中東リスク未織り込み、V字回復に死角も
帝人が発表した2025年度連結決算は、最終的な儲けを示す純損益が880億円の赤字(前年度も赤字)に転落した。世界的なインフレや競争激化を背景に、かつての稼ぎ頭だった素材(マテリアル)事業の採算が極度に悪化したことが響いた。同社は不採算事業の減損処理を進めるなど「膿(うみ)出し」を急ぎ、2026年度は一転して450億円の黒字転換を見込む。しかし、足元で緊迫化する中東情勢に伴う原燃料高などのリスクは業績予想に織り込んでおらず、復活への道筋には不透明感も漂う。
帝人、純損失880億円の衝撃 素材不振で「膿出し」急ぐ中東リスク未織り込み、V字回復に死角も
帝人が発表した2025年度連結決算は、最終的な儲けを示す純損益が880億円の赤字(前年度も赤字)に転落した。世界的なインフレや競争激化を背景に、かつての稼ぎ頭だった素材(マテリアル)事業の採算が極度に悪化したことが響いた。同社は不採算事業の減損処理を進めるなど「膿(うみ)出し」を急ぎ、2026年度は一転して450億円の黒字転換を見込む。しかし、足元で緊迫化する中東情勢に伴う原燃料高などのリスクは業績予想に織り込んでおらず、復活への道筋には不透明感も漂う。
■ 主力事業が機能不全に
「マテリアルセグメントの事業利益は1億円(前年度比98%減)となった」
オンラインで開かれた記者会見で、経理・財務管掌の嶋井正典執行役員は厳しい表情で説明した。売上高も前年度比13.2%減の8732億円へと落ち込んだ。
大赤字の主因は、全方位で逆風に晒された素材事業にある。欧州の自動車市場の回復遅れや防弾用途のプロジェクト遅延が響いたアラミド繊維、航空機向けサプライチェーン(供給網)の制約が続いた炭素繊維、中国景気の低迷に直面した樹脂事業など、主要部門が軒並み苦戦を強いられた。
同社は反転攻勢に向け、2025年7月に北米の複合成形材料事業の譲渡を完了させたほか、炭素繊維の米国工場を一時休止するなど、抜本的なコスト構造改革を断行した。今回の巨額赤字には、将来の減価償却費負担を軽減させるための「前向きな減損処理」という側面もある。
■ 組織刷新と経営統合
2026年度について、同社は純損益450億円の黒字に急回復する見通しを掲げる。その起爆剤として期待されるのが、組織の縦割り打破と他社とのアライアンス(提携)だ。
2026年度からは、従来の素材別の枠組みを解体し、「エレクトロニクス&エナジー」や「スペシャリティマテリアルズ」など、顧客の用途に合わせた4つのセグメントに刷新。市場の需要変動に即応できる体制へと移行する。
さらに繊維・製品分野では、2026年10月に旭化成アドバンスとの経営統合を予定しており、新会社「TAフロンティア」の発足を控える。帝人の高機能繊維の開発力と、旭化成側のグローバルな販売網を融合させることで、下期以降の段階的なシナジー(相乗効果)発現を狙う構えだ。
■ 漂う「地政学リスク」
もっとも、同社が描くV字回復のシナリオには大きな死角が存在する。ホルムズ海峡の封鎖長期化など、緊迫化が続く中東情勢に伴う原燃料価格の高騰や物流混乱の影響が、現時点の業績予想に「一切織り込まれていない」点だ。
化学・素材大手にとって、原油やナフサ価格の上昇は製造コストの直撃を意味する。同社は「合理化で吸収しきれない分は販売価格へ転嫁する」との方針を示すが、世界的なインフレ再燃で欧米や中国の自動車・航空機メーカーなどの需要が一段と冷え込めば、価格転嫁が通らずに利ざやが縮小する恐れがある。不確実性に備えた在庫確保の動きがキャッシュフローを圧迫する懸念もあり、新体制への移行期に地政学リスクをいかに制御できるかが、今後の最大の課題となりそうだ。