アイコン ダイドー、過去最大赤字 自販機モデルが転換点に


ダイドーグループホールディングス(以下、ダイドー)が過去最大の赤字に転落したことが明らかとなった。今回の業績悪化は単なる一企業の不振ではなく、日本の飲料業界を長年支えてきた「自動販売機ビジネス」が大きな転換点に差しかかっていることを示している。物価高や消費行動の変化により、自販機中心のビジネスモデルが厳しい局面に直面している。

まず、今回の赤字の大きな要因となったのが、ダイドーの自販機依存型の事業構造だ。ダイドーは売上の約9割を自販機チャネルに依存しており、スーパーやドラッグストアなどの小売販売が強い他の大手飲料メーカーとは構造が大きく異なる。近年は物価上昇の影響で、自販機の飲料価格が160円から180円程度に上昇する一方、スーパーでは100円前後で購入できる商品も多い。この価格差が消費者の節約志向と重なり、「自販機離れ」が進んでいる。また、自販機は電気代や設置手数料、補充物流などの固定費が大きく、売上が落ちてもコストを削減しにくい点が収益を圧迫している。

 

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さらに、主力である缶コーヒー市場の競争環境も大きく変化した。コンビニ各社が展開するカウンターコーヒーは、自販機の缶コーヒーと同価格帯、あるいはそれ以下で淹れたてのコーヒーを提供しており、消費者の支持を集めている。また、飲み方の変化も影響している。従来のように缶コーヒーを短時間で飲み切るスタイルから、ペットボトルコーヒーを持ち歩きながら時間をかけて飲むスタイルが広がり、缶商品中心のイメージが強い自販機との相性が弱まっている。

この動きはダイドーだけの問題ではない。飲料業界では近年、自販機事業に関連する減損損失を計上する企業が相次いでいる。コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスは約904億円、ダイドーグループHDは約298億円、伊藤園は約137億円の減損損失を計上した。いずれも自販機事業の将来収益の見直しが主因とされ、業界全体で「自販機はもはや成長資産ではない」という認識が広がりつつある。

こうした状況を受け、ダイドーは自販機約2万台の撤去を決定した。これは保有台数の約7%に相当し、量を追う戦略から収益性重視へと転換する象徴的な施策となる。今後はAIを活用して設置場所の収益性を分析し、売れる場所に集中させることで1台あたりの収益改善を図る考えだ。また、災害時の飲料提供や傘レンタルなどのサービス、自販機限定商品の投入など、自販機ならではの付加価値をどこまで高められるかも課題となる。

さらに、飲料以外の事業拡大も重要なテーマとなる。ダイドーは医薬品の受託製造など非飲料分野も手がけており、今後はこうした事業が収益の柱となる可能性もある。飲料一本足の経営から脱却できるかどうかが、業績回復のカギを握りそうだ。

かつて自販機は「街のオアシス」と呼ばれ、日本の都市景観の象徴でもあった。しかし現在では、コンビニやスーパーとの価格差から「最も高い小売店」と見られることも少なくない。ダイドーが不採算自販機を整理した後、どのような新しい自販機の姿を示すのか。日本の飲料ビジネスの行方を占う試金石となりそうだ。

ダイドー

 

[ 2026年3月 5日 ]
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