今年1~4月までの「不動産開発投資」は、前年同期間比で▲9.8%減と下落幅が拡大したほか、新築住宅の販売面積も▲20.2%減少し、不動産市場の低迷が引き続き中国経済の懸念材料となっている(中国は戸数で発表しておらず、住宅の総面積で公表している)。4月の下落幅は過去10年で最大となっている。
中国の主要都市70都市の4月の住宅価格指数は、前月から下落した都市数は64都市、下落は前月から54都市から拡大している。
上海が前月から0.3%上昇したものの、
広州▲1.3%下落、
深セン▲1.0%下落、
北京▲0.7%下落している。
4月の新築住宅価格は、前年同月比では3.51%下落。3月は同2.7%下げていた。4月の中古住宅価格も同6.79%下落。新築も中古も2011年に現在の方法でデータを収集し始めて以後、記録的な値下がりとなっている。
ご法度の3期目に突入している習主席、今回の不動産バブル崩壊を演出させた習主席直々の三条紅線、不動産会社に対する融資を緩和しているが遅すぎた。恒大や 華園ばかりが報道されているが中小の多くの不動産開発会社がすでに倒産し、多くの国民に被害が生じている。
これに対して、政府は購入側の金利や条件を大幅緩和しているが、購入者側は笛吹けど踊らず状態が続いている。これは50万戸あまりで販売されたものの建設がストップしており、しかも購入者はすでに住宅ローンを組み全額支払っており、その支払い問題を抱えている。
また、不動産会社の社債は金利が高いことから、投資ファンド(=シャドーバンキング)が国民に販売、そうした社債もデフォルトに陥っており、こうした政府の不動産行政に対し国民は総スカン、行政主導で数多くの回復策が講じられているが、低迷したままとなっている。
政府の対策は、
銀行の住宅ローン金利の下限撤廃
購入頭金を1戸目の人は20%⇒15%に、2戸目購入者は30%⇒25%に引き下げ。
不動産会社に対する融資姿勢(三条紅線)の緩和指示(ただし、一方で適正な融資に務めると釘を刺している)。
売れ残りの販売用住宅を地方政府が購入し、需給を調整、地方政府は適正価格で職員用住宅や社宅として貸し出す。
不動産会社が有している建設途上の不動産や建設予定の土地につき、地方政府が販売した土地利用権を地方政府が適正価格で買い戻すことを許可。
建築ストップ中の販売済みマンションは地方政府も協力して完成させる。
というもの。
以上、
地方政府は直接的に公社などが不動産開発して焦げており、また多くの地方自治体が
別途第3セクター方式の不動産開発会社を有している。特に第3セクターの不動産会社の多くは危機に瀕しており、地方政府の財政も不動産利用権が売れず、財政問題に発展している。特に第3セクターの不動産開発会社の負債については中央政府が把握していないところに、不動産バブルの深刻さにより、これまでの対策が後手後手になり、まだ先が見えないものとなっている。
(住宅不動産開発会社の住宅産業は経済波及効果が大きく、ほか産業にも、消費にも大きく影響する。そうしたことを知り尽くし、これまで何回ともなく、景気動向にあわせ、その手綱を締めたり緩めたりしてきた。知らなかったのは習国家主席だけだったようだ)
習というドラ猫に対して白い猫も黒い猫も逃げ回り、ドラ猫の子分たちは三条紅線完全撤廃の鈴をつけようとはしない。ドラ猫はすでに独裁者になっている。
日本バブルの崩壊は、金融機関が不動産開発会社へ競って融資を行い、結果、不動産バブル崩壊により、担保の不動産価値が二束三文となり、金融機関事態が信用不安に陥り、多くの大手金融機関が破綻していった。
中国でも不動産バブル崩壊が長引けば長引くほど、金融機関の打撃も大きくなり、金融機関の融資も選別融資が強化され、大幅に悪化することになる。
中国は経済指数を操作する計画経済の共産主義政権、指数を動かすことで国民の心理も変化する可能性はある。今やIOTやAIを駆使しコントロールすることにより、各経済指数と整合性が取れるようトータルに修正することも可能で、財新でも実態との差を把握することは困難となる。
ただ、結果、最大のGDPである消費に結びつかなければ経済回復は長期化する。救いは新コロナから不景気の現在まで、中国でも個人預金残が拡大し続けていることだろう。
この預金が消費に回る策も自動車の購入促進策(地方政府主導)などとしてとられている。
現在のところ、日本と同様、将来不安に対する自己防衛の貯蓄増となっているようだ。また、住宅購入=住宅投資が減少していることにも預金増の一因となっている。
都市部では4月の賃金が昨年から平均して5.8%増加している。しかし、物価は上昇しておらず、購買力の増加が消費に結び付いてい
ない。
習主席の共同富裕論は2018年ころから唱えられ始め、巨大ネット販売会社やネットゲーム会社へのオーナー制裁と運用規制、ネット金融会社、塾への経営規制など取られた。
①(前受金控除後の)総資産に対する総負債の比率が70%を上回ってはならない、②自己資本に対する負債の比率が100%を上回ってはならない、③保有する現金に対する短期負債の比率が100%を上回ってはならない、という「三つのレッドライン」(中国語は「三道紅線」)
↓2020年秋から始まった不動産総合開発の恒大問題では様子眺めだったが、恒大の社債のデフォルトなどもある中、2022年に入ると第1位の住宅不動産開発会社の碧桂園に飛び火、ほかの不動産大手にも次々飛び火して一気に不動産熱は冷め、それ以降マイナスが続いている。
スクロール→
中国住宅価格 前年比
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22年
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23年
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24年
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1月
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2.3
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-1.5
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-0.7
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2月
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2.0
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-1.2
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-1.4
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3月
|
1.5
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-0.8
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-2.2
|
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4月
|
0.7
|
-0.2
|
-3.1
|
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5月
|
-0.1
|
0.1
|
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6月
|
-0.5
|
0.0
|
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7月
|
-0.9
|
-0.1
|
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8月
|
-1.3
|
-0.1
|
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9月
|
-1.5
|
-0.1
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10月
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-1.6
|
-0.1
|
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11月
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-1.6
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-0.2
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12月
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-1.5
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-0.4
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・習主席の共同富裕論⇒三条紅線
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三条紅線=不動産会社に対する融資規制
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・2020年10月、総合不動産開発の恒大の経営危機、負債額は2023年6月末時点2兆3882億元。
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・2022年以降、住宅開発1位の碧桂園(負債額約12兆円)、4位の融創、7位の緑地、8位の世茂らがデフォルト状態に陥っている。中央政府系か地方政府系しか財政健全不動産会社はない。
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中国住宅価格指数 四半期ベース
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19年
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20年
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21年
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22年
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23年
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24年
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Q1
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7.596
|
2.991
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3.035
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-0.152
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-3.357
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Q2
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7.402
|
2.261
|
3.669
|
-2.183
|
-2.674
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Q3
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5.270
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2.213
|
3.067
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-3.283
|
-3.165
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Q4
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3.781
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2.306
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1.614
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-3.706
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・上海ロックダウンは2022年4・5月、その後他都市へ波及。
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