アイコン 超高層ビルも長周期振動で倒壊の恐れ 危惧される上町断層

現状の耐震化設備では、長周期振動を起こす地震に対しては、超高層ビルが倒壊するおそれがあるとNHKが次のとおり報道している。(NHK記事参照)

大林組が、大阪の直下で大地震が発生した場合、超高層ビルがどの程度の揺れに耐えられるかを解析した結果、長周期の大きな揺れで倒壊するおそれがあることが分かった。
大林組は、耐震性がより高い超高層ビルの設計の研究を進めることにしている。

<国の基準より3.2倍の揺れの強さ>
大林組は、大阪直下の活断層の上町断層で大地震が起きたときに、超高層ビルがどこまで耐えられるかを解析した。
鉄骨造り25階建て、高さ100メートルの、一般的なオフィスビルの設計データを使ってシミュレーションした結果、国が超高層ビルの設計の基準としている揺れの3.2倍の強さで、倒壊するおそれがあることが分かった。
この揺れは、国などが上町断層帯で行った調査で、発生するかもしれないとされる長周期の大きな揺れに相当する。

<シミュレーション>
シミュレーションによると、ビルは小刻みな揺れが始まってから3秒後に大きな揺れに襲われ、ビル全体が揺さぶられて高層階が低層階の動きについてこられなくなり、特に7階以下の低層階に負荷が集中する。
そして揺れ始めてから6秒後に、まず6階の「はり」が破断し、僅か13秒後、ビルの1階と最上階の25階が3メートル余りずれるように変形した時点で、低層階の柱や「はり」が次々と破断し倒壊した。

大林組では「今回初めて、どの程度の揺れで超高層ビルが倒れるのかが分かったので、今後、耐震性能を上げるためにこの研究結果を使いたい」と話している。

<上町断層帯と被害想定>
上町断層帯は大阪の中心部の直下にのびる、南北40キロ以上ある活断層。
国が7年前にまとめた想定では、最悪の場合、大阪市や堺市などの一部が震度7の激しい揺れに襲われ、木造住宅を中心に97万棟の建物が全壊または全焼し、死者は4万2000人に上るおそれがあるとしている。
ただ、当想定では、過去の大地震で倒壊していない超高層ビルについては、被害想定は行われていない。

<大阪では対策始まる>
最新免震構造の「大阪ひびきの街 ザ・サンクタスタワー」
超高層ビルを襲う可能性がある上町断層帯の地震の揺れに対応するため、大阪では大手建設会社や設計会社などが研究会を立ち上げ、独自の耐震基準を作る取り組みを進めている。
この研究会は、関西の65の企業で建物の構造を設計する構造技術者や京都大学の研究者など15人からなり、超高層ビルの耐震設計などの検討を行っている。

上町断層帯の大地震で、ごくまれに発生する長周期の大きな揺れに対応できるよう、近く、国の耐震基準より厳しい3種類の基準を作成し、ビルの建設に生かすことにしている。

先行して、この基準を使った超高層ビルも建設されていて、3月には、研究会に参加する大林組が、大阪・西区新町1丁目に建設した高さ180メートル、53階建の超高層マンション「大阪ひびきの街 ザ・サンクタスタワー/事業主:オリックス不動産・大京など5社」が完成予定。

このマンションは、ビルの中心となる場所を揺れに強い構造にしたうえで、長周期の大きな揺れで負荷が大きくかかる中低層の階に、96ヶ所、制震ダンパーと呼ばれる揺れを吸収する装置を設置している。
建築コストは通常より3%ほどかかるが、874戸がすでに完売御礼となっている。

大林組は「阪神・淡路大震災の教訓を生かして、想定される地震に対しては、安全な設計をするのが責務だと考えている」と話している。

全国の主要都市で超高層ビルやマンションが大流行の時世にありながら、こうした取り組みが行われているのは、大阪など一部にとどまるという。

<求められる国の基準超える揺れも想定した対策>
国交省によると、高さ60メートル以上の超高層ビルは全国に2500棟以上あるという。
超高層ビルが倒壊するという研究について、耐震構造に詳しい京都大学の林康裕教授は、阪神・淡路大震災で安全とされた建物や構造物が次々と倒壊したことを踏まえ、国の耐震基準を超える揺れに襲われることも想定した対策を進める必要があると指摘している。
林教授は「超高層ビルは、1棟でも倒壊すれば周りの建物を巻き込み、非常に大きな被害につながるので、今まで経験していないことが起こる可能性があると考えて対策をすることが重要だ」と話している。

<長周期地震動>
地震波に含まれる震動のうち、長周期の震動によって建物に大きな被害が出ることがある。長周期地震動は減衰しにくく、また長い周期での震動は、特に高層建築物の固有振動数と一致して、建造物を共振(または共鳴)させ急激に振幅が増大するため。
従来の地震への耐震性は、建造物の剛性の向上に偏りがちであり、一方の長周期地震動に対して設計段階での対策が不十分であった。しかし、近年長周期地震動による被害の研究が進み、地震に強いとされてきた既設の超高層ビルに対して今後破壊的ダメージをもたらされる懸念が出てきている。
このため最近の高層建築物においてはこれまでの制震構造や免震構造技術に加えて長周期地震動への対策がされ始めている。
建築物の固有振動数は、その材質や高さ、形状によって異なる。また共振により増大される振幅は、建築物の位置(高さなど)によっても異なってくる。
一般に、低層建築物・中層建築物などではほとんど揺れを感じないが、高層建築物などでは高い階に行けばいくほど揺れが強くなる。
マグニチュード8クラスの地震でのシミュレーションでは、30階建ビルの上層階は1周期だけで約10メートルほどまで大きく揺れる。逆に短周期の場合は、低層建築物に揺れが生じ、高層建築物に揺れが起きにくい結果が出ている。
長周期地震動の原因は、地下構造にあり、沖積平野や埋立地などの軟弱地盤で起こりやすいという。

<上町断層と地震>
大阪府北部の豊中市から大阪市内の上町台地の西の端を通り、大阪府南部の岸和田市にまで続く。長さは約40キロメートルになる。断層の東側が西側に乗り上げることで、千里丘陵や上町台地を形作っている。
一つの断層ではなく、大阪府北部の豊中市から吹田市までは佛念寺山断層と呼ばれる。その南の大阪市内の上町断層の本体を経て、さらに南の長居断層、大阪市を南にぬけて、和泉市や岸和田市にかけての坂本断層、久米田池断層と続く。このほかにも平行して、いくつかの派生した褶曲があり、すべてをあわせて上町断層帯とも呼ぶ。
警戒要の断層とされる上町断層の下層部は、吹田市の江坂や大阪市の都心部、天王寺公園の真下など、都市の重要な施設や人口密集地を通っており、地震が発生すると大きな被害が予測されている。
2007年3月、大阪府自然災害総合防災対策検討委員会が発表した報告では、被害が最も大きい場合でも死者は約1万1千人と想定している。
2007年11月、内閣府の中央防災会議の報告ではM7.6を想定し、被害が最も大きい場合、死者4万2千人、負傷者22万人、帰宅困難者200万人、全壊棟数97万棟、避難者550万人、経済への被害74兆円と想定している。

阪神・淡路大震災は、1995年(平成7年)1月17日05時46分52秒、淡路島北部沖の明石海峡(北緯34度35.9分、東経135度2.1分、深度約16km)を震源として、「M7.3」の直下型の兵庫県南部地震。
以上。
なお、被害が及ぶとされる日本での震度5強超の地震は、1997年3月26日から2014年11月22日までの約17年間で100回発生している。うちM7.0超の地震は12回(気象庁データ)を記録している。


ビル倒壊

[ 2015年1月19日 ]
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