最低賃金1177円、中小企業向け支援策を政府公表 補助金・価格転嫁・省力化を支援
2026年度の地域別最低賃金について、47都道府県すべての答申が出そろい、全国加重平均は1,177円となった。前年度の1,121円から56円の引き上げで、引き上げ幅は最低賃金の目安制度が始まって以降で過去2番目の大きさとなる。
最低賃金の大幅な引き上げを受け、中小企業庁は9月4日、中小企業・小規模事業者向けの包括的な支援策を公表した。価格転嫁の強化や補助金、税制、省力化・デジタル化支援などを通じ、賃上げによる企業側の負担増に対応する。
| 2026年度最低賃金 | 全国加重平均1,177円 |
|---|---|
| 前年度 | 1,121円 |
| 引き上げ額 | 56円 |
| 都道府県別の最低賃金 | 1,085円~1,280円 |
| 発効予定 | 2026年10月1日~12月2日に各地で順次 |
最低賃金の全国平均は1177円、56円上昇
厚生労働省によると、2026年度の地域別最低賃金は47都道府県で54円から65円引き上げられる答申となった。
改定後の全国加重平均は1,177円で、前年度から56円上昇。引き上げ額としては制度開始以降で過去2番目の大きさとなる。
都道府県別では最高額が1,280円、最低額が1,085円。各都道府県での手続きを経たうえで、10月1日から12月2日にかけて順次、新しい最低賃金が適用される予定となっている。
なお、「最低賃金1,177円」は全国一律の金額ではなく、各都道府県の最低賃金を労働者数などで加重平均した数字となる。
中小企業庁が最低賃金引き上げへの支援策を公表
人件費負担の増加が見込まれるなか、中小企業庁は9月4日、最低賃金引き上げに対応する中小企業・小規模事業者向けの支援策を公表した。
政府は「稼ぐ力」の強化と賃上げの好循環を目指し、価格転嫁・取引適正化、補助金・税制、生産性向上、省力化・デジタル化などを組み合わせて支援する。
価格転嫁を強化、人件費上昇分を取引価格へ
政府が重点を置くのが価格転嫁と取引適正化だ。
2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)や中小受託取引振興法を活用し、発注企業と受注企業の取引適正化を進める。
さらに、官公需や取適法の対象とならない民間取引も含め、人件費や原材料費などの上昇分を取引価格へ反映しやすい環境づくりを強化する方針。
最低賃金が上昇しても販売価格や受注単価を引き上げられなければ、人件費の増加分を中小企業側が吸収することになる。特に下請け企業や価格決定力の弱い事業者にとって、価格転嫁ができるかどうかは収益を左右することになる。
持続化補助金や賃上げ促進税制を活用
予算・税制面では、最低賃金引き上げの影響を受ける中小企業や小規模事業者に対し、小規模事業者持続化補助金などによる販路開拓支援を進める。
このほか、中小企業向けの賃上げ促進税制や生産性向上関連の支援制度も活用する。
各種補助金では、最低賃金引き上げを含む賃上げに取り組む中小企業について、補助上限額の引き上げや審査上の加点措置を引き続き実施する。
省力化投資補助金やAI導入も支援
人件費上昇と同時に深刻化している人手不足への対応として、政府は省力化投資も後押しする。
省力化投資補助金やデジタル化・AI導入補助金などを活用し、少ない人員でも事業を維持できる設備やシステムの導入を支援する。
飲食店でのセルフレジや注文システム、小売店の在庫管理システム、製造業での自動化設備など、従業員の作業負担を減らしながら生産性を高める投資が対象となり得る。
業務改善助成金、9月1日から受付開始
厚生労働省では、最低賃金引き上げに対応する中小企業向け制度として「業務改善助成金」の2026年度申請受付を9月1日から開始している。
同制度は、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げるとともに、生産性向上につながる設備や機械などへ投資した中小企業・小規模事業者に対し、その費用の一部を助成するもの。
申請期限は、原則として各都道府県で新しい地域別最低賃金が発効する前日、または11月30日のいずれか早い日となっている。
商工会など通じ100万件の相談・伴走支援へ
補助金だけでなく、企業への直接的な相談支援も強化する。
中小企業庁は自治体や支援機関、商工会、商工会議所などと連携し、賃上げや生産性向上を進める企業へのプッシュ型支援を実施。今年度末までに100万件の伴走支援・相談対応を目指すとしている。
飲食・小売・建設・サービス業で人件費負担増
今回の最低賃金引き上げは、パートやアルバイトを多く雇用する飲食、小売、宿泊、サービス業だけでなく、建設、運輸、製造など幅広い業種に影響する。
最低賃金の上昇は労働者の所得改善につながる一方、中小企業側では人件費という固定費の増加につながる。
特に原材料費、電気料金、物流費などの上昇が続くなか、十分な価格転嫁ができていない企業では収益をさらに圧迫する可能性がある。
補助金や助成金、省力化投資だけでなく、人件費上昇分を販売価格や取引価格へ転嫁できるかが、今後の中小企業経営にとって大きな課題となりそうだ。





