全国各地で路線バスの減便や廃止が相次いでいる。背景にあるのは、利用者減少だけではない。各バス会社が繰り返し挙げているのが「運転士不足」である。
仙台市では宮城交通が2027年4月から4路線を廃止する方針を発表。長崎市でも長崎バスが相次いで減便を実施しているほか、札幌、東京、岐阜、京都、広島、熊本など全国各地で同様の動きが広がっている。
国土交通省の推計では、このままでは2030年にバス運転手が3万6000人不足する見通し。人口減少が進む地方だけでなく、大都市圏でも「バスはあるが、運転する人がいない」という新たな交通問題が表面化している。
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全国のバス運転手 |
2021年:約11万6000人 |
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2030年推計 |
約9万3000人 |
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2030年の必要人員 |
約12万9000人 |
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不足見込み |
約3万6000人(必要数の28%) |
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路線廃止 |
2008~2023年度で全国約2万3193km |
全国各地で路線バスの減便や廃止が相次いでいる。背景にあるのは、利用者減少だけではない。各バス会社が繰り返し挙げているのが「運転士不足」である。
仙台市では宮城交通が2027年4月から4路線を廃止する方針を発表。長崎市でも長崎バスが相次いで減便を実施しているほか、札幌、東京、岐阜、京都、広島、熊本など全国各地で同様の動きが広がっている。
国土交通省の推計では、このままでは2030年にバス運転手が3万6000人不足する見通し。人口減少が進む地方だけでなく、大都市圏でも「バスはあるが、運転する人がいない」という新たな交通問題が表面化している。
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全国のバス運転手 |
2021年:約11万6000人 |
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2030年推計 |
約9万3000人 |
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2030年の必要人員 |
約12万9000人 |
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不足見込み |
約3万6000人(必要数の28%) |
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路線廃止 |
2008~2023年度で全国約2万3193km |
2030年にはバス運転士が3万6000人不足
国土交通省によると、全国のバス運転手は2021年時点の約11万6000人から減少を続け、2030年には約9万3000人になると推計されている。
一方、2022年と同程度の輸送規模を維持し、時間外労働規制などにも対応するには約12万9000人が必要とされ、約3万6000人、必要人員の28%が不足する計算になる。
すでに影響は現実のものとなっている。国交省によると、2023年には調査対象となった路線バス会社の約8割が減便または廃止を実施。2008年度から2023年度までに廃止されたバス路線は、全国で約2万3193kmに上る。
札幌では6路線を廃止 北海道中央バス
北海道でも路線縮小が続く。北海道中央バスは2026年4月のダイヤ改正で、人手不足と利用状況を踏まえ、6路線を廃止した。
対象には札幌市内の西岡美園線、本町線、北光線、ひまわり団地線のほか、北広島市内を走る「さんぽまち・東部線」、札幌と石狩市厚田地区を結ぶ厚田線が含まれる。
さらに5系統を廃止したほか、平日26路線31系統、土曜18路線22系統、日曜・祝日18路線22系統で運行回数を見直した。
東京でも「乗務員不足」で減便
運転士不足は人口の多い首都圏でも例外ではない。
東京都内を走る関東バスは2026年8月17日から、乗務員不足を理由に荻窪駅、西荻窪駅、吉祥寺駅、武蔵関駅などを結ぶ複数系統で、平日の減便ダイヤを実施している。
東京都も路線バスの減便や廃止の大きな要因の一つとして運転士不足を挙げており、2026年度には若手・中堅運転士の定着を支援するため、対象者1人当たり月額1万円の手当を支給する事業者への補助制度を開始した。
仙台は4路線を廃止 デマンド交通への転換も
宮城交通は2027年4月1日から、運転士不足への対応として仙台圏で4路線を廃止する。
対象は、仙台駅前と泉中央駅を結ぶ「泉桜ヶ丘線」、長町駅などと茂庭台を結ぶ「茂庭台線」、「南富谷サニータウン線」、「太白八木山線」。
日本平線、西の平線では経路変更と一部区間の廃止を実施。松陵ニュータウン線、鶴が丘ニュータウン線では仙台駅前への乗り入れを取りやめ、地下鉄泉中央駅発着へ一本化する。
さらに2027年秋以降には、長町地区を走る「ながまちくん」と長町富田線を統合し、事前予約などに応じて運行するデマンド型交通へ転換する計画である。
岐阜でも多くの路線を減便
中部地方でも運転士不足への対応が続く。
岐阜バスは2025年4月のダイヤ改正で、「運転士不足への対応」を理由として、多くの路線で減便を実施した。
岐阜市も、運転士の高齢化や成り手不足によって減便・路線廃止が行われているとして、バス事業者の運転士採用を支援する制度を導入している。
京都では長距離路線を廃止
京都バスは2026年3月15日付で、京都市の出町柳駅前から滋賀県高島市の朽木学校前までを結んでいた「10系統」を廃止した。
同社は廃止理由として「深刻な運転士不足」を明示している。
一方、京都市営バスでは、2024年に「市バス運転士不足 非常事態宣言」を出した後、処遇改善や採用活動を進め、2026年には毎日の運行に必要な人員を確保できるまで改善したとしている。運転士の待遇改善と採用強化で、状況を立て直す事例も出始めている。
広島県では主要13社で80人超が不足
広島県は2026年7月、県内の主要バス事業者13社で80人余りの運転士が不足していることを明らかにした。
広島バスでも慢性的な運転者不足を理由として、2025年5月から一部路線で便を運休している。
観光需要が増える広島では、路線バスだけでなく貸切バスでも供給不足が懸念されており、「住民の足」と「観光客の移動」を限られた運転士でどう支えるかが課題となっている。
長崎は平日41便減 その後もさらに減便
長崎でも影響は身近なものとなっている。
長崎バスは2026年1月末から、慢性的かつ深刻な運転士不足により従来の運行便数を維持できないとして、平日41便を減便。土曜日についても日曜・祝日ダイヤで運行する措置を取った。
さらに同年4月の春ダイヤ改正でも、深刻な運転士不足への対応を主な目的として各路線を減便。長崎県営バスとの共同運行だった「まちなか周遊バス」も3月末で終了した。
2025年のダイヤ改正でも、通勤・通学需要が集中する朝夕の便数をできるだけ維持する一方、利用者の比較的少ない9~15時台を減便しており、昼間の移動手段は徐々に細くなっている。
熊本では循環バスがほぼ半減
熊本県でも九州産交バスグループが運転士不足への対応を進めている。
玉名市街地循環バスでは2026年5月から、深刻な乗務員不足を理由に減便。右回りは1日11便から6便、左回りも平日11便から5便へと大幅に減らしている。
九州産交バスは同年3月から、高速・特急バスについても深刻な運転士不足などを理由に一部便を運休しており、路線バスと都市間輸送の双方で運転士確保が課題となっている。
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地域 |
主な動き |
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北海道 |
北海道中央バスが2026年4月に6路線・5系統を廃止 |
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宮城 |
宮城交通が2027年4月に仙台圏4路線を廃止予定 |
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東京 |
関東バスが2026年8月から複数系統を減便 |
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岐阜 |
岐阜バスが運転士不足対応で多くの路線を減便 |
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京都 |
京都バスが深刻な運転士不足で10系統を廃止 |
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広島 |
県内主要13社で運転士80人余りが不足 |
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長崎 |
2026年1月に平日41便減、4月にも各路線を減便 |
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熊本 |
玉名市街地循環バスを11便から5~6便へ減便 |
「利用者が少ないから廃止」だけではなくなった
かつて地方のバス路線廃止は、人口減少やマイカー普及による赤字が主な理由とされてきた。
しかし現在は状況が変わっている。利用者や車両が存在しても、運転士を確保できず、必要な便数を運行できないケースが増えている。
2024年4月からは自動車運転業務にも時間外労働の上限規制が適用され、運転士一人に長時間勤務を頼る従来型の運行体制も難しくなった。
根本にあるのは、運転士の高齢化と若年層の不足である。長時間・不規則な勤務に加え、賃金水準など労働条件の改善も求められており、各社は賃上げ、大型二種免許取得支援、定年延長、外国人人材の採用などを進めている。
高齢化する地域ほどバスが必要なのに、バスは減る
問題は、バスを必要とする人が今後減るとは限らないことである。
高齢化が進めば、自動車運転免許を返納する住民は増える。病院やスーパー、学校などの統廃合が進めば、日常生活で移動しなければならない距離はむしろ長くなる可能性がある。
ところが、それを支えるバスの運転士は減少していく。
特に鉄道網が限定され、坂の多い住宅地が広がる長崎市のような地域では、バスの減便は単なる「待ち時間の増加」にとどまらない。通院、買い物、通学など日常生活そのものに影響する生活インフラの問題となる。
路線バスからデマンド交通へ 地域交通は転換期
国も「交通空白」の拡大を重大な問題として捉えている。国土交通省は2025~2027年度を「交通空白解消・集中対策期間」と位置付け、自治体による地域公共交通の再構築を支援している。
今後は、従来の大型バスを決まった時刻に走らせる方式だけでなく、小型車両、デマンド交通、乗合タクシー、自動運転などを組み合わせる地域が増えるとみられる。
宮城交通が長町地区で計画するデマンド型への転換は、その一例である。
全国で相次ぐ路線バスの減便と廃止は、一時的なダイヤ調整ではない。2030年に運転士が3万6000人不足するとの推計が現実になれば、今後さらに多くの地域で「今まで走っていたバスが走らなくなる」可能性がある。
地域の足を誰が、どのような形で支えるのか。日本の公共交通は、大きな転換点を迎えている。