アイコン 11月の韓国ICT輸出21.%減、13ヶ月連続減 韓国輸出産業の優位性はどうか

Posted:[ 2019年12月23日 ]



韓国の科学技術情報通信部は22日、11月の情報通信技術(ICT)輸出額は、前年同月比▲21.8%減の143億1000万ドル(約1兆5660億円)だったと発表した。マイナスは13ヶ月連続。

品目別の輸出額では、
1、半導体は、半導体メモリの単価下落やシステムLSI(大規模集積回路)の需要鈍化が影響し、前年同月比▲30.7%減の74億8000万ドル。
2、ディスプレーは、有機ELパネルの需要停滞や液晶パネルの単価下落などにより、▲25.0%減の17億1000万ドルとなった。
3、スマホは、海外生産の拡大もあり▲0.9%減の10億2000万ドル。ただ、スマホ部品の輸出額は15.9%増の6億8000万ドルと増加⇒サムスン・LGのベトナム工場などへの輸出が伸びたもの。(LGは今年、韓国での生産を中止しベトナムに集中させた)。
4、二次電池は、韓国勢は中国生産が多く、韓国勢の自動車向け二次電池は、まだ日の目を見ていない。この分野もサムスン・LG・SKに集中し、海外工場が主体となる。
(日産が車両用二次電池会社を中国勢に売り飛ばし、韓国製を搭載するとしていたが、その影響かもしれない)



国・地域別の輸出額は、
中国向けが、▲21.0%減の71億4000万ドル、
ベトナム向けが、▲22.2%減の21億ドル、
米国向けが、▲22.5%減の15億7000万ドル。
一方、日本向けは0.2%増の3億8000万ドル。二次電池が2桁の伸びを記録したほか、半導体の輸出も1.0%増加した。

11月のICT輸入額は、前年同月比▲6.9%減の90億9000万ドル、
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は52億2000万ドルの黒字だった。

11月の総輸出額は前年同月比▲14.3%減の441億ドル、うちICTは143億1000万ドルであり、全体の32.4%を占めている。
総輸入額は▲13.0%減の407億3000万ドル、うちICTの輸入額は90億9000ドルであり、全体の22.3%を占めている。
日本から部品・素材⇒(韓国)加工部品・中間材に製造し⇒中国へ輸出・製品化

通関ベースでの貿易黒字額は33.7億ドル、ICTの黒字額は52.7億ドル、ICTの黒字より貿易黒字が維持されていることが如実に明らかになっている。つまり、サムスン電子とSKハイニックス、LGのICTを除けば貿易赤字となる。

2016年6月当時、韓国と中国の産業比較表
下記表に一般機械を加えると韓国の10大産業とになる。この10大産業はかつて韓国勢が中国勢より優位性があった産業分野であるが、今では中国勢に押され、苦戦している。
一般機械は中国価格が120%と韓国は100%、中国が価格競争力に優れ、品質・技術面では80~85%と中国勢が劣るものの、ミリの精密度を要しない分野では中国勢に価格競争力に負けていることになる。ロボット等ミクロの精度を要する機械では、日本勢が韓国勢に対して優位性を有している。
韓国勢は、中国の品質向上と価格の優位性、一方、ミクロとスピードなど品質・技術力を要する分野では日本勢との板ばさみになっている。

ただ、半導体は、米国の半導体製造装置の中国輸出禁止により、中国の成長は大幅に遅れ、一方、韓国勢は優位性を保持している。しかし、これも貿易戦争による中国経済の停滞により昨年9月をピークにして需給バランスが崩れ暴落、韓国勢は価格変動の激しいメモり系からシステム半導体のファンドリー(ファプレスメーカーからの受託生産)に展開し、TSMC=台湾勢を駆逐しようとしているが、いずれ台湾勢と中国勢に駆逐されることになる。

韓国勢が伸ばせるのは、これら産業分野を細分化した領域、例えば、半導体の大容量化技術と価格、LNG船、有機ELディスプレーなどに限られているが、米中貿易戦争により、中国勢の技術進歩率は遅れており、暫くは韓国勢の優位性が維持されることになる。
ただ、こうした分野も国家挙げての「中国製造2025」は確実に進捗しており、韓国勢はオリヂナリティある製品を生み出さない限り、米中貿易戦争後の力を蓄えた中国の大波に飲み込まれる可能性が高い。14億人の国内市場を抱えた中国勢が造れるものに勝ち目はない。

韓国の苦悩は、
輸出産業が過度に経済を牽引、一方、国内需要の低迷、国内需要を喚起すべく導入した文政策である所得主導経済成長策も、製造コスト増に招き、工場の海外移転を助長するものでしかなく、付加価値ある産業構造に転換しない限り、輸出が韓国勢を牽引する時間は限りなく限られている。
文政策は一方で見れば大正解であるが、国内外経済の状況を分析せず、理解せず、スピードも極端すぎ、その政策により国内経済を逆に悪化させているのが現実。
文政策により製造コスト・物流コストが上昇しているにもかかわらず、物価が上昇しないのは、それほど国民の購買力が落ちているということを意味している。
また、国内市場が限られる中、利益分配が財閥に偏重しており、財閥系と中小企業の格差が大きすぎ、財閥系企業が設備投資に動かない限り、採用増につながる国内の設備投資は冷え込んだままとなっている。そうした中、米中の保護貿易もあり、財閥企業は海外投資に夢中になっている。文政策の公正経済の下、財閥と中小企業の格差の是正は、貿易を主導する財閥企業にあり、遅々として進んでいない。進ませようがないのが現実。
(振って沸いた日本の戦略物資の輸出規制強化により、これまた助成金で中小企業を振興させようとしているが、その効果は限られ、いつまで続くかもわからない。これまでもこうした振興政策はなされてきたが政権が変わるたびに行ったり来たりしている。そうした韓国の部品・部材・素材を製造するにも日本製の産業機械に依存することになる)

一方、文政策の雇用対策は、今後の危険性を孕んでいる。青年層と高齢者層をターゲットに国費で採用(短期採用が主)し、問題の失業率を大幅に改善させたものの、非生産分野の採用であり、経済への波及効果は僅かしかない。就業待ちの学生に対する助成金、助成支出だけの研究生採用、膨大な不況業種に対する倒産防止・雇用維持のための助成金、中小零細企業に対する雇用維持のための助成金、いずれも非生産的な分野への支出を急増させたものの景気浮揚にはならず、今になって、土木主体の大規模公共投資も平行して行う事態となっている。

もしも、文政権が経済を軌道に乗せられなければ、財政悪化のスパイラルは、外資依存度の高い
新興国が抱える為替問題に直結し、金融不安と隣り合わせであり、危険性を孕んでいる。

参考:
2018年の韓国の名目GDPは2.7%増の1,893兆4,970億ウォン(186兆69百万円/2018年平均0.986円)
輸出額は604,860百万ドル(66兆18百億円/同109.43円)
輸出/GDP=35.4%
2019年はその輸出が対前年比で減少している。

 


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