アイコン 【広島】奨学金返済支援243社、9カ月で19%増 製造・建設108社、若手獲得競争が導入を後押し

広島県内で、従業員の奨学金返済を支援する企業・団体が増えている。県の「奨学金返済支援制度導入企業データバンク」は、2026年9月28日時点で243社・団体となった。

2025年12月末時点では204社だったため、約9カ月で39社増え、増加率は19.1%となる。企業が従業員に返済手当を支給したり、日本学生支援機構などへの代理返還を行ったりする制度で、県は2018年度から登録制度と中小企業などへの補助を進めている。

製造60社、建設48社 2業種で全体の44%

県が公表している243社・団体を業種別に集計すると、最も多いのは製造業の60社で、全体の24.7%。建設業が48社、19.8%で続く。製造と建設だけで108社となり、全体の44.4%を占めた。

このほか、卸売・小売25社、学術研究・専門・技術サービス20社、医療・福祉18社、教育・学習支援17社、運輸14社などとなっている。製造、建設、運輸、医療・福祉の4分野を合わせると140社で、全体の57.6%に達する。

 



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業種 登録数 構成比
製造 60社 24.7%
建設 48社 19.8%
卸売・小売 25社 10.3%
学術研究・専門・技術サービス 20社 8.2%
医療・福祉 18社 7.4%
教育・学習支援 17社 7.0%
運輸 14社 5.8%
その他サービス 11社 4.5%
生活関連サービス・娯楽 10社 4.1%
情報通信 8社 3.3%
金融・保険 4社 1.6%
不動産・物品賃貸 3社 1.2%
宿泊・飲食サービス 3社 1.2%
農業・林業 1社 0.4%
複合サービス 1社 0.4%

導入の後押しは「若手獲得競争」68%

制度が広がる背景は、企業側への調査にも表れている。広島県が2025年10月、当時のデータバンク登録企業200社を対象に行ったアンケートでは、97社が回答した。

制度導入に踏み切った要因では、「若手従業員の獲得競争の激化」が68.0%で最も多く、「賃金以外の待遇改善の必要性」が53.6%、「若手従業員の定着率の低下・低迷」が40.2%と続いた。

制度を導入した目的でも51.5%が「従業員の採用を有利に進めるため」と回答している。奨学金返済支援は、従業員の負担軽減だけでなく、採用市場で自社を選んでもらうための待遇策として位置付けられていることが分かる。

採用への期待は8割超、実感は定着面が先行

企業が制度に期待する効果では、「採用応募者の増加」が83.5%、「採用に関する問い合わせの増加」が81.4%、「説明会・見学会等の来場者の増加」が79.4%となった。「離職者の減少」も80.4%に上る。

一方、実際に感じている効果では、「従業員のモチベーションの向上」が39.2%、「会社への所属意識の向上」が26.8%だった。県も、現段階では採用や企業イメージ向上より、従業員の定着につながる効果の実感が比較的高いと分析している。

制度を利用する従業員182人への調査でも、53.3%が勤務先からの支援によって奨学金返済の「負担が軽くなった」と回答。59.9%は制度について「重要度はかなり高い」とした。

また、68.7%が「従業員を大切にする会社だと感じている」、54.7%が「この会社に就職して良かったと思う一つになった」と回答している。就職活動への影響についても、94.1%が企業選びに何らかの影響を及ぼすと答えた。

県も企業負担の最大4分の3を補助

広島県は2026年度も「Go!ひろしま奨学金返済支援制度導入企業応援補助金」を実施している。県内に本社や本店などを置く中小企業等が制度に基づいて従業員へ支給した手当などについて、一般企業枠では3分の2以内、人的資本開示企業枠では4分の3以内を補助する。

2025年度の制度改正で従業員1人当たりの補助上限額は撤廃された。県の補助対象となる場合は、2026年3月1日以降に採用され、採用から1年を経過していない県内勤務の従業員など一定の要件があり、企業への補助は最長3か年度となる。

なお、データバンクへの登録と県補助金の対象は同一ではない。企業規模や従業員要件などで補助対象にならない企業でもデータバンクへの登録は可能で、243社・団体という数字は補助金の交付企業数を示すものではない。

新卒だけでなく中途採用にも広がる

奨学金返済支援は大卒新卒だけを対象とした制度ではない。県のデータバンクには、専門学校卒や中途採用者まで対象とする企業も多数登録されており、支援額や支援期間も各社で異なる。

県の補助制度も、日本学生支援機構の大学・大学院・専門学校向け奨学金だけでなく、高校生向けの自治体奨学金や各種団体の修学資金など幅広い制度を対象としている。

若手人材の獲得競争が強まる中、初任給や基本給だけではなく、奨学金返済、住宅、休暇、資格取得など「給与以外の待遇」を採用条件として示す企業は今後も注目されそうだ。広島県では、奨学金返済支援が採用だけでなく、入社後の定着や会社への所属意識にもつながるかが次の焦点となる。

 

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