岸田総理は、外国人材の育成・確保を目的とした入管法改正案の議論に関連して、参議院本会議で自民党の和田政宗参院議員の質問に答えました。総理は、「政府としては国民の人口に比して一定程度の規模の外国人およびその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする、いわゆる移民政策をとる考えはありません」と明言しました。そのうえで、入管法の改正案で創設される「育成就労制度」について、人手不足分野に限って上限を定めて受け入れることから、「いわゆる移民政策には該当しない」との認識を示しました。この発言を受けて、各界の専門家から多様な意見が寄せられています。
門倉貴史 エコノミスト/経済評論家
門倉氏は、日本が移民政策を採用すれば、安価な労働力人口が増加することで中長期的な経済成長率が高まる可能性を指摘しています。しかし、短期的には移民の滞在費や食費、教育費といった財政負担が重くのしかかると警鐘を鳴らしています。欧米諸国では、移民受け入れによる短期的な財政負担が長期的な成長率の高まりを帳消しにしてしまうという現実があり、その反省を踏まえて移民政策の厳格化へと舵を切ろうとしています。日本が安易に移民を受け入れれば、同様の問題に直面する可能性が高いと述べています。
石川智久 日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミスト
石川氏は、海外から労働力を頼るべきだという意見について、慎重な検討が必要であると述べています。海外では、移民戦略があり、自国にメリットがある人々に限って受け入れています。また、スキルのある移民は賃金の高い国に流れるため、賃金の低い日本には来ない傾向があります。なし崩し的な移民受け入れは日本の混乱を招く可能性があり、現状では十分な議論がされていないと指摘しています。欧米のエコノミストとの議論では、彼らは自国の移民政策を失敗とみなし、限定的かつ戦略的にすべきだとの意見が多いと述べ、海外の事情を踏まえた冷静な議論が必要であると強調しています。
京師美佳 防犯アドバイザー/犯罪予知アナリスト
京師氏は、技能実習生の犯罪事件が発生している現状を指摘しています。国によって犯罪に対するハードルが異なり、日本での労働環境の悪さ(低賃金・未払い・暴力)が原因で失踪し、仲介料などの借金返済や生活費のために犯罪を犯すケースがあると述べています。安い労働力を確保するだけでは不十分であり、専門職の方やどのような人材を招くのか、受け入れ側にも問題がないかを厳しく審査する必要があると強調しています。現在の状況を無視して議論するのは無責任であると警告しています。
以上のように、外国人材の育成・確保を目的とした入管法改正案については、さまざまな視点からの意見があり、慎重な議論が求められています。