【兵庫】分収造林が事実上破綻 662億円の債権放棄へ 高度成長モデルの限界露呈
兵庫県が進めてきた「分収造林事業」が事実上破綻し、県は約662億円の債権を放棄する方針を固めた。県議会定例会に関連議案を提出する。長年にわたり投入してきた公的資金の大半が回収不能となる異例の判断で、日本の林業政策が抱えてきた構造的問題が改めて浮き彫りになった。

■ 高度成長期の前提が崩壊
分収造林は昭和30年代以降、全国で推進された。土地所有者が山林を提供し、県の外郭団体「ひょうご農林機構」が資金を借り入れてスギやヒノキを植栽。将来の木材販売益を分け合う仕組みだ。山の荒廃防止や水源涵養など、多面的機能の確保も狙いだった。
しかし、昭和55年前後をピークに国産材価格は下落。輸入材の増加で市場環境は一変した。育成に40~50年を要する間に借入金の利息が膨張し、「販売収入が借金と利息を下回る」逆ザヤが確定。機構は700億円超と全国最大規模の負債を抱えるに至った。
■ なぜ兵庫が最大規模に
兵庫県は森林面積が広く、奥山まで事業を拡大してきた。森林保全の観点から事業継続を優先し、抜本的な見直しが遅れたことも負債拡大の一因とされる。価格回復への期待が外れ、結果的に巨額の整理を迫られた。
■ 債権放棄の意味
今回の662億円は、県が機構に貸し付けていた資金の返済を免除するものだ。事実上の公費損失となるが、機構を再建し山林管理を継続するための「負債整理」との位置づけだ。放置すれば管理不全による土砂災害リスクの増大も懸念される。
■ 山は残る、課題は続く
債務は整理できても、森林の維持管理コストは今後も発生する。担い手不足や採算性の低さといった林業の構造問題は解消されていない。分収造林は、かつての右肩上がりを前提にした長期投資モデルが、価格下落という外部環境の変化に耐えられなかった典型例といえる。
今回の決断は兵庫県にとどまらず、同様の事業を抱える他自治体にも影響を与える可能性がある。林業を「収益事業」として再建するのか、それとも「環境インフラ」として公費で支えるのか。政策の転換が問われている。





