アイコン 御嶽山の爆発  また想定外で済ますのか/観測データまとめ

31人が心配停止(4人死亡確認)という大惨事となった(2014年9月)27日木曽の御嶽山の爆発につ いて、火山噴火予知連絡会の会長(東大、気象庁長官の私的諮問機関)は、あまりにも急で予知できなかったと発言している。その予知能力のなさを露見させた とともに、その難しさを現している。
気象庁によると爆発直前12分前に火山性微震があったというが、爆発の危機感などまったくなかったと見られる。
しかも、気象庁による入山規制は微塵も脳裏にはなかったようで、教科書どおりにいかなかったという今回の御岳山の爆発により、大勢の人命が失われたという事実だけが現実となっている。

御嶽山の爆発は、産業技術総合研究所(産総研)や岐阜県などの地質調査によると、溶岩を噴き出す本格的なマグマ噴火が最近1万年間で少なくとも4回(約1万年前以降、約1万年前、約9000年前、約5200年前、約5000年前)あったことが判明。水蒸気爆発はここ5千年の間に12回程度起きていると発表していた。
最近では、1979年に噴煙を約1千メートル噴き上げる爆発を起こしている。

<現況の観測体制>気象庁と名古屋大学が観測中であった
最近では、1979年水蒸気爆発が発生している。以降、断続的(1991年、2007年)に小規模な噴気活動が続いている。
気象庁により「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」に指定されていて、山頂周辺には火山活動の観測のための地震計、空振計、傾斜計、火山ガス検知器、GPS観測装置、監視カメラなどの観測機器が設置している。
2001年からは名古屋大学大学院環境学研究科も、「岐阜・長野両県における火山噴火警戒避難対策事業」として、噴火の前兆現象を観測する地震計による御岳火山災害観測を行っている。
御嶽山は1991年、1995年、2007年の小規模噴火している。
御嶽山の南面の木曽川水系王滝川の支流である赤川最上流部の地獄谷には火山ガスを噴出する噴気孔の存在が知られている。
火山爆発予知については、気象庁の本庁と管区気象台の全国4ヶ所に設置している「火山監視・情報センター」が、指定の47活火山について、24時間体制で監視している。(日本には海底火山など含め110活火山があるとされている)
  
<10日ころから再び火山性微震>オオカミ少年になっていた可能性

1993年から1997年ころまで小規模ながら火山性地震と噴火が繰り返し発生している。最近は小康状態が続き、落ち着いたものと見られていた。しかし、今回の噴火でわかったことだが、この間、ガス抜きされず、御岳山内部に爆発エネルギーが蓄積されていたことになる。
火山性地震は9月10日、11日と再び多くなったが、それでも100回未満、その後は火山性地震の発生はあるものの、多くは観測されていなかった。
今回の爆発について気象庁の担当課長は、御岳山で9月11日、1日80回を超える火山性地震があったのは小規模噴火があった2007年以来。活動は高まっているとの認識だったとしつつ、地殻変動などを示すデータに変化は無く、それ以降は、その地震回数も減っていたと説明。このため、庁内で検討した結果、警戒レベルは上げずに地元自治体との情報共有にとどめたとしている。

1990年代の爆発と地震
1991年4月、地震500回前後、同月爆発噴煙高さ400メートル
1993年4月、1700回超、同月爆発噴煙500メートル
同年5月、地震1200回超、同月爆発噴煙200メートル
1995年3月、地震300回超、2月爆発噴煙600メートル(1989年から最大だった)、爆発が先。
1999年2月、地震100回超、同月爆発噴煙300メートル
(1993年から199773年

<信濃毎日新聞掲載の9月の御嶽山の火山性地震の回数記録>

<1979年の爆発>
長らく死火山だと思われてきたが、1968年(昭和43年)から活発な噴気活動を始め、気象庁が活火山に認定した。しかし、定常的な観測体制の整備は行われず、明確な前兆現象が観測されないまま、1979年(昭和54年)10月28日に水蒸気爆発を起こし約1,000 mの高さまで噴煙を噴出した。5時頃に発生した噴火は14時に最大となりその後衰退し、噴出物の総量は約20数万トンで北東方向に噴煙が流れ軽井沢や前橋市まで降灰した。
御嶽山は、旧乗鞍火山帯にあり、飛騨山脈(岐阜県と長間権の県境)に沿った火山帯である。主な火山は北から、立山、焼岳、乗鞍岳、御嶽山など。

<噴火予知能力の向上が災いか>
噴火予知は、火山の噴火による被害を軽減するために、噴火の時期・場所・様式をあらかじめある程度予測すること。地震予知よりも予測がし易く、現在(2007年)ではかなりの高確率に予測を行うことが出来る。
火山の噴火は、地震と違い明らかな前兆現象が見られる。多くの火山では噴火の数ヶ月から数時間前に、震源の浅い火山性地震が発生し、噴火に向けてその発生回数が増えていき、低周波の火山性微動も発生する。また、火口付近が急激に隆起したり、火山の地下の電気抵抗が急減したり、地磁気が変化したりするなどの現象が見られることもある。
さらに、地下水の温度の上昇や、火山ガスの化学組成の変化が見られることもある。これらの現象が起こると火山活動も活発化していると判断されるが、噴火に至らずそのまま火山活動が低下していくこともある。
予知の成功例としては、2000年の有珠山の噴火が有名。
逆に、火山活動活発化が見られたのに噴火しなかった例として、1998年の岩手山の火山活動の活発化があげられる。
また、2000年の富士山では、火山性の低周波地震が頻発し、噴火の前兆ではないかとも一部で騒がれたが、その後沈静化していった。

火山大国の日本では、ハザードマップを作成し、マグマ被害の可能性の範囲地を指摘したり、GPSを利用して、火山の隆起沈降の度合いを調べたり、約30の活火山では、気象庁や大学などの研究機関が観測所を設けたりして連続観測を行っている。
もし、火山活動に異常が見られた場合には「火山現象による災害で防災上の注意喚起が必要」ということで、臨時火山情報が発表される。
さらに、噴火の危険が差し迫った場合には「火山現象による災害から人の生命及び身体を保護するために必要と判断される場合」ということで、緊急火山情報が発表される。
この情報が出されると、付近の住民は避難しなければならない。

このように様々な方策がとられているが、必ずしも、予知が成功する訳ではなく、予期せずあるいは予期した以上の噴火が発生したり、異常があっても噴火しないこともある。

御岳山は1979年の水蒸気爆発では、前兆が把握されていないとされ、その後、遡って爆発に至る前兆の動きを解明していたのだろうか。もしも、前兆の解明がなされていなかった場合、今回と同じように、上記のような教科書どおりの爆発ではなかった可能性がある。

<固定観念に捉われた専門家?>
木曽の御嶽山は、半月前から山頂付近での地震活動が活発化したが、ほかに噴火の前兆はなく、予知は困難だったと気象庁や専門家は説明する。(当然、予知は困難だったとしか言えないのだが・・・)
 御嶽山の噴火は、27日午前11時53分。気象庁が火山性微動を観測した12分後で、突然だった。
東日本大震災を誰が具体的に予知できたというのであろう。
 以前から、阿蘇に京都大学の地震測候所があるが、

科学技術・学術審議会/地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の推進について(建議)の概要(平成20年7月17日)
<抜粋>(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)

5.今後の展望
1、(地震予知・火山噴火予知の統合的研究)
(1)地震発生と火山噴火は,海洋プレートが日本列島下に沈み込む際に生じる地殻・上部マントルの構造不均質と力学的・化学的不安定が原因
(2)これら地震と火山噴火現象に共通な場を理解する統合的研究が必要

2、(地震予知研究)
(1)地震予知研究の目標は,地震現象を理解し,モデル化に基づく予測シミュレーションとモニタリングを総合化した「総合予測システム」を構築。「地震がいつ,どこで,どの程度の規模で発生するか」の定量的な予測
(2)現在の目標到達度は,プレート境界の大地震の場所と規模の予測については,一定の見通しが得られた段階。時期の予測に関しては,一般に長期予測の段階
(3)プレート境界地震については,予測シミュレーションモデルに観測データを取り込む(データ同化)研究が重要
(4)内陸地震については,予測シミュレーションモデル開発のための物理モデルの構築が必要
(5)海洋プレート(スラブ)内地震については,物理モデルの構築のために,プレートの沈み込みに伴って発生する諸過程の統一的な理解が必要

3、(火山噴火予知研究)
(1)火山噴火予知研究の目標は,観測データと噴火の物理化学モデルに基づき,噴火の時期,場所,規模,様式及び推移の予測
(2)現在の目標達成度は,適切な観測体制が取られた火山では,噴火時期をある程度予測できる段階。噴火の推移を予測することは現在も困難
(3)今後も火山監視観測網の強化及び火山噴火の可能性の高い地域におけるモニタリングの重点的な強化が必要
(4)火山活動の現状を評価し,予測される噴火の前兆現象や活動推移を網羅した噴火シナリオの作成が必要
(5)基礎研究の推進によって得られるモデルや噴火シナリオにモニタリング結果を統合し,火山活動の定量的評価を行う予測システムの構築が必要

(1)計画全体を組織的に推進する体制や評価する体制の一層の整備が必要
(2)地震・火山現象を理解し,発生を予測するためには,長期にわたる継続的な観測と研究が不可欠。それを実現する観測網の整備,若手研究者の養成・確保が必要
(3)大学の観測網については,基盤的観測網との調和を図りつつ,大学が担うべき観測研究への一層の重点化が必要
以上。

<地震・火山噴火予知研究計画データベース>
統一した火山研究所がなく、気象庁の「火山監視・情報センター」が核となり、大学の防災研究所が現場レベルで予知研究を行っている。学術面および防災予知面からは火山噴火予知連絡会があるが、国家レベルではなく、気象庁長官の諮問機関として存在している。当然、全体的な予算は限られたものとなっている。報道によると学術的な火山爆発予知研究に関し、大学の研究機関には年間6千万円しか予算が与えられていないという。同じく活火山大国であるイタリアの火山の研究機関に対して、財政規模が小さいにもかかわらず、6億円が研究費用として提供されているという。
国土地理院は日本の各地の動きに対して、全国1270ヶ所に電子基準点のGPSデータを設置し解析している。しかし、47ヶ所の活火山に対して、GPS機器にしても集中的に配置されているわけではない。


9月27日11時57分撮影の火砕流/中部地方整備局撮影


平成26年9月27日15:20-~17:30御嶽山を南西上空から撮影/中部地方整備局撮影

<御嶽山は今回の爆発によりレベル1から3に引き上げられた>
火山警戒情報を気象庁が、火山の周辺住民、観光客、登山者等のとるべき防災行動が一目で分かるキーワードとして、2007年(平成19年)12月1日から発表を開始し、現在30火山で発表している。

レベル
呼称
対応する警報等
火山活動の度合い
避難行動などの
目安
5
避難
噴火警報
居住地域に重大な被害をもたらす火山活動(噴火)が発生した、あるいはその恐れが高く切迫した状態にある。
危険な地域ではすべての住民が避難する。
4
避難準備
居住地域に重大な被害をもたらす火山活動(噴火)が発生すると予想され、その恐れが高まっている。
災害時要援護者は避難する。危険な地域ではほかの住民も避難の準備を行う。
3
入山規制
噴火警報
生命に危険を及ぼす火山活動(噴火)が発生し、居住地域の近くにも及んだ、あるいはその恐れがある。
状況に応じて、登山禁止や入山規制などが行われる。災害時要援護者の避難準備が行われる場合もある。
2
火口周辺規制
(火口周辺警報)
火口内や火口の周辺部で、生命に危険を及ぼす火山活動(噴火)が発生した、あるいはその恐れがある。
火口周辺は立ち入りが規制される。
1
平常
噴火予報
火山活動はほぼ静穏だが、火山灰を噴出するなど活動状態に変動があり、火口内では生命に危険が及ぶ可能性がある。
火口内では立ち入りの規制をする場合がある。
 
最後に、
日本の火山学者たちも、現実の火山の前には何の知識も力も及ばなかった。東日本大震災のように・・・・。
今回の御嶽山の爆発により、多くの犠牲者を出した背景には、気象庁はじめ、学者たちの過去の火山爆発事例からの判断により、入山警戒情報を出さなかったことも原因となる。
ならば、過去の爆発とその後の経過(1979以降の分)、および直近(9月初めから)の火山性微震の状況を、その事実だけでも登山者に対して周知する義務がなかったのだろうか。(こうしたデータは気象庁や名古屋大学などが所持している)
日本の活火山110箇所、重点47箇所については、別記事を参照のこと。
[ 2014年9月29日 ]
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