アイコン 中国バズーカ砲は空砲か ICBM級か

Posted:[ 2024年11月12日 ]

中国政府は11月8日、新たな景気対策を発表した、世界商品市場は身動きが取れない状態となっている。
この対策は急務の地方政府債務再編に焦点を絞ったものだが、内需を直接押し上げるような内容には至らなかった。

中国財政省が8日午後に発表したこの措置は「隠れ債務」借り換えを目的とし、規模は10兆元(約1兆4千億ドル/215兆円)規模。
国営新華社通信は、中国は地方政府の債務上限を35兆5200億元に引き上げ、今後3年間で追加して6兆元の特別債を発行し隠れ債務をスワップできるようにすると報じた。
藍仏安財政相は、債務スワップにより5年間で約6千億元の利払いが節約でき、その分を投資や消費を増やよう活用できると想定。また、2023年末時点での隠れ債務残高は14兆3千億元だとも説明した。

ただ、具体的な消費喚起策は示されなかった。

 



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こうした規模の大きさから原材料は、恩恵を受けるかもしれないが、発表を受け、銅や鉄鉱石、原油相場は軒並み下落した。
市場では、しっかりした景気刺激策を期待していた向きには、また期待外れとなったと指摘されている。
中国が11月9日発表した10月の消費者物価指数(CPI)はこうした悲観論をさらに深める可能性がある。生産者物価指数(PPI)は2年1ヶ月連続で前年割れとなったほか、消費の伸びもさえない。

(9月24日中国政府は総合経済対策を発表したが、まだ反応しているのは株式市場のみで、発表を国民が好感していれば消費が伸びていようが伸びていない。上海ではクーポンが中秋節期間にばら撒き、大きな消費効果があったと報じられたが、10月の経済に影響したとは思われないのが現実。上海総合指数は9月24日2,863Pから11月10日現在3,470P、21%上昇しており、今後、発表される経済指数が好転していれば、株価に弾みがつくことになる。当然、逆もある。)

石油や鉄鋼など「オールドエコノミー」の商品需要は、今年低迷しており、これら市場は現時点で構造的な下振れ局面にある可能性が高い。
当面、エコノミストやアナリストは今後を見据え占うしかない。
銅やアルミニウムなど非鉄金属は鉄鋼や鉄鉱石といった建設資材よりも優位に立つ公算が大きい。
一方、食料品や燃料は経済成長が正味でプラスに働く見通し。原油は脱炭素化が足かせとなるリスクがある。

追加利下げを示唆、金融機関の準備金の率引き下げ、合わせて不動産や株式市場の支援策も打ち出した。
一連の施策で、低迷する国内景気や金融・資本市場を下支えする。ついに出た「バズーカ砲」だった。

中国9.24以降のバズーカ砲
1、政府系ファンドによる上場投資信託拡大、証券・ファンド・保険会社への流動性支援といった株式市場支援⇒即反応、外資も入ってきている。
(パフォーマンスが往復相場で限られてきている日本市場から中国市場にシフトを変える投資ファンドも多いが、眼下では11月6日以降、トランプ相場で米国へ一極集中している)

2、銀行の準備率引き下げ=金融緩和⇒投資拡大、消費拡大

3、金利引き下げ、住宅金利の引き下げ⇒引き下げ分が消費に回る目論見

4、2戸目住宅取得の頭金の規制、引き下げ⇒景気低迷より不動産バブル期待

5、地方財政対策、国営企業でも地方政府系企業が非常に多く、内需低迷で収益低迷、負債が拡大している。地方政府系の不動産開発会社は中央政府が状況を把握しているが、地方政府主導の第3セクターの不動産開発会社の問題はまったく把握されていない。
地方財政の悪化は歳入の3割とされる不動産利用権販売が、価格が下がっていること。購入先がないことなどから、歳入不足に陥っていることにある。それに加え、内需・消費不調で税収の増加どころではない。

☆上海では9月・10月と11月・12月の2回クーポン配布、その効果により飲食や消費が急増したが、予算がないのかほかの自治体への波及はないようだ。
☆共同富裕論で禁止された「学校塾」が再び開校、当局の取締りがないことから、新卒含む大学卒の失業対策もあり黙認しているとの報道。


スクロール→

↓中国経済対策、期待外れの商品市況 (シカゴ先物市場)

・商品相場は立ち往生状態

中国株価と商品相場

 

上海総合

原油

スチール

アルミ

単位

指数

$WTI

CNY/T

USD/Lbs

USD/T

9/20.

2,736

71

3,098

4.281

2,485

9/24.

2,863

71.5

3,434

4.433

2,556

9/30.

3,336

68.1

3,417

4.496

2,610

10/10.

3,301

75.85

3,374

4.385

2,591

10/21.

3,268

70

3,239

4.323

2,599

10/31.

3,279

69.26

3,253

4.313

2,625

1111

3,470

68.76

3,238

4.254

2,599

11月11日、中国人民銀行(中央銀行)が発表した10月の新規人民元建て融資は5000億元(695億1000万ドル)と、前月から大幅に減少し市場予想を下回った。
景気刺激策は信用需要を押し上げるには至らなかった。
先月(9月)は1兆5900億元、前年同月(前年10月)の7384億元だった。
経済不振で収益性が低くなっているため、企業の資金調達需要は依然として弱くなっている。中央銀行の最近の政策措置にもかかわらず、融資需要はすぐには回復しない可能性がある。ただ、10月は国慶節(1~7日)で長期の休日だった。

ロイター試算によると1~10月の新規融資は16兆5200億元だった。住宅ローンを含む新規家計融資は1600億元で9月の5000億元から▲3400億元の減少、企業融資は1兆4900億元から1300億元と▲1兆3600億元も減少した。
以上、

中国は米中貿易戦争の中、内需主導で経済回復をさせなければ、現在の状況から脱することは難しくなっている。
内需の不動産問題が生じているのは、習国家主席の金科玉条「共同富裕論」に基づく「三条紅線」政策の結果であり、誰もその琴線に触れることはない。
3期目で六奉行全員習派という独裁に突入した権力者の習氏は、逆立ちしても経済原理・道理を理解できるような人ではない。それでいて六奉行らは習氏の顔色ばかり見て、政策が後手後手となっている。
総合的に経済を回復させるとしても内需を牽引する消費に即効性ある対策が必要であるにもかかわらず、そうした対策は採られないまま経過し、若年失業率も高止まりしたままとなっている。

リーマンショックからの回復期の2010年より2023年の経済規模は約3倍となっており、チンタラ対策を講じても不景気に吸収されてしまい、MOAB大型爆風爆弾の「GBU-43B」のような即効性のある総合的な大型対策が急務となっている。

 

 


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