米司法省は、製薬大手のイーライリリーが新コロナウイルス抗体治療薬などを製造している工場で製造基準が守られず、データ改ざんも行われていたとされる問題で、刑事捜査を開始した。
イーライリリーはモノクローナル抗体治療薬「バムラニビマブ」を製造しており、米政府は昨年10月30万回分を購入し、12月追加して65万回分(8億1250万ドル)を購入している。
ニュージャージー州ブランチバーグにあるこの工場は、既に1年余り前から米食品医薬品局(FDA)の査察が入っている。(米FDAは製造基準を守らず不正製造していることを知っても「バムラニビマブ」を購入したようだ。)
関係者の話では、司法省の捜査にはニュージャージー州と首都ワシントンの検察当局者や連邦捜査局(FBI)も加わり、最近数週間のうちに始まった。
今のところイーライリリーや特定の従業員に対する不正行為の立件はされておらず、最終的に刑事訴追や民事制裁などに発展する可能性がある一方、処分なしで捜査が打ち切られるケースもあり得る。
ただかつてFDAで品質管理責任者を務めたスティーブン・リン氏は、製造基準違反問題で連邦政府が刑事捜査に着手するのはよほど深刻な事態で、企業がほとんど対応していない場合を除けば滅多にあることではないと指摘。「これは重大案件だ」と語った。
ロイターは26日に改めて刑事捜査の話をイーライリリーに問い合わせたところ、27日になって同社は今月、司法省からブランチバーグ工場に関連する書類の提出を求められたことを記した証券当局への届出書類を開示した。
同社は捜査の内容などについてそれ以上は明らかにせず、この問題で当局に全面的に協力していると説明した。