2025年、長らく続いてきた円安基調に変調の兆しが見え始めている。
ドナルド・トランプ氏の大統領再任によって米中間の貿易摩擦が再燃し、強硬な発言や通商政策への懸念が高まったことを背景に、安全資産とされる円が買われる展開となっている。
さらに、米国の利下げ観測や地政学リスクの後退も重なり、為替市場ではドル売り・円買いの動きが強まった。為替は1ドル=145円台から130円台へと、わずか数週間で急速に円高が進行している。
この「円安時代の終焉」は、日本経済に何をもたらすのか――。
景気全体への波及効果、そして業種ごとの明暗を読み解く。

内需回帰と消費の底上げに期待感
円高が進行すると、輸入物価の下落によって生活コストが抑制されるため、家計にはプラス材料となる。特に、エネルギーや食料品価格の落ち着きが期待され、「物価高」による消費の抑制傾向がやや緩和される可能性がある。
加えて、海外旅行の再活性化や、海外製品の購入意欲の回復など、個人消費面での好影響も見込まれる。
経済全体としては、消費主導の景気回復に弾みがつく構図も描ける。
打撃を受ける輸出産業、製造業の岐路
一方で、急速な円高は輸出企業にとっては逆風となる。特に、自動車や電子部品など「価格競争力」に大きく依存する業種では、為替差益の縮小や販売の鈍化が業績を直撃する恐れがある。
中堅・中小の製造業では、「想定レートとの差」が利益を大きく揺るがすリスクがあり、2024~25年にかけて円安を前提とした設備投資や海外展開を進めてきた企業ほど、見直しを迫られる局面となる。
インバウンド需要の一服も
円高は、訪日外国人旅行者(インバウンド)にとっての「割安感」を薄める結果となる。これまで爆発的な需要を生んでいた百貨店・ドラッグストア・ホテル業界などでは、訪日客数の減少や単価の鈍化が懸念されており、地方経済や観光地への影響も見逃せない。
為替安定がカギ、政策対応に注目
円高・円安いずれの方向でも、「急変」は企業にとってリスクとなる。今回のフェーズ転換は、企業に為替リスク管理の再構築を求めると同時に、金融政策や財政対応の適時性も問われる局面となる。
日銀は既に出口戦略を模索しており、円高トレンドが本格化すれば、物価目標の柔軟な再定義や緩和縮小のタイミングが議論を呼ぶことになりそうだ。
円高は国富の象徴か、それとも企業の重荷か。
その答えは、経済構造と政策対応、そして企業の対応力にかかっている。
