サムスン電子の2023年12月期決算(速報値)は、
売上高は前期比▲15%減の258兆16百億ウォン(約1807億ドル/0.0007ウォン)、
営業利益が同比▲85%減の6兆54百億ウォン(約45.7億ドル)と大幅に落ち込んだ。
収益の足を引っ張ったのは、メモリ市況の低迷長期化による半導体部門の大赤字となった。
半導体部門の営業赤字幅は23年1~9月までで▲12.69兆ウォン、10~12月期も赤字で、通年の赤字幅は▲14.5兆ウォン規模(前期は24兆ウオンの黒字)に膨らんだと見られている。
サムスン電子は、半導体(主力メモリ+自社製システム+受注のファンドリー)、スマホ+家電+液晶・有機ELパネルで構成されている。
半導体はホームワークが急増した新コロナ特需に沸きかえったが、ウィズコロナ時代に入り、その反動や物価高+インフレ退治の高金利による景気後退から大幅に落ち込んでいる。
スマホ市場も販売台数が頭打ちになり久しく、プレミアム市場を拡大させ、業績を拡大させてきたが、ここでも不景気からプレミアム価格帯商品が売れなくなっている。さらに中国勢のプレミアム商品は、性能はiPhoneやGALAXCYとほとんど変わらないものの安価に販売されており、中国ではiPhoneの販売台数が前第4四半期し前年比で▲13%落ち込み、今年は1~10日までで▲30%も落ち込んでいる。値引きしての落ち込みであり、ただ事ではない。当然、中国勢は世界へ展開しており、サムスンスマホの販売台数にも影響を与えている。
サムスン電子では、リーマンショック以降、スマホが利益を稼ぎ出す時期と半導体の時期が交互に現れ、同社の利益を安定して拡大させてきた。
しかし、2023年はともに厳しくなっていた。
家電はいくら高く評価されても、中国勢やLGほか世界の有名家電メーカーとの競争も激しく、製品種も多くなり、大きな利益を稼ぎ出す市場ではなくなっている。
ディスプレイもLGと激しい競争をしている間に、中国勢との競争に晒され利益が出なくなっている。中国の生産質は歩留まりが悪く原価コストが高くなっても、韓国勢より安価に販売し、韓国勢も価格競争に引きずりこまれ、利益が出にくくなっている。
日本のTVメーカーのほとんどはLG製の有機ELディスプレイを採用している。
半導体で利益が出ないのは、メモリ半導体業界をサムスン電子が牽引してきたものの、SKハイニックスなどが猛追し、その差がなくなってきていることにある。
一昨年秋からの半導体暴落場面では、SKや米マイクロンは在庫減らしの減産体制に入ったものの、サムスンだけは過去に囚われ、通常生産を続行し市場占有率の拡大に動いたが、価格の暴落は続き、市場低迷期もあり占有率も伸びず、昨年3月から減産・在庫調整に入った。在庫調整が2~4ヶ月遅れた。中国・欧州経済の低迷、米経済の陰りにより、株価のAIブームの割には伸びていない。
ただ、半導体の歴史の波からして、今年には上昇局面に入るものの、メモリメーカー(DRAM+NAND)各社は、生産を拡大させることができることから、既存の電化・電子製品がAI製品に取って代わらない限り、大きな上昇は期待できない。
また、DRAMでは市場占有率№1のサムスンに対して№2のSKは5%あまりしかはなれておらず、絶対的な優位性もなくなってきている。
サムスンのシステム半導体は自社製品への組み込み品も多く、自社製のシステム半導体の市場拡販は専業の大手ファブレスメーカー(特化した半導体開発企業)と比較しても大きく落ちる。
ファンドリー部門は、2017年を頂点にした半導体ブームが急激に下り坂にかかったときにサムスンの新工場が完成、同社はその対応策としてファンドリー事業部門を急遽拡大させ、クアルコムやエヌディベアなどファブレスメーカーから受注し、ファンドリー市場の15%以上のシェアを獲得していた。
しかし、半導体不良(アマゾンデーターセンター用)や発熱問題など発生し、ファブレスメーカー大手は新製品をTSMLに回帰させ、ファンドリー市場が全般急拡大する中、TSMCはシェアを拡大させ、サムスンは逆に12%前後まで下落させている。
<収益の安定性からはシステム半導体生産の拡大しかない>
ただ、サムスン電子としては、拡販できる自社製システム半導体の開発とシステム半導体の受注生産するファンドリー事業拡大を目指している。
これは、2023年期決算に見られるようにもメモリ半導体主力のサムスン電子の半導体部門は、ファンドリー事業を含めても赤字から脱出できておらず、一方、システム半導体の受注生産のTSMCは僅かに売上高と利益を落としているだけに過ぎない。
サムスンはその収益構造を安定させるためにもファンドリー事業を含めてシステム半導体の売上高比率を大幅に増加させる計画である。
TSMCはファンドリー専業メーカーであり、製造設計スタッフも充実、試験ラインも何本も構築しており、製品に問題が発生しても早期に解決するだけの能力を有しているが、サムスンはもともとメモリメーカーでどうしてもそうしたスタッフは限られ、最近では製品を高度化させ続けるファブレスメーカーも安定・安心からTSMLへの発注優先となっている。
サムスン電子は、30年までにシステム半導体でも世界一になるとしているが、細分化された分野に特化した、また新分野を切り開く米国のファブレスメーカーに適うことはない。
もともとメモリ半導体は景気に大きな波があり、システム半導体は、ファンドリー事業も含め、価格の暴落がないため、打ち出した政策でもあった。
ただ、同社は国内や中国勢に開発用員を引っこ抜かれたり、中国などへの技術流出も多い問題を抱えてもいる。
直近でも同社元部長が中国へ技術情報流出させたとして逮捕されたりしている。韓国では産業情報流出の刑は昨年から重くなったものの、中国側は設計図など高く購入したり、高額で採用したりしており、リスクより利が優先、韓国から技術情報流出や人材の流出が続いている。
韓中はFDAを締結しており、中国はヘッドハンティングや技術情報購入などもFDAと勘違いしているようだ。
半導体もEV用バッテリーも、製品納品後に不良が発生すれば、膨大な損失を被るリスクがある。(サムスンは2019年にはアマゾンのデーターセンターのクラウドサーバー向けの当時最先端の10nm半導体(DRAM)に不良が発生、4千億円あまりの損害金を当時支払っている)
スクロール→
サムスン電子 & TSMC 2023年期決算・12月決算
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売上高
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前期比
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営業利益
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前期比
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サムスン電子(億ウォン)
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2,581,600
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-14.6%
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65,400
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-84.9%
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23/Q1
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6,400
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23/Q2
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6,700
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23/Q3
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24,400
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23/Q4
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670,000
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27,900
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-35.0%
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→小計
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65,400
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うち半導体(億ウォン)
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-145,000
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(240,000).
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うちファンドリー(億ウォン)
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-20,000
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/0.0007米ドル
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売上高
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前期比
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純利益
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前期比
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TSMC(台湾億ドル)
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21,617
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-4.5%
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8,384
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-17.5%
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うち4Q(台湾億ドル)
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6,255
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-1.5%
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2,387
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-19.3%
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TSMC(百万米ドル)
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うち4Q(百万米ドル)
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19,620
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-1.5%
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/0.0319米ドル
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★サムスン=スマホ・パソコン・サーバー向け低迷、AI製品向け好調
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・半導体は急激に極小化が進んでいる。
日本は半導体分野でいくら税金をばら撒いても、研究開発・新製品化の米国にも、大量生産市場制圧型の韓国にも適うことはない。
銭を出さず脳みそを退化させ続けてきた日本と、銭を注ぎ込む米国や韓国・中国は進化させ続け、もう追いつけない領域に達している。
日本は森-小泉時代から完全におかしくさせてしまった。勝つためだけの、大臣創出ためだけの政党派閥政治が長く続いてきた結果でもある。
スクロール→
TSMCの製造サイズ 変化
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2023年
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2022年
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3nm
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6%
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0%
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5nm
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33%
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26%
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7nm
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19%
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27%
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16nm
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10%
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13%
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28nm
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10%
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10%
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40/4nm
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6%
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7%
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65nm
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6%
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5%
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90nm
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1%
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2%
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0.11/0.13um
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2%
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3%
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0.15/0.18um
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5%
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6%
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0.25umほか
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1%
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1%
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