テスラ「モデル3」の受注量 リチウム生産量追いつかず価格高騰
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年産50万台では世界のリチウム生産量を食い尽くすとされるテスラの快進撃
バッテリー駆動のクルマで自動車業界に変革をもたらしている米テスラ・モーターズが、今度は金属市場を変貌させようとしている。
テスラをはじめとする電気自動車(EV)メーカーによって今、リチウムが大量に消費されている。リチウムは軽金属の一種で、EVの原動力となるリチウムイオンバッテリーに使用されている。
調査会社ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスの入手可能な直近データによると、1-3月期(第1四半期)の炭酸リチウムの価格は2015年の平均価格と比べ.28%上昇していている。当然、テスラ・モーターズの大量受注によるものである。
<昨年9月から3倍>
炭 酸リチウムの市場価格は3月時点で、中国での2015年9月の1トン当たりの価格が5万元(約82万円)だったものが、1月には12万元(約198万元) まで暴騰。4、5月の先物取引では1トン当たり15万元(約247万円)になっていた。テスラ効果?でさらに上昇しているものと見られる。
中国の煙霧公害対策やレアメタル生産対策からEV開発や販売を強化させており、新エネルギー車の2015年の販売台数は、前年比4.4倍の33万1,092台(EV:24万7,482 台/PHV:8万3,610台)となっている。
全部がリチウム電池車とは限らないが、かなりのEV+PHVがリチウム車と見られる。そうしたことから、リチウムの自国での消費量が大幅に増加、価格を高騰させていると見られる。(ただ、国際価格ではなく、中国の報道機関が報じたものである。また、中国の数値は低速で航続距離の短い部類のEVも含めており、乗用車の台数は定かではない。)
炭酸リチウムは、電池の容量(キロワット時)当たり約1.5キログラム必要であるといわれて いる。炭酸リチウムの価格は、2004年までは1キログラム当たり100円(トン当たり10万円)、2008年6月には800円を超えた(1元=13.55円当時での計算)とされていた。
ということで、EVに車をチェンジしたくても、パワーがあり、航続距離も長いリチウム電池の製造が、リチウム自体の生産量から、年間50万台~70万台止まりが現実のものとなっている。
今回のテスラ・モーターズの「モデル3」(納品開始は2017年後半)は、受注開始1週間で32万8千台受注、デザインも良く、価格も安く(3万5千ドル~・別途各国のEV補助もある)、航続距離も(346キロ)長いことから、膨大な受注量を確保したが、EVの生産コストに占める燃料電池のウエイトは約30%ともいわれ、リチウム価格の高騰で燃料電池を独占的にテスラに供給するパナソニックは、すでに販売価格は決定しており、悲鳴を上げるかもしれない。(すでにチリのリチウム生産会社と供給や価格を決定しているかもしれないが・・・)
リチウム生産国/2012年
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生産量/トン
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構成比
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チリ
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13,000
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35.0%
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豪州
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13,000
|
35.0%
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中国
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6,000
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16.0%
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アルゼンチン
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2,700
|
7.0%
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ポルトガル
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820
|
2.0%
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ジンバブエ
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500
|
1.0%
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ブラジル
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490
|
1.0%
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カナダ
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ロシア
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その他
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合計
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37,000
|
100.0%
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炭酸Li換算
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196,809
|
100.0%
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以上、石油天然ガス・金属鉱物資源機構版
リチウムの生産量と埋蔵量/2011年
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国
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生産量
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可採埋蔵量
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チリ
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12,600
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7,500,000
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オーストラリア
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9,260
|
970,000
|
中華人民共和国
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5,200
|
3,500,000
|
アルゼンチン
|
3,200
|
850,000
|
ポルトガル
|
820
|
10,000
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カナダ (2010)
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480
|
180,000
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ジンバブエ
|
470
|
23,000
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ブラジル
|
160
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64,000
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世界計
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34,000
|
13,000,000
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アメリカ地質調査所編
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チリでは塩湖のカンスイから、豪州ではスポジュメン鉱石から産出している。豪州の主要生産会社はTalison Litium(Greenbushes 鉱山)であるが、同社は中国の成都天斉集団が買収している(先見の明がない豪州白人である)。
歩ける鏡湖として知られるボリビアのウユニ塩湖は、世界最大の540トンの埋蔵量(約50%)があるとされている。
チリの主要産地のアタカマ塩原は、世界の埋蔵量の27%、約300万トンが埋蔵しているという。
世界中の海水には2億4千億トンのリチウムが埋蔵しているとされている。
日本政府は、EVとともに水素燃料車へ傾注しており、マグネシウム電池など未来型電池への研究開発支援は限られている。・・・日本はこうしていつもの遅れをとることになる。
電池の種類
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一般型
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鉛蓄電池
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リチウムイオン二次電池
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リチウムイオンポリマー二次電池
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ニッケル・水素蓄電池
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ニッケル・カドミウム蓄電池
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ニッケル・鉄蓄電池 (エジソン電池)
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ニッケル・亜鉛蓄電池
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酸化銀・亜鉛蓄電池
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液循環型
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レドックス・フロー電池
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亜鉛・塩素電池
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亜鉛・臭素電池
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メカニカルチャージ型
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アルミニウム・空気電池
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空気亜鉛電池
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空気・鉄電池
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高温動作型
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ナトリウム・硫黄電池
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リチウム・硫化鉄電池
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研究されている燃料電池4方式
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PEFC
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SOFC
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PAFC
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MCFC
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固体高分子形
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固体酸化物形
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りん酸形
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溶融炭酸塩形
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電解質
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電解質材料
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イオン交換膜
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安定化ジルコニアなど
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りん酸
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炭酸リチウム、炭酸ナトリウム
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移動イオン
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H+
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O2-
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H+
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CO32-
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使用形態
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膜
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薄膜、薄板
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マトリックスに含浸
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マトリックスに含浸、又はペースト
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反応
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触媒
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白金系
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不要
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白金系
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不要
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運転温度(℃)
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80-100
|
600-1,000
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190-200
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600-700
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燃料
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水素
|
水素、一酸化炭素
|
水素
|
水素、一酸化炭素
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発電効率(%)
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30-40
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50-70
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40-45
|
50-65
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想定発電出力
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数W-数十Kw
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数kW-数十MW
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100-数百kW
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250kW-数MW
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想定用途
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携帯端末、家庭電源、自動車
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家庭電源、定置発電
|
定置発電
|
定置発電
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開発状況
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家庭用は2009年に国内販売開始、自動車用は2015年に国内販売開始
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家庭用は2011年に国内販売開始、大型定置用は開発中
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下水処理場、病院、オフイスビルなど常時稼働形緊急電源として多数の実績あり。
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日本以外での実績があり、拡大中
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モデル3
[ 2016年5月 9日 ]
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