アイコン 韓進海運の破綻に見る世界の物流混乱 ブラックフライデーの入荷懸念

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hanjin1、米国の電子機器メーカー、ヒューレットパッカード(HP)の関係者は「韓進海運の船舶にコンテナ500個以上の貨物を積んでいるが、ロサンゼルスの港などに入れない状態だ」として「このままでは市場シェアまで急落してしまう」と嘆いている。

2、米国のファッションブランド「マイケル・コース」のジョー・パーソンズ社長は「韓進海運の法定管理申請以降、海運市場の運賃が急騰し、商品価格の引き上げや販売利益の縮小を考えざるを得ない」と話している。

3、香港のアパレル企業「エスケルグループ」も、韓進海運の経営破綻が原因で深刻な影響を受けた。当初は中国で生産中の衣類用資材を韓進海運の船舶で香港に輸送する計画だった。ところが韓進海運の船舶が中国の港に入港できず、衣類用資材の輸送ができなくなったという。

4、米国小売業経営者協会は商務省と連邦海事委員会(FMC)に書簡を送って韓進海運の法定管理以降に物流支障が深刻化したとして韓国政府や港湾などと協議し速やかに問題を解決してほしいと促した。

<差し押さえを免れても荷役代金を支払なければ荷降ろし不能>
米国や日本では、裁判所が韓進海運の破産保護申請を承認。韓進の船舶が当分は差し押さえの憂慮なしに現地港に停泊できるが、荷役業者や運送業者が代金を受けとれないことを憂慮して、コンテナ荷役作業や輸送を拒否する問題は依然として残っている。米国の太平洋沿岸の物流量の中で韓進海運が占める割合は8%台という。

米国ニューヨークのプラザホテルで9月7日に開かれた米投資機関ゴールドマンサックスの年次会議「流通業カンファレンス」。
例年であれば、流通業の長期戦略について議論する場だが、今年は「韓進海運の破綻による物流混乱」が切迫した問題として関心を集めた。
アメリカでは、年を通して最大の小売業の季節となる。11月第4木曜時の感謝祭~11月の最終金曜日の米最大のショッピングセール「ブラックフライデー」~12月のクリスマス商戦を控え、韓国や中国などからの電子・電気製品、衣類や玩具類の輸送が遅延するのではないかとの懸念が拡がっている(商材は9月・10月に準備される)。

<米国商務省緊急訪韓>
米国商務省の関係者が9日緊急訪韓、海洋水産部(省)など関連部署の関係者に会って物流支障の解消案について議論するなど、特に米国への影響が懸念されている。

韓国政府は、韓進海運が法定管理を申請した後「韓進海運の物量のうち韓国の物量の割合は10%程度と少なく、被害は限定的との立場を明らかにし、破綻に至る経過を見守るだけだった。
しかし、韓国の海運会社の破綻で、中国・米国・日本など外国の貨物であり、大問題となっている。
2015年の韓進海運が取り扱い貨物量は、約460万TEU(1TEUは20フィートコンテナ1個分)で、うち韓国の貨物は10.7%にすぎず、残りは外国の貨物だった。

韓国の経済学者は、海運業は、その特性上、数十ヶ国・数千企業が関わってくる。このため被害も全世界に拡大すると指摘していた。
特に電子製品は、世界のいろいろな企業のいろいろな生産国から部品が、製品化する国に送り込まれ製品になっている。1つの部品・部材の供給が止まれば、物によっては生産計画に大きな支障が生じることになる。
製品・部品・部材によっては、海上輸送コストの上昇も死活問題になる可能性すらある。
経済規模ばかり大きくなった韓国だが、政府は自国のマスコミに踊らされる政治に明け暮れ、韓進海運を破綻させたことにより起こりうる国際物流問題など、考えるゆとりも、そもそも考えることもなかったようだ。

<STXパンオーシャン破綻の教訓が政府に生かされず>
韓国の海運業界はリーマン・ショック後の2009年からの危機に瀕し、国営の産業銀行を筆頭の債権団に任せ、海運業界を放棄するがごとく政府主導で管理してこなかった。

2013年6月7日韓国のSTXグループの海運会社、STXパンオーシャンは、負債額約4兆5,000億ウォン(約3,830億円/当時)を抱え、ソウル中央地裁へ法定管理(会社更生法適用に相当)を申請して破綻した。
韓国政府は、少なくともSTXパンオーシャンを破綻させた時に、海運業の市場環境がより深刻化することを想定して、残る韓国の2大海運会社をどうするか、韓国経済の戦略に基づき決定しておくべきだったろう。今や現代商船まで世界の荷主から不信を突きつけられている。これまで国家戦略で作り上げてきた釜山港のハブ港としての存在も危ういものになりかけている。

<大韓航空 担保取り緊急支援へ>
大韓航空は10日、韓進海運に600億ウォン(約55億6876万円)を支援することに決めた。韓進海運が保有する米ロングビーチターミナルの株式54%を担保にするという。ロングビーチターミナルに出資するMSC(スイスの海運会社、世界第2位)と融資銀行団の承認が必要とされる。これとは別に趙亮鎬韓進グループ会長が私財400億ウォンの提供を約束している。MSC等の承認が下りれば、こうした資金により停泊している韓進海運船から、ロングビーチターミナルなどでの荷降ろし作業が開始されることになる。

<韓進海運の破綻はマークスのスーパーコンテナ船投入と責任回避論>
なお、すでに韓国では、海運業界が混迷に期しているのは、世界№1のコンテナ船保有会社のマークスが過剰船腹をさらに造り上げた結果だとする責任論回避論も飛び出している。
運搬コストを抑えるためスーパーコンタナ船の時代に入っているが、マークスのスーパーコンテナ船の投入により、世界経済の低迷下、値崩れを起こしたことが韓進海運破綻の最大の原因だと指摘している。
しかし、そのスーパーコンテナ船を建造したのは、皮肉にも破綻の危機にある大宇造船など韓国の造船業界であった。


 

[ 2016年9月12日 ]
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