アイコン ザ・トーカイの耐震強度不足マンション判決 静岡市にも賠償命令/静岡地裁

 静岡地裁は12月7日、静岡市駿河区の分譲マンションを建築後に耐震 強度不足に気づき取り壊した建築主のザ・トーカイ(現、TOKAIホールディングス:東証一部の子会社、本社:静岡市)が、三井住友建設(株)(施 工)、静岡市(建築確認)、(株)サン設計事務所(建築設計)、(有)月岡彰構造研究所(構造計算)など関係者を相手取って起こした裁判で、設計会社や構 造計算会社(=設計会社)及び建築確認した静岡市に対し「強度不足を見落とした」などとして、約10億円の賠償を求めた訴訟の判決を次の通り言い渡した。
被告の設計会社2社は原告に対して約9億6千万円を支払え、静岡市は、このうち約6億7千万円について連帯して支払え。
裁判長は、静岡市の責任について「容易にできる数値の確認を怠った」と過失を指摘した。

当裁判は、ザ・トーカイを事業主とした分譲マンション、平成14年に、設計2社が行った設計で、耐震強度が基準を満たしているとの誤った構造計算書を静岡市に提出、市は建築確認審査でその誤りを見落とし、当分譲マンションは同15年に完成して販売された。

静岡市が、耐震強度偽装事件(平成17年11月=姉歯事件)を機に、当分譲マンションの審査書類を見直した結果、強度不足が発覚。市は当該の分譲マンションに対して平成19年3月7日付で、耐震強度不足についての是正指導を行った。

事業主のザ・トーカイは、外部だけの補強では基準に達せず、部屋内を補強する必要があり、分譲時の約定とも大きく異なるものとなることから、購入者と協議を重ね、同社が購入者から全戸を買い取り、解体することで購入者との問題を収束させた。

ザ・トーカイは、平成19年12月25日、耐震不足の分譲マンションを建てた責任は、三井住友建設(株)(施工)、(株)サン設計事務所(建築設計)、(有)月岡彰構造研究所(構造計算)、静岡市(建築確認)他の関係者にあると判断し、上記4社などを相手取り、同社が被った約10億円の損害賠償請求訴訟を静岡地方裁判所に提訴していた。

 当判決で静岡市側は、耐震強度不足は「建築主の責任」として請求棄却を求めていた。田辺信宏静岡市長は「控訴に向け検討する」と文書でコメントしていると報道されている。

当該分譲マンションの総販売価格は9億97百万円。事業主のザ・トーカイは、建築工事代金のほか、当然解体費用なども請求していた。

当判決では、当然ながら同社の勝訴となったが、当判決は地裁段階であり、今後控訴の問題が残る。ただ、判決では、施工の三井住友建設が除外されており、また、静岡市は、連帯責任として6億7千万円の支払を命じられたが、静岡市は「建築主の責任」とまで言い切り逃げようと控訴する予定である。
例え、静岡市が地裁判決を受け入れ支払ったとしても、設計会社2社に、その差額2億9千万円すら支払能力があるかどうかは不明である。既に設計会社の1社は倒産しており、その責任を破綻した設計会社の元役員にしたところで支払能力があるのか?更にもう1社の設計会社に支払能力があるのか? ザ・トーカイにとって、相手方が自己破産したら、手の打ちようもなくなる。

同社は、このまま静岡市に逃げられたら(高裁判決次第)、泣き寝入りする可能性すら出てくる。やはり、一級建築士である建築施工会社へも瑕疵責任を問うべきではないだろうか?

今後、こうした建築物の瑕疵問題は、住宅・分譲マンションだけではなく、設計士の罰則規定とともに、いろいろな建物についても保証される保険制度などのシステムが必要なのではないだろうか。
 

[ 2012年12月10日 ]
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