中国は、ワクチンがないアフリカ豚コレラがまだ収束していない。これまでに5億頭肥育のうち2億頭が感染したり、感染予防のため殺処分されているが、財政難でアフリカ豚コレラ死を認めない地方政府もあり、実際どれほど処分されたのか定かではない。中央政府からアフリカ豚コレラによる豚死や殺処分については地方政府が補償するように命令していることによるもの。
また、6月からの豪雨で南部から内陸中央部まで洪水が各地で発生し、農業にも甚大な影響を与えている。
南部の内陸部と穀倉地帯の東北部では6月、バッタが異常発生、そのうえ北部ではトマトダマシまで大規模発生し、農作物に深刻な影響を与えているという。
穀倉地帯の東北部ではそれに加えて中南部の豪雨から一転して、干ばつも生じている。
中国当局は、食糧不足を回避するために、各省に「食糧の生産を減らしてはいけない」と指示した。豪雨による田園地帯の洪水などから食糧危機が発生することを念頭に置いたものと見られている。
胡春華・副首相は7月27日、国内の食糧生産に関する会議で、「食糧の播種面積と生産量を増やさなければならない。減らしてはならない。国の食糧安全問題にいかなる手違いも許されない」と厳しい語気で述べた。
一方、中国メディア「中国経済網」7月28日、中国の鉄道部(省)は食糧を迅速に輸送する「緑色通路(グリーンゲート)」の設置を検討している。報道は、「鉄道部門は、国の『北糧南運(北部の食糧を南部に輸送する)』戦略を実行するために、食糧管理部門、物資備蓄部門と協力している」とした。
習近平国家主席が7月22日日、食糧の主要生産地である東北部吉林省を視察した。その際、習氏は「吉林省は、食糧安全保障政策を最優先課題にすべきだ」、「戦争の際、東北部は非常に重要だ」などと発言している。
しかし、今年、吉林省は干ばつに見舞われている。
官製メディアの「中国新聞網」7月24日、6月1日~7月22日までの同省の平均降水量は平年と比べ▲3割減ったと伝えた。特に7月8~18日まで、同省の「平均降水量はわずか3ミリで、平年と比べて9割も減少した」という。
吉林省水利庁の7月27日のデータによれば、21日以降、省内では有効な降水はなかった。21~26日までの降水量は平年と比べて▲98.3%減少したという。
吉林省吉林市は6月、市内でバッタが発生。また、7月28日、吉林省西部で農作物を食い荒らす外来種のトマトダマシ(=コロラドハムシ)が大規模に発生したと報じられた。
中国当局は最近、大豆やトウモロコシの輸入を増やしている。
中国税関当局が7月26日に公表した統計では、6月にブラジルから大豆1051万トンを輸入した。5月と比べ18.6%増で、前年同月比では91%増となった。
また、米農務省(USDA)が毎週公開する統計によれば、7月9~16日までの1週間で、中国向けのトウモロコシ輸出量(196.7万トン)は、週間統計として過去最高となった。中国は同週、米国から169.6万トンの大豆も購入した。2019年3月以来の高水準となっている。