
|
-11.7
|
10月
|
54,970
|
22.7%
|
46,780
|
-14.7
|
11月
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51,720
|
5.0%
|
44,100
|
-14.3
|
12月
|
48,206
|
-1.3%
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計
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605,169
|
5.5%
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497,514
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-11.2%
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↓小売売上高は一進一退(月売上高推移)
8月の大きな伸びは、百貨店が4.5%増とネット通販が9.2%増と大きく伸びたことによるものだという。8月の自動車販売額は▲6.8%減だった。作為は不明。
<↓物価上昇率は>
11月はサービス物価が前年同月比で0.7%上昇した。それでもタクシー料金は14.88%、市内バス料金が4.2%、外来診療費が2.2%など公共サービス物価や、共同住宅管理費が5.7%、構内食堂食費が3.2%、高校生の塾費用が1.9%など個人サービス物価が、上昇したにもかかわらず、0.7%上昇にとどまり、全体でも0.6%の上昇にとどまっている。
↓建設投資GDP(四半期)
韓国の場合、内需経済への波及効果の高い建築投資を増加させるべきであろうが、これまで住宅価格はバブルを演じており、鎮静化を図るべく種々の対策が講じられるも低金利下、功を奏しおらず、建築分野に迂闊に公共投資できない。そのため土木や地方の公共施設などへの投資が主を占めている。
不動産バブルは朴政権末期から沈静化の政策が採られ、経済悪化もあり、沈静化の動きにあったが、2018年4月の南北緊張緩和により、北朝鮮開発の拠点としてソウルの商品価値が急上昇、内外資の投資拡大に急騰したまま高止まりどころか、国内富裕層の投資により、値上がりし続けている。
英エコノミストによると、文在寅政権の2017~18年の2年間のソウル市は14%上昇し、2016年から比較すれば38%上昇している。
9月は、青年雇用が大幅に改善されているが、約85%が「短期バイト」中心の飲食・居酒屋業に集中している。食い繋ぎのバイトでの就労。8月も就労者数が大幅に伸びたが、これは高齢者の公共機関における大量短期採用が中身だった。以前、正社員雇用や製造業雇用が増加しているわけではない。製造業も高額所得の情報通信業なども減っている。
ともあれ、中国や日本からの訪観客が増加し、また高額所得者層の拡大により、飲食・宿泊施設の雇用が大幅に改善されてきていることは間違いないだろう。
(ただ、これまで拡大を続けていた日本からの訪観客は11月マイナスに転じている。)