米国の商業不動産、中国の住宅不動産、欧州の不動産である世界3大不動産市場が挙って危機に瀕している。
米国の場合は、住宅は就業者数が過去最高を更新し続け好調であるが、商業用不動産は新コロナ事態下のホームワークの拡大、ウィズコロナ策でも事務所に戻らず、大幅に需要不足に陥っている。また、新興企業の救世主の銀行(シリコンバレー銀行等)が破綻し、資金調達難に陥ったスタートアップ企業が事務所を追われ、シリコンバレーがあるカルフォルニア州シスコ界隈は空き事務所で溢れているという。
中国の場合は、習主席の共同富裕論に基づく不動産業界に対する3条紅線規制、民間住宅デベロッパーを直撃し、中小だけではなく、民間最大手3社も破綻の危機に瀕している。政府としても連鎖や破綻の影響から安邦保険集団(2018年、代表逮捕)のように潰すわけにはいかず、デフォルト状態ながら、実質、国管理の下に再建させる動きにある。しかし、共同富裕論との整合性もあり、葛藤が続いている。
こうした内需マイナス要因に加え、欧米市場の低迷や貿易戦争により、外需も低迷しており、政府がいくら内需拡大策を講じても景気に火が付かない状況が続いている。
商業不動産も恒大(代表:在宅起訴)や万達(保有資産売却でぎりぎりセーフ)に見られるように不動産融資規制策に窮地に陥っている不動産会社も多くなっている。
新コロナ事態もある中で、経済不振により失業率が高じており、若年失業率は21%だった6月を最後に発表もされなくなっている。若年労働者が多い、製造業やサービス業が若年労働者を吸収できない経営環境におかれていることを意味する。
↓中国は長く続いた一人っ子政策(1979年~2014年までの35年間)により、少子高齢化が進み、就業者数は減少し続ける。並行して内需の基盤である購買力が落ちることになる。働き世代人口の減少による失業率の減少も考慮する必要がある。
スクロール→
中国の失業率
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就業者数/億人
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22/12月
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5.5
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2018年
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7.58
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23/3月
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5.3
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2019年
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7.54
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23/6月
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5.2
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2020年
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7.50
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23/9月
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5.0
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2021年
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7.46
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23/10月
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5.0
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2022年
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7.33
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欧州不動産は、
1760億ユーロが借り換え困難と見られている。2019年~22年に融資された4年償還の6400億ユーロ、うち4分の1超が借り換え困難と見られている。 特にオフィス用不動産担保融資の借り換えが困難と見られている。
借り換え困難事由は、金利上昇・経済低迷により不動産評価額が下落していることにある。但し、金利が下がればこうした問題も解消されると見ている(CBRE=カーライル+リチャードエリス合併会社)の見解。
欧米はインフレ退治の高金利政策により経済失墜、
中国は経済大乱の新コロナ下で3期目を目指した習政権の政策ミスによる不動産市場の混乱となっている。インフレ退治を第一義にしている。
ウクライナ戦争ではロシア産原油と天然ガスが、米ユダヤ資本の思惑通り、米国産原油とLNGに置き換わっている。パイプランのガスとLNGのガスの価格は比較にならず、エネルギー価格の高騰が欧州経済の足を引っ張ってもいる。価格が下がっても新コロナ以前に比しまだ高い。それに対ドルユーロ安も燃料価格の上昇をもたらしている。
スクロール→
ドイツの景況感とインフレ
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景況 基準100
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インフレ率
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金利
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対ドルユーロ
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18/12.
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102.0
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1.7
|
0.0
|
1.137
|
19/12.
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95.0
|
1.6
|
0.0
|
1.111
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20/4.
|
71.0
|
-2.0
|
0.0
|
1.087
|
20/12.
|
92.0
|
1.0
|
0.0
|
1.217
|
21/6.
|
101.0
|
3.9
|
0.0
|
1.204
|
21/12.
|
94.0
|
4.2
|
0.0
|
1.130
|
22/12.
|
88.7
|
8.1
|
2.0
|
1.059
|
23/3.
|
92.9
|
7.4
|
2.5
|
1.713
|
23/6.
|
88.7
|
6.4
|
3.5
|
1.084
|
23/9.
|
85.9
|
4.5
|
4.3
|
1.067
|
23/10.
|
86.9
|
3.8
|
4.5
|
1.056
|
23/11.
|
87.3
|
3.2
|
4.5
|
1.081
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